本作は、昨今のWEB小説のトレンドに迎合せず、王道やライトな異世界ものに
飽きた読者へ向けた、「正しさよりも愉しさを選ぶ、邪道でありながら完成度の
高い唯一無二のピカレスク・ダークヒーロー譚」となっております。
正義感はない、純度100%の悪、しかし、その極致の毒がもらたす緊張感が
作品を際立たせています。
もちろん、それだけではなく、冷徹なロジックや一貫した美学が主人公の
魅力を押し上げています。
世界を救う気など皆無、渇望のための行動、一般的なWeb小説から逸脱、
作者様のこれでもか、というアンチテーゼにしびれます。
この緊張感、ダークな作風を好む読者様はぜひ一度手に取ることをおすすめできます。
「君に手向ける花はない」の繊細な筆致とは正反対こちらはゆつみかけるさんのダークサイドが全開の一作です。
主人公は自他共に認める殺人鬼。改心もなければ、勇者になる気もない。それなのに弱者には手を出さず、クズだけを屠るという筋の通った美学が、読者を気づかないうちに引き込んでいきます。「悪なのに惚れざるを得ない」という既存レビューの言葉が全てを言い表しています。
洒脱なセリフ回しとアメリカンジョークのテンポが心地よく、サキュバスのサラヴェリーナとの奇妙な主従関係がどこへ向かうのかも目が離せません。同じ作者が書いたとは思えないほどの振り幅に、ただ圧倒されます。
まず見出しの言葉に惹かれました。
愉しく殺して守りたいものだけ守るーー
主人公ネイトは、愛情も教養も財産も持ちながら、それでも「人を殺すことでしか生を実感できない」という歪な本質を抱えています。
単に「殺人鬼が主人公」という刺激的な設定だけではなく、ネイトは自身の傾向を受け入れながらも、独自の美学と筋を持って行動するところに惹かれました。
印象に残っているのは、ネイトが偽装を解いて本来の容姿を取り戻す場面。
育ちの良さを感じさせる姿を見たサキュバスの奴隷サラヴェリーナが動揺するのですが、鋭い観察眼で女性にどう映るかなどを分析するネイトの姿に、物語としての強烈なフックを感じました。
ネイトとサラヴェリーナの掛け合いも本作の魅力で、どこかラブコメな空気が漂うことで、物語が持つダークさを中和させて心地いい。
地の文や台詞回しにも独特のセンスがあり、読み物としての楽しさがあります。
正しさよりも愉しさ、そして危うさとユーモアのバランス、残酷さと爽快感の絶妙な調合。
魅力的なアンチヒーロー、エッジの効いたダークファンタジーが好きな方には、特におすすめしたい作品です。
異世界転生作品は数多くありますが、本作の主人公ネイトはその中でもかなり異質です。
なぜなら彼は最初から“正義の主人公”ではないから。
誰かを救うためでも、世界を変えるためでもなく、自身の内にある危うい衝動を抱えながら異世界を生きている。
だからこそ、その一言一言に妙な緊張感があります。
特に印象的だったのは、シリアスな設定でありながら、サラヴェリーナとの掛け合いが絶妙に軽妙なところです。
重い過去や危険な本性を抱えた人物同士なのに、会話になると妙にテンポが良い。
そのギャップが心地よく、気付けばページをめくる手が止まらなくなっていました。
本作の魅力は「善人ではない主人公」を描いていることではなく、その危うさを隠さず、それでも読者を惹きつけることに成功している点だと思います。
ダークファンタジーやアンチヒーロー作品が好きな方には、ぜひ読んでいただきたい作品です。
主人公はまさかのヴィラン側。自他共に認めるクズ。
けれど野蛮ではなく、理知的なワイルドさでもって目的を遂行するシリアルキラー。
そんなのが異世界転生しちゃって大丈夫!? とアワアワするまでもなく、あれ、意外と蛮族屠るのに最適な世界──?
殺戮を得手としているのにダークヒーローと称して差し支えない頼もしさ。
解像度高く、耳障りの良いアメリカンジョーク。
クズと振る舞いながら、どうしようもなく抗っているような様すら魅力的。
美しきサキュバスとの旅路もどう続いていくのか気になります。
本音を言えば、そちらこそ大注目であります。