読んでいてまず感じるのはキャラクターたちの存在感の強さです!
ザックさんの不器用ながらも頼りになる一面、シアンさんの冷静さと時折見せる人間らしい脆さ、リーナさんの上品さの中にある芯の強さ……それぞれの個性がぶつかり合い、絡み合いながら物語を進めていくのが本当に面白いんです!
ストーリー自体は緊張感のある場面も多いのに、キャラクター同士の軽妙なやり取りや、ふっと力が抜けるようなユーモアが散りばめられているから、重くなりすぎず、むしろ読みやすいんです。
舞台となる街の描写も丁寧で、ざわめきや静けさ、空気の匂いまで感じられるようで、まるでその場に立って彼らを見守っているかのような没入感を味わえました!
そして物語の終盤にかけて訪れる心温まる瞬間、これは胸が温かくなるだけでなく、読者自身の心を優しくほどいてくれるような力を持っています。
キャラの長所が自然に生きていて、ああ、この人たちと一緒に物語を歩んできたんだ、と思わせてくれるのが素晴らしくて!
緊張と安堵、葛藤と絆が絶妙に交錯するこの作品。読み終えた後には、不思議と前向きな気持ちになれるはずです(๑•̀ㅂ•́)و✧
古代ローマ末期を思わせる帝都の裏町を舞台に、「なんでも屋」を営む二人の男性と酒場の女主人が織りなす、洒脱で味わい深い物語。
この作品の最大の魅力は、登場人物たちの絶妙な会話。一見何気ない日常のやりとりの中に、それぞれのキャラクターの個性や関係性、そして物語の核心が巧みに織り込まれていて、読んでいて思わずニヤリとしてしまう場面が多数。
薄暗い横丁の石畳、煙草の煙が漂う酒場、そして複雑な人間関係。どこか退廃的でありながらも温かみのある世界観は、大人の読者なら誰もが引き込まれるはず。文章も丁寧で読みやすく、44,000字超の長編でありながら最後まで飽きさせません。(track1)
ハードボイルドと日常系の絶妙なバランス、そして何より「粋」な登場人物たちに、夢中になって読める作品です。
夜が明けても、帝都は夢から醒めない。
早朝の帝都を駆けるシアンの胸にこびりついていたのは、
忘れたはずの女の香り。名前も、言葉も、触れた指先の感触も、
すべて記憶の奥に沈めたはずだった。
だが今、その残り香が再び鼻先をかすめる。
やがてザックのもとに舞い込む「依頼未満の話」。
消えた女。残された違和感。安すぎる情報と、高すぎる報酬。
浮かび上がってくるのは、忘れられた通りの名もなき記憶。
静かに進行する「なんでも屋」の調査。
だが、過去の影はシアンの心を蝕み、ザックの足元には奇妙な偶然が降り積もっていく。
噓が嘘を隠し、沈黙が真実を覆うとき──
すれ違ったあの女は、はたして依頼人か、それとも……。
これは、まだ夜の匂いが残る帝都で、
忘れたくても忘れられない者たちが出会い直す、静かな物語。
路地裏と言えば、「治安の悪い場所」、「アウトローのたまり場」、「雑多なゴミが寄せ集まった場所」等々、退廃的で怪しげな魅力が詰まった場所ですね。
本作品は、そんな路地裏の解像度が非常に高く、そしてそれを見事に描いております。
そしてそこに住む一癖も二癖もあるダークな住人たちの、ともすれば気障ったらしいと言われそうな、皮肉が効いて芝居が飼った言い回しのやり取りが、実に癖になります。
この手の「都会のスラム街めいた場所」にあこがれを持つ方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
そういう人にはぜひともお勧めしたいです。
ただし、過剰摂取にはご注意を。
あなたもその住人になってしまうかもしれませぬ故。