第13話 未来を写す、珠玉の一枚

 屋上での再会から、零の日常は一変した。

 埃を被っていたカメラは、再び零の手に握られ、そのファインダーは、希望に満ちた未来を捉え始めていた。彼女たちとの関係は、以前のように秘密の熱を帯びたものではなく、互いの弱さも強さも受け入れ合う、深い絆へと変化していた。


 零は、彼女たちと共に大学受験という現実的な壁に立ち向かうことを決意した。彼の受験は、ただの受験ではない。それは、写真家としての夢を、もう一度、彼女たちと共に追いかけるための、最初の一歩だった。


 零は、受験に向けて、写真家としての才能を活かし、彼女たち一人ひとりの「本当の夢」をテーマにした作品を制作することにした。それは、彼女たちの官能的な魅力を超えた、人間的な美しさを表現する、零にとっての集大成となる作品だった。


 明香里との撮影場所は、彼女が寂しさを感じていた、放課後の校舎裏。零は、そこで明香里の「誰かに寄り添いたい」という願いをテーマに撮影を行った。写真の中の明香里は、以前のような寂しげな表情ではなく、零という存在に寄り添うことで、心からの安らぎを得た、穏やかな笑顔を浮かべていた。


 七瀬との撮影場所は、音楽室。零は、七瀬の「ありのままの自分を受け止めてほしい」という願いをテーマに撮影を行った。七瀬は、零のファインダーの前で、完璧なアイドルの笑顔ではなく、一人の少女としての、無防備で儚い表情を浮かべた。その瞳は、零という存在に、心の全てを預けていることを物語っていた。


 葵との撮影場所は、生徒会室。零は、葵の「努力を認めてほしい」という願いをテーマに撮影を行った。葵は、零のファインダーの前で、完璧な生徒会長の仮面を脱ぎ、自分の情熱と、零という存在に心を許した、屈託のない笑顔を見せた。その表情は、彼女が、誰かに支配されることではなく、誰かと共に歩むことで、真の解放を得たことを示していた。


 そして、凛桜との撮影場所は、あの廃墟。零は、凛桜の「過去の傷を乗り越えたい」という願いをテーマに撮影を行った。凛桜は、零のファインダーの前で、過去の傷跡を恐れることなく、その身体を零に委ねた。その姿は、性的な奉仕ではなく、零との愛を通して、過去の恐怖を乗り越え、未来へと踏み出そうとする、力強い一歩を象徴していた。


 零が完成させた作品は、彼女たち一人ひとりの「魂」を映し出す、まさに「珠玉の一枚」となった。彼は、この作品を大学に提出した。それは、彼の才能を証明するだけでなく、彼女たちへの感謝と、彼女たちと共に未来を歩んでいくという、零の決意表明だった。


 そして、零は大学合格を達成する。

 合格発表の日、零は、彼女たちと共に、合格通知を受け取った。彼女たちは、零の合格を、まるで自分のことのように喜んでくれた。その笑顔は、零が撮った、どの写真よりも輝いていた。


 零は、彼女たちとの性的な関係を超えた、深い絆を育んでいた。それは、彼が撮った写真が、彼女たちの心を動かし、零自身の心を動かしたからだ。零は、もはや「誰かに認められたい凡人」ではない。彼は、4人のヒロインたちの心を動かし、そして、自分の人生を動かすことができた、一人の写真家だった。


 物語の最後に、零が撮った、彼女たちの心からの笑顔が写った「珠玉の一枚」が提示される。それは、零が歩んだ青春の記録であり、彼がこれから歩んでいく、明香里との未来への希望を写し出した、かけがえのない一枚だった。


 高校を卒業し、零と明香里の物語は、新たなステージへと向かっていく。そして、大学進学を機に同棲を始める二人にとって、それは、新たな人生の始まりを告げる、希望に満ちた旅立ちだった。

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僕らの青春リプレイ:彼女がくれた、もう一度のチャンス 舞夢宜人 @MyTime1969

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