EP.26 真偽
4月24日……昨日ミランダから渡されたデータを一通り目を通した、ルナティックブラックナイツの真の目的は強化人間の廃止、その事を述べられていたが気になるのはその続きだ。
気になる点は二つ。一つはどうやって強化人間を廃止するのか、もう一つは最初のルナティック・ブラックナイツは五人……動画を見る限り四人の存在しか分からない。もう一人は一体……。
1日考えても答えは出なかった、彼女を呼び幾つか質問する予定だ。待ち合わせ場所は自分の部屋に指定させてもらった。
「はぁ……。」
『どうしました?』
「いや、なんか巻き込まれ過ぎてるなって……。」
『ですが、決めるのはエイジさんです。私もそれについていきます。』
「お前も変だよ、政府もといガイア・コネクト社で作れて月の鎮圧までがお前の約束だろ?」
『そうです。おそらくミランダはこちらに協力を持ちかけています、本当に彼女は月政府のスパイなのでしょうか?このデータを提供するということは少なくとも彼女自身月政府ではなくルナティック・ブラックナイツ側の人間と考えるべきでしょう。』
「お得意のハッキングでデータは追えないの?」
『それが、私が入ろうとすると全てブロックされまして彼女の正体は一切掴めません。』
「なんか怪しいよな……。」
すると扉が開く。
「誰が怪しいって?」
予想通り彼女の訳だが、どこで聞いてんだ?
彼女は俺のベッドに座ると話を始める。
「それで、協力する気になった?」
「まずは俺の質問に答えてからで良いか?」
「もちろん。」
「まず、お前は何者だ?本当に月政府の人間?」
「ええ、そうよ。月の人間とは言っても地球育ちだからね、肌の色素は薄くない。そして私は月政府だけどルナティック・ブラックナイツ側よ。」
ローラの予感は的中した。
「ルナティック・ブラックナイツは月政府側なのか?彼らは政府の元で働く騎士様だろう?」
「あの、強化人間廃止を掲げるのは第二世代強化人間だけ。つまりバルトン達五人の意思なの。だから第三世代の強化人間は良くわかってないのかも、キッカーもその全貌を知っているか……。」
「そこは曖昧なんだな?」
「ごめんなさい。」
まぁ、全部は言わないだろう。協力すると決まった訳じゃないし。
『私からも良いでしょうか?』
「もちろんよ。」
『あなたの敵は何ですか?』
何だその質問、ローラの事だ何か意味があるはず。
「それはもちろん地球政府……」
『嘘ですよね?』
「なぜそう言い切れるの?」
『私は監視カメラを使いあなたの行動を見てきました、何をしているか分かりませんが仕草や癖言葉など分析して嘘をついてるかどうか分かりますいわゆる嘘発見器です。私の前で嘘は通用しなと思ってください。』
「あなたって愛されてるわよね?特にそのAIに。」
『それで質問には答えてくれないのですか?』
話を逸らそうとするがローラがそれを許さない。
「まぁ、良いわ。確かに本当の敵は地球政府ではない……はず……。」
「はず?」
何か後ろめたい事でもあるのか……。
「先程と同じ私はルナティック・ブラックナイツ側……つまり強化人間の廃止が目的の一つでもある。地球政府についているガイア・コネクト社、A.D.E.Bも対象……。敵は多いの。」
「それをルナティック・ブラックナイツ……特にバルトンとアンタで強化人間を廃止しようと計画してた訳か。」
「ええ、でも寿命が短い第二世代では限りがある。戦えるのはバルトンだけ……もう一人カイラという女性がいるけど体が弱っている。戦えそうにもない。」
「それで、俺か……モルモットで使い捨てが利く……政府に一度捨てられた人間だったらって、言うことを聞くとでも?」
「でも、これは後世にとって必要な事……バルトンは自分の意思であなたに情報を託した。私が渡したデータにバルトンがルナティック・ブラックナイツの内容を説明した動画があるでしょう?途中で終わってるから彼が何を伝えたいのか知りたくない?」
「そう簡単に誘導されないさ、だけどその続きは気になる……どうすれば見られる?」
「端末を貸して。」
バルトンに渡された端末をミランダに渡すと生体認証で起動する。
「動画の続きがあるけどパスワードが仕込まれてある。これでは開かない……。」
「結局開かないのか……。」
「でも、知ってる人がいる。サム・リード……彼は現在フレイクスで働いている。彼に聞くしかない。」
「そんな都合良くフレイクスと接触できるか?まぁ、ネスト2を通ってネスト3の奪還作戦が始まれば会う可能性もあるけど。普通は難しいだろう。」
「それか、カイラに会うのね。月を鎮圧した後に会えば良い。私はバルトンに言われた通り行動してるだけ、どちらにせよその端末を託された人とは接触するようになっている。」
「協力するとは言ってないぞ。」
自然と事を運ばれている気がしたので釘を刺しておく、大人しく首を縦に振るのは危険だ。
「どちらにせよ、ヒントは出した。じゃあね。」
なんて勝手な奴だ、呼び出したとは言え強引過ぎる。
「最後に一つ良いか?ルナティック・ブラックナイツは五人、四人しか知らない……もう一人は?」
「事故で死んだ。もう『存在しない』。」
彼女は部屋を出て行った。
「ローラどうだ?」
『嘘を織り交ぜながら話してるように聞こえます。彼女は本当に何者かよく分かりません。ただ、エイジさんの質問に幾つか焦りがありました。知られたくない事があると見ます。』
「どちらにせよ、ゴールは月だ。ローラも気になるか?」
『……はい、私の存在が分かるかもと期待します。私は他と違いすぎる。』
「だよな……これからも助けてくれるか?」
『ええ、同じ目標が出来ました。パートナーとして支えるまでです。』
——4月25日メキシコのとある地域ではエルノアが帰還していた、地下にシェルターを築き娘と二人で暮らしている。表にはADが三機ほど入る格納庫があり、旧型のAD-2が格納されていた。それが今にも動き出そうとしている。
『聞こえますか?エルノア・カルティス。マーガレット・スミスです。早く娘さんを私達に渡してください。』
「ふざけんじゃねええええ!!てめ、娘に何の用だ!?」
帰宅したら早々これだ、前からきな臭いと思っていたが的中した。
『よろしいですか?もう一度言います。娘さんを渡してください、実行しなければ実力行使に出ます。』
すると上空から浅葱社の機体が2機降りてくる。
「話を聞けえええええええ!!何が目的だ!?」
『マーガレットさん、もう話した方が……。』
ハク・ミョンは提案すると。
『それを言った所で彼は納得するでしょうか?』
『私戦いたくないですよ……相手はバケモンですし……。』
エマ・キトラスは消極的に話す。
「もう一度言うぞ!なんの用だ!」
『ハク、エマ……プランBを。』
機体が散開する、両端の機体のどれかがハクとエマか……中央がマーガレット・スミス本人だろう……クソ……ガキが舐めやがって……。
エルノアの右手武器は速射砲になっており左手は縦に並んだ三連ミサイルになっている、正直被弾が恐ろしい。
『AD-2なんて恐るるに足らないわ、所詮AD-3の前機体……生きた化石にもならない……。』
余裕な表情をハクはする。
『ハク!離れて!』
マーガレットが注意喚起するも聞きはしなかった。
エルノアは左から来る機体にミサイルを向ける。
『この距離では当たらない!』
「見くびりすぎだ。」
ハクの機体は右手にスタンナイフのような物を持っているがリーチが短い……エルノアはミサイルを撃つのではなくそのまま殴りに行く、するとリーチが長いのはミサイルでありハクの機体は右半身が吹き飛ぶ。
エルノアは同時に爆発を左腕に1発だけ取り付けたビーム弾を発射展開し爆破を防ぐ。少々ダメージを負うがハク程ではない。
『がああああああああああぁぁぁぁ!!』
『ハク!マーガレットさん!右腕が!』
『敵を甘く見るから……。』
ハクのコクピット内は熱く少々焼けている、ハク自身にもダメージは入っており右腕がぐちゃぐちゃになる。
「おい!こちとら、娘と同い年の女性を痛ぶる趣味はねぇ!早く消えろ!」
移動しながら速射砲を撃ちまくり残り二機を牽制する。
「どうなってやがる、浅葱社の機体はバックパックの換装なしで浮けるのか……全く分が悪い。」
従来のADと違い換装システムなしで上空を浮遊できている、ただADF.E程の浮遊力はなさそうだが……。
マーガレットとエマは弾の弾道を読み器用に避ける、中々当たらない。
『エマ、あなたは背後から。』
『はい。』
一機背後に回ろうとしている、そこまで節穴じゃあないさ。
速射砲をエマに向ける、同時にマーガレットにも警戒する、そう簡単にやらせはしない。
左手は腰にマウントされたヒートナイフを逆手持ちで装備する。
「どこから来る……。」
油断すれば確実にやられる……財団で2番目に強いのはマーガレット・スミスらしいな……何が護衛ADメイド部隊だ……ガッツリ襲撃してんじゃねーか!
右手側、エマの機体が見える背後を取らせてくれないのでそのまま向かってくるが、左手を突き出すと何かを持っている。
「なんだ……?」
それは三連装のナパーム弾でありエルノアの足元にばら撒かれる。
「小賢しい!」
ADとはいえ脅威だ、内部パーツにダメージが入れば足回りが悪くなる。いや……待て、狙いは……。
「まさか!」
周りを見渡すと建物から建物へ火が飛び移る、それはエルノアの格納庫及び地下シェルターも例外ではない、被害は確実に出る。
「ふざけんじゃねええええええ!!」
さらにエマの左肩装備が姿を表す、射出するとネットだろうか、網が機体を覆う。
網は線で繋がれている、そこから高電圧を流す。
「がああああああああ!!」
機体の足は少しずつダメージを追い、エルノア自身にも余裕はなくなっていく。
「クソが!諦めるか!」
機体を無理やり動かし速射砲を放つと幾つかエマの機体に被弾する。
『エマ!パージを!』
エマの機体は左肩装備をパージし電圧を流すのを辞め、飛び立ってしまう。
今度はマーガレットの機体が攻めよる、気づけば近い位置におり反応できない。
そのまま突っ込まれ建物に機体をめり込ませる。
『これでは身動きできませんね?さぁ、降ってもらいますよ?』
「まだだ!」
エルノアの機体両腰にはワイヤーアンカーが装備されいる、それをマーガレットの機体に打ち込み姿勢を崩す。
崩している間、速射砲をメインカメラに撃ち込むとマーガレットの視界がバグり始める。
『あなたも諦めが悪い……。』
マーガレットも同じく距離を取り様子を伺う。
メリ込んだ場所から抜けると左から速射砲の弾を喰らう場所は足関節、内部パーツはナパーム弾のお陰で脆い……弾が入るとその場で転倒する。
「一体、何が?!」
エルノアは弾の出所を探すとハク・ミョンが左手に速射砲を構えていたのが分かった。
「強化人間か!貴様あああああああ!」
機体はうつ伏せの状態になり身動きは取れない。
『もう一度言います、渡しますか?』
マーガレットの最後の一言……。
「娘の命は保証できるか……?」
『約束しましょう……命は保証出来ます。』
「分かった……渡そう……絶対に彼女を兵器として利用しないでくれよ……?」
『ええ、もちろんですとも……。』
すまない……全て自分の責任だ……私は娘一人守る事もできないのか……。
「はぁ……全く疲れます。ただ……決めるのは主人ですから……。」
マーガレットは通信を全て切って自分の場所を作る、彼女は独り言を最後に漏らした。
EP.27へ続く……。
Stellar Era-Evidence 山田孝彦/ダーヤマ・タカヒコ @yamadatakahiko
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