囁き

猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ

ようせーさん

「ねぇねぇ、この後どんなことしてもらう?」


ぼくの、そばにいる黄色くて、手のひらにのるくらいの女の子はそう言いました。

きゃっきゃと、楽しそうな声をあげています。

さっきぼくにやらせたことが、楽しかったのでしょうか。


「もぉー。強制するのは可哀想でしょー?」


こんどは赤色の子が言いました。口に手を当ててます。

なんとなく、口角が上がってる感じです。

この子も、笑ってます。でも、なんだか悪い感じのする笑いかたです。


「………………」


青い子は、無言で2人を見つめています。

口を開いては閉じて、何かを伝えたいのでしょうか。

ぼくと目が合うと、自然にそらされます。

なんだか、少し距離を感じます。


「このような幼子にやらせるには酷であろう?そろそろ休ませてあげよ」


右の肩に乗った、白い子がそう言いました。

いつも白い子は他の子よりもヒラヒラしてて、可愛い服を着てます。

……?何が酷なのでしょう?水を浴びたり、手を赤くしたり、グラスを割るくらいのこと、何度もやったからなれてるのに。

時々間違えて自分を切っちゃうときがあって怖いけど。でも、もう慣れた。


「えー?この子だからいいんだよ〜」


黄色の子は、きゃっきゃきゃっきゃと楽しそうな声をあげながらひらひらと舞ってます。

くるくると、まわったりしてます。


「そうよ、この子なら何をしてもいいの」


赤い子は、白い子に近づいて言います。

青い子は、ずっと無言で同じ場所にいます。


「…………そうか、それがお主らの選択か。ならば私はもう干渉せぬ」


白い子のなんとも言い難い、呆れたような声が聞こえます。

右肩からすぅっと何かが消える感覚があります。

こころが、ぽっかりと空いた気がします。


「ね、ね、君、今度も僕たちの言うこと聞いてくれるよね?」


一人がニコニコしながら聞いてきたから、ぼくは答えます。


「うん!」


こう答えないと、駄目なんです。


「じゃあ、さっき出来なかったこともう一度やろう?」


それはにこにこと、無邪気に笑いながら言いました。


「手を赤くするくらい、もう慣れたもんね?服に汚れがつかないようにやるのだって慣れたもんね?ほら、やろっか」


ぼくには、拒否という選択肢はありません。

おとーさんやおかーさんと離れたあの日から、ずっと。


「はい」


ぼくはもう、あの日のぼくじゃない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

囁き 猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ @NekotukiRmune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ