夏の間に、うちわを片手に読んでほしい。

祖母から受け継いだ梅干しの作り方を実践する、大学生の主人公。梅干しって、自分で作るとかなりの手間がかかります。しかも近年の暑さの中では重労働、雨が降っては台無しなので地域によっては天候との相談も必要です。祖母不在の家で、当たり前のようにそれをこなす主人公のもとへ、ある訪問者が。梅干しがいざなう、戦後の話。届けられたのはもしかすると、亡き曾祖母から、曾孫である主人公への、お礼でもあったのかもしれません。じりじりと照りつける太陽と、氷を浮かべた冷茶とが、静かなひとときを織り出します。近年はちょっと暑すぎますが、ある程度の暑さって記憶にも必要不可欠だったのだと、今さらのように気づきました。今作はぜひとも、この暑さのうちに読んでいただきたいです。

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