第7話 恋は盲目

「ほら。今日は久しぶりにハンモックだ」


 大きな縄を抱えたクラークが私の部屋に入ってきた。


「戦もひと段落したしな。久しぶりに外で寝るのも一興だろ」

「ほんとに? 嬉しい」

「じゃあ、行くか?」

「うん」


 建物の中で寝ろと口うるさく言ったはずのクラークから提案をされ、喜びが二倍に膨れ上がる。


 私たちは破壊された屋敷の再建が済むまでの一か月ほど過ごした木の元へ行き、向かい合って立っている四本の木の幹に、それぞれのハンモックを繋ぎ止めた。

 早速私は乗り込んだ。


「うん。久しぶりの感触だわ」

「解放感がハンパじゃないな」

「そうね。やっと戦は終わったんだと思えるわ」

「ライダ国と同盟国のアウベス国の両国と戦ったんだ。お前が撃たれたと知った時は血の気が引いたが、こうして元に戻ってくれてほんとに良かった」

「私の術の偉大さを知ったってわけね」

「ああ、そうだ。胴体撃ち抜かれた身体を自分の魔力で再生するなんて、他の誰にもできやしない」

「今夜はやけに素直なのね」

「ほっとしたのさ」


 ハンモックに寝そべったクラークは腹の上で手を組んで目を閉じる。

 クラークは陸海空軍りくかいくうぐんの総司令官だ。肩にかかる重圧も並大抵ではなかったはずだ。その重い荷物をひとまず置いて、ハンモックに揺られているように感じられた。


「でもね。私、アウベス国は完全に支配下に入ったとは思えないの。そう見せかけて、またどこかの国と水面下で同盟を結んでいる気がしてならないの」

「どうして? 女王も俺達を招いて配下に下ったことを証明してみせてくれたじゃないか」

「あなた。女王様の話になると腑抜けになるのね」

「なんだって?」

「私は、あの女王様はひと癖もふた癖もあると思うわ。そう簡単にタール―ラ王国の鉱山を諦めたりはしないはずよ」

「お前の方こそ疑りすぎだぞ」

「恋は盲目って、あなたのことよ」


 私はハンモックを下りて言う。


「あなたの司令官として命令します。アウベス国の動向には目を離さないように気を引き締めなさい」

「フランチェスカ」

「私は自分の部屋のベッドで寝ます。興ざめだわ」


 クラークは、あの美貌の元女王に夢中になってしまっている。そんなふやけたヤツなんかに監視は任せられないか。私はいたって冷静で中立的なレイに任せようと考える。

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カクヨムコン11異世界ファンタジー女性主人公部門応募作【虐殺のフランチェスカ】 手塚エマ @ravissante

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