九個目の卵 プロット小説
ろーけん
第1話
アラスの宇宙船は、クララの船を標的にしようとハッキングをしていた。ともに10人乗り程度の小型船だった。クララはその時、星間通信システムを通じて上司と話していた。 若くて美しい女性キャプテンのクララは怒っていた。「なんてつまらない仕事なの!私の実績からしてもっと重要な仕事を与えられるべきでしょ!」地球から指示を出しているエクゼキュティブマネージャーのフックは、「向こうでの滞在中に難しい課題に直面するかもしれないので君を選んだんだ。まぁ、着くまでは旅を楽しんでれ」と言った。ここのところ一か月くらい・・クララは妙に下に見られる発言をされてきた。一度などはシニアマネージャーにお尻をなでられた。クララは自分の評価が何らかの理由で急降下しているのかもしれないと少し不安に感じていた。
アラスは「距離が遠すぎる。もっとパワーをチャージしろ!」と言った。射撃システム担当は「この船では反作用が制御しきれません」と言ったがアラスは「構わん。やれ!」と命令した。アラス船が強力なビームを発射したが、それとほとんど同時に宇宙の深い虚空へと吹き飛ばされた。
クララの船はとある惑星の軌道上に停止していた。クルー達は船の点検と修理をしていた。船の修理には惑星の軌道上が絶対条件だった。
クララの集めたクルー6人は全員初対面だった。クララ以外は全員が男性。彼らは美人でグラマーで姉御肌なクララに一発で参ってしまった。クララはそういうキャラを集めたのだった。
ポルは「今回の故障の原因は分からない」と言った。クララは言った。「海賊の襲撃によるものではない?」ボルは「うーむ、その可能性は・・」とあいまいに答えた。彼は今、難しい問題に直面していた。取り替えようとした部品のスペアがなかったのた。 「なぜ?これ以外のアイテムにはスペアがあるってのに!」その卵型の部品がなければ、船は決して光速以上で動かないのであった。クララには、何かトラブルがあったら上司のフックに報告する義務があった。しかし、彼女は今回のスペア未装備のミスが自分の出世に不利な要素だと考えた。彼女は昇進を切望していたので、ごまかすことにした。基本的に彼女は悪い女性ではなかったが、時々少しずるいところもあった。そこで彼女は別の理由で救助を求めることにした。・・・理由はなににしようかしら・・・
一方、ポルは船の故障の原因を突き止めた。それは「ブラックマターの反撃」だった。彼は船が攻撃されたことに気づいたが、敵がどこにいるのかは分からなかった。クララは「とにかく急いで修理しないとマズいわね」と言った。
こうした状況の中、クララとクルーはアイテムを回収するために惑星へと降り立った。そこはまるで地球の夏のビーチのようだった。… クララたちはビキニにシンプルなヘルメットをかぶっただけの宇宙服?・・で十分だった。
卵は頑丈だったので、スタッフは簡単に見つかるだろうと考えた。そして、海賊たちの標的も卵だろうとクララは考えた。「予備がない・・これは秘密のメッセージにちがいないわ・・」しかし、彼女らの最大の懸念の一つは、この惑星に知的生命体が存在することだった。銀河の法では、知的生命体を殺すことは禁じられており、違反者は死刑に処せられる。これらの知的生物は「ビルド」と記録されていたが、その正確な情報はなかった。
捜索装置に導かれてアイテムの場所へ向かった後、彼女らは問題にぶつかった。残念なことに、そのアイテムはビルドの卵に酷似していたのだ。つまり、彼らの一体が卵を巣に持ち込んでしまったのだ。ビルドは知性も言語も持たないように見えたが、それでも「知的」と認識されていた。クララには彼らは知性を持たない直立した黄色いダチョウにしか見えなかった。
クララの宇宙船は、フックによって密かにモニターされていた。エッグは極めて重要なアイテム――反重力技術――だった。会社はこれに多額の投資を行っていた。目的地へは秘密裏に届けなければならない。そこで幹部の一人、フックはある戦略を提案した。彼はエッグを重要でない部品として宇宙船に仕込んだのだ。「敵よりも先に、まずは部下を騙そう。そうすれば敵もきっと騙される」と彼は言った。フックはクララの能力を信頼していた。もう一人のエクゼキュティブマネージャーであるコウシは初めからこの作戦に反対だった。彼はクララの失敗を見てフックを非難した。
卵はすぐにそこに、ビルドの巣にあった。親が立ち上がった時に見えさえした。クララは宇宙船のエンジンで簡単に吹き飛ばせるだろうと思ったが・・・。
元の場所に戻ると、宇宙船はビルドに包囲されていた。管制室はハイジャックされていたのだった。クララは苛立った。「この鳥どもがぁーっ!」
それからどうにかして、クララと乗組員たちは宇宙船の倉庫に侵入することはできた。そこまでは簡単だったが、管制室はそうではなかった。クララ達は食べ物を取り出し、それでビルドをおびき寄せようとした。しかし、この作戦は失敗した。ビルドは食べ物に騙されるほど低知能ではなかった。彼らは穏やかな生き物だったが、時々激怒することもあった。そして、食べ物で騙そうとしたのが侮辱された理解したらしく、激怒してクララを追いかけてきた。クララは全速力で走った。すると目のまえに地面の大きな亀裂が現れた。その幅、5メートルほど・・クララは力いっぱいジャンプした。
スタッフの一人が、彼らが着られる着ぐるみを作った。クララたちはしばらく管制室を離れ、アイテムを取り戻すことに集中することにた。彼女らは、行動機能付きの着ぐるみを着てビルドの巣のエリアに近づこうとしまた。着ぐるみの中は、暑すぎるためクララは裸だった。彼女らはエッグと交換するために、偽のエッグを作って用意していた。それはビルドの体の大きさと不釣り合いにニワトリに卵くらいの大きさだった。彼女らは巣のエリア内に入ることができましたが、着ぐるみを着ているのは非常に暑かった。彼女はもう我慢できず、危険を承知で少しだけ顔の前をいらして息を吸い込んだ。その瞬間、ビルドと目だあった。しかし、ビルドは反応しなかった。彼女らが着ぐるみに入っていると初めから気づいていたのだった。しかし偽のエッグを見ると、ビルドはクララに襲い掛かかった。クララは逃げ出し、必死に走って海に飛び込んだた。ビルドは偽のエッグを拾い、自分の巣に運んだ。
クララは泣き始めた。彼女は子供の頃、乞食をしていた。その反動のせいか昇進への切望は異常なまでに高かった。彼女に両親はいなかった。ゴミ捨て場に行き、安くても売れるものを集めた。孤児たちのボスはアラスという名前で、ギャングのように冷徹な心と悪賢さと強い精神力を持っていた。クララは、今でも、早くもっと上の地位に達しなければ、簡単にあの惨めな境遇に戻ってしまうだろう・・そんな不安から逃れられないのだった。
今回のミッションにしくじったら・・降格か、傘下企業への配属。現在在籍している会社のような大企業の幹部になることが彼女の夢だった。それが、今回のケースでは、エッグを失えば二度とステータスには戻れない。今回のミッションが非常に重要なものであることを彼女はすでに確信していた。エッグを落とした張本人のポルは責任を感じ彼女を慰めた。しかし彼女はなかなかポジティブな気持ちになれずにへこみ続けた。その時、多くのビルドが彼女たちの近くに集まってきた。そして鳴き声をあげ始めた。それは単なる鳴き声をこえた楽器のようだった。同じ種の生物とは思えないほどの様々な音色のシンフォニーだった。それはクララの琴線に触れた。彼女は、ビルドたちが彼女の心持を感じているのかもしれないと思った。鳥のように見えて感情・・もしかしたら、純粋な心を持っていかもしれないと・・
翌朝、アラスの船が惑星に着陸してきた。彼は法を犯すことも厭わず、ビルドたちを殺そうと企んでいた。アラスはそこに長さななじみのクララがいることを情報として知っていた。だからこそ狙ってきたのだった。彼は彼女に自分たちの非合法チームに合流するよう誘った。宇宙警察を欺くために映像を編集すると言い、自分が所属するギルドの幹部にすることを約束した。クララこの際、彼についていくことを選択肢にいれた。その様子をフックが監視していたとは知らずに。アラスは幼少期よりもさらにひどい悪質な性格を露わにし、ビルドたちを数体殺し、クララのクルーを仲間になるように脅迫した。クララはけっこう真剣にアラスにつこうかと検討していたが、ついに激怒した。アラスは、クララが子供の頃に盗みを働いていたことを揶揄した。「今頃、善人ぶったってお前の性根は悪に固まってるぜ!」クララはあの頃のすべては正当防衛だと反論し、彼に抵抗した。アラスに加わることは降格よりも悪いことだと悟ったが、結局は罠にかかりアラスの船に閉じ込められた。
アラスのチームにはクララのほかの幼馴染みもいた。彼女は当時の出来事を思い出した。子供の頃、彼らは成長するにつれてさらに悪質になった。彼らはクララに悪いことを勧めたが、クララはそれをしなかった。彼女は良い乞食になりたかったのだ。
クララはすきをみてボルとの通信に成功した。脱出計画を打ち合わせると同時にビルドの様子をきいた。その時の情報からクララはビルドがなぜ管制室をハイジャックしたのか分かったような気がした。
アラスは無実を装うため、クララを犯罪者に仕立てて殺そうと企んでいた。ポルはクララを救おうとしたが、有効な方法が見つからなかった。その時、ビルドの二人組が現れた。彼らはダンスを目撃されると、逃げ出した。ポルは、ビルドは求愛を目撃されるのを恥ずかしがるのではないかと思った。「え?交尾してるところは平気なのに?しかも同種族でなく他種族の生物に?・・まさか・・」しかし、そのまさかだった。ポルはアイマスクを着けたままで管制室に近づいてみた。ビルドは攻撃してこなかった。
ボルはクララを救出し、乗組員全員とともにアイマスクをつけて管制室に入った。彼らは視界の無い中で宇宙船を離陸させ、アラスを攻撃した。今回のミッションが重要だったので船は最強の防御システムで固められていた。しかし、少しばかり奇妙なことがあった。アラスはこれらの自動攻撃を回避するのだった。この間、ずっと一体のビルドが相手に求愛し続けていた。しかし、自分ら乗っている船が強い攻撃を受けたとき、彼は求愛をやめた。そしてモニターを見つめた。相手のビルドは急に求愛をやめられたので怒った。突かれたり蹴られたりしてもそのビルドは動じず、他のビルドに何か話しかけた。乗組員たちはビルドが騒ぎ出したのに気が付きヤバいと思った。ボルは頭を突かれ、殺されるかと思ったが、そうではなかった。彼はアイマスクを外されたのだった。乗組員全員はアイマスクを外し、反撃に出た。その時、彼らは全ての武器を使い果たしていたため、クララは最後の手段、突撃を選んだ。「ケンカなら私のほうが私は強かったのよ!」
アラスの船は大破して宇宙の彼方へ吹き飛ばされた。
しかし、最初の問題はまだ残っていた。卵を取り戻す方法がまだなかったのだ。彼女はビルドの巣の前で泣き崩れた。そして破れかぶれになってビルドが温めの交代で立ち上がった瞬間にエッグを素早く取り、両手のひらで包んだ。「これをください」 ビルドは一瞬攻撃仕掛けたが、巣を見て不思議そうな顔をした。そしてクララの手を見て、また巣を見て・・巣に卵は8個あった。ビルドはその上に座ってしまった。クララそっと後ずさりし、エッグ手の中に隠したまま宇宙船へ走った。
宇宙船の陰で、あのビルドがあの相手に求愛していた。クララがそっと見ていると、そのビルドはは相手に受け入れられた。
彼女らの船は離陸を開始した。クララはこの出来事をすべてフックに報告した。「最初からアラスを騙すつもりだったの。敵を騙す前に仲間を騙さなければならなかったのよ」フックはモニターしていたのですべてを知っていたが知らないふりをした。それからビルドが卵を一つ失ったことに気づかなかったのは何故だったのかという話になった。・・フックは「ビルドは知能が高いにもかかわらず8までしか数えられないからだろう」と結論づけた。彼らの中枢神経系は数えるのが苦手だったのだ。
「より進化した生物の視点から見れば、我々人間も中枢神経系の非常に重要な部分を欠いているかもしれないな」と付け加えた。みんな笑った。
船は超高速移動のスタンバイを始めた。クララは自分の任務がいかに重要かを理解し、それを成し遂げて必ず昇進してやる・・と宇宙の彼方に目線を据えた。
おわり
九個目の卵 プロット小説 ろーけん @kidoloh
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