『綾瀬蒼の物語』-中学生編-

🟪『綾瀬蒼の物語』Season2

― 中学生/高校生編 ―

『フィールドの外で、僕らは走っていた。』

Episode11「小さな一歩、大きな証明」

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🎬SCENE 01：療養施設・朝・人工芝練習スペース

（桐生が準備をしている。蒼が静かに立ち尽くす）

桐生

「今日、ようやく“次の段階”ね。

ただのリハビリじゃない。“本気のキック”よ」

蒼（うなずく）

「……蹴って、もし痛みが戻ったら？」

桐生

「やめてもいい。けど、“蹴る前に怖がる”のは、今だけ許す」

（蒼が大きく息を吸って、ピッチに歩き出す）

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🎬SCENE 02：芝上・テストキック

（ボールが中央に置かれている。小さなミニゴールまで約7メートル）

（蒼が足を引く――だが止まる）

モノローグ（蒼）

「3年間、蹴ってこなかった。

この足が、ボールに触れた瞬間に全部終わる気がして、

……でも、それでも――」

（もう一度踏み込み、渾身の右足キック！

ボールはゴールネットを、軽く――確かに揺らす）

（その瞬間、静かに拍手が聞こえる。

舞子・智・他の療養仲間が、いつの間にか見守っていた）

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🎬SCENE 03：リハビリ室・昼

（智が蒼の背中を軽く叩きながら）

智

「……お前、やっと“戻ったな”」

蒼

「まだ、1本だけだよ。

でも――“怖くなかった”。

本気で蹴れた。

それが……ちょっと嬉しくて」

舞子

「じゃあ次は、100本蹴るまで“喜ばない縛り”ね？」

蒼（吹き出して）

「鬼だな」

舞子（いたずらっぽく）

「励ましって、時にスパルタだよ？」

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🎬SCENE 04：夜・病室

（蒼がノートにペンを走らせる）

《2026年4月7日》

《3年ぶりの“本気のキック”》

《結果：ネットを揺らした。心も、ちょっと揺れた。》

《これはまだ始まり。

でも、“戻ってこれる場所”が、少し見えた気がする。》

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🎬SCENE 05：廊下・桐生と病院スタッフの会話

スタッフ

「彼、本当に戻れそうですか？」

桐生

「今はまだ“芽”よ。

でも、“土を掘って根を張った芽”は、そう簡単に枯れない」

スタッフ

「それだけ“覚悟”があるってこと？」

桐生（うなずく）

「ええ。彼、今日“未来を信じる足”で蹴ったのよ。

それはもう、“証明”そのものよ」

Episode12「未来の背番号」

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🎬SCENE 01：療養施設・朝・リハビリ室

（桐生がグラウンド図と白紙のフォーメーションボードを取り出す）

桐生

「さて、今日は“君の未来のポジション”を決める日よ」

蒼（戸惑い気味）

「え……FWじゃないんですか？」

桐生

「昔の蒼くんは確かに“エース”だった。

でも、今の君には“全体を見渡す視野”と“予測力”がある。

“支配する選手”になれるわ。中盤の、要よ」

（ボードの中央、“6番”と“7番”の位置に丸印）

桐生

「ボランチかアンカー。興味ある？」

蒼

「……やってみたいです。

昔とは違う自分で、今のサッカーをしたい」

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🎬SCENE 02：人工芝トレーニングスペース・午前

（蒼が1人、マーカーを使って縦横の移動、視線を切らずにボール操作。

桐生が指示を飛ばす）

桐生

「次、ワンタッチで外側へ！中を見ながらパスコース！」

（蒼が素早く反応、ノールックパスの練習）

モノローグ（蒼）

「“点を取る”のがすべてだと思ってた。

でも今は、“攻撃を作る”ためのタイミング、

“守備を整える”ための一歩、

そんな見えない仕事こそが――チームの背骨なんだ」

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🎬SCENE 03：室内ミーティングルーム・午後

（療養仲間たちと即席の3vs3戦術会議）

智

「お前、ここ最近やけに周り見てんな。

ボールなくても動いてるし」

舞子

「“フォロー”って言葉、蒼くんに似合うかも」

蒼

「……支えるって、こんなに“戦ってる感じ”なんだな。

パス1本の意味が変わって見える」

智

「6番、似合ってるぞ。なんか、いい顔してる」

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🎬SCENE 04：夜・蒼の病室

（ベッドの上で、ノートに書かれた“背番号リスト”）

《1→GK》《4→CB》《6→DMF（守備的中盤）》

《7→CMF/SH（運動量とセンス）》

《10→エース》《11→ウイング》

（その中に赤ペンで〇がつけられた、“6”と“7”の番号）

モノローグ（蒼）

「もし戻れたら、

俺は“6番”か“7番”で戦いたい。

得点じゃない。拍手されなくてもいい。

でも、“あいつがいると落ち着く”――そんな選手に、なりたい」

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🎬SCENE 05：療養施設・中庭・夜

（唯から届いた手紙を読む蒼）

《どんな背番号でも、

その人がそこに“覚悟”を持って立っているなら、

それは一番大切な数字になると思う。》

（蒼、手紙を握りしめながら空を見上げる）

蒼（小さく）

「俺の、未来の背番号……ちゃんと、意味を持たせよう」

Episode13「再び、フィールドへ」

（30分脚本形式／再起への第一歩・揺れる覚悟・“本気の舞台”への招待）

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🎬SCENE 01：病室・朝

（蒼が朝のルーティンとして日記を書いている）

《4月14日、晴れ。

今日はいつもと変わらない日。

そう思っていた、はずだった。》

（ノックの音と共に桐生が入ってくる）

桐生

「綾瀬蒼くん宛に、外部からの連絡が来てるわ。

君を指名して、ある“特別トレーニング”に参加しないかって」

蒼（動揺しながら受け取る）

「……え？　誰が？」

桐生

「中学時代の監督。君の経過をずっと見守ってた人よ」

（封筒を開けると、そこには――

「U-15プレトライアウトセレクション参加許可証」）

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🎬SCENE 02：リハビリ室・午後

（蒼が緊張気味にパス練習を続ける。智と舞子が見守る）

蒼

「行くかどうか、まだ迷ってて……。

“また倒れたら”って考えると、踏み出せなくて」

智

「お前、あんだけ“蹴ること”に向き合ってきて、

今さらそれ言うかよ」

舞子

「怖いのは当然。でもね、“怖さ”は本気の証明だよ」

蒼（目を伏せながら）

「俺……本気で戻りたいんだ。

けど、周りの目も、自分のブランクも――

全部、足を引っ張る」

智

「だったら、“蹴ってから悩め”。

立ったまま迷ってたら、いつまでも試合に出れねぇぞ」

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🎬SCENE 03：夜・中庭

（桐生と蒼がベンチに座って話している）

桐生

「蒼くん、私はね、“戻る勇気”ってものを何度も見てきた。

でも、“戻らない後悔”を抱えてる人のほうが、多いの」

蒼

「……俺は、戻ってもいいんでしょうか」

桐生

「許されるとかじゃない。

君が“本気でまた走りたい”なら、それが答えよ」

（蒼、ゆっくりうなずく）

蒼

「……行きます。俺、“もう一度ピッチに立ちたい”です」

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🎬SCENE 04：翌朝・施設前・出発のシーン

（バッグを背負い、サッカーシューズを手にした蒼が施設の出口に立つ）

舞子

「行ってらっしゃい、“背番号6番”！」

智

「途中で倒れんなよ。…でも、倒れたらちゃんと戻ってこい。

俺ら、またリハビリで付き合ってやる」

蒼（涙をこらえて）

「ありがとう。

俺、ちゃんと――フィールドで、“証明”してくるよ」

（背を向け、歩き出す）

モノローグ（蒼）

「もう、昔のままじゃない。

けど、今の俺だからこそ、できることがあるはずだ。

3年ぶりの、本気のピッチへ。

俺は――走る」

Episode14「ピッチに、ただいま」

（30分脚本形式／トライアウト・プレーで語る・“今の自分”を証明する日）

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🎬SCENE 01：トライアウト会場・午前

（人工芝の広がるピッチ。10人ほどの選抜候補たちが並び、それぞれのスパイクが芝を踏む音だけが静かに響く）

モノローグ（蒼）

「3年ぶりのピッチ。

今でも、少し怖い。でも――

俺の足は、止まってない」

（蒼、深呼吸。シューズの紐を再確認して、芝を一歩踏み込む）

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🎬SCENE 02：控えエリア・開会説明中

（選抜コーチ・日下部が書類を確認しながら）

日下部（コーチ）

「今日は全体練習後、紅白戦形式で選抜を行う。

名前じゃなく、“今の君たち”を見させてもらう。

過去も、未来も、今ここにない。プレーがすべてだ」

（蒼、うなずきながらも緊張の面持ち）

隣の選手（細身のMF）

「へぇ、あんたが綾瀬蒼か。名前だけは聞いたことあるよ。

“天才が病で消えた”ってな」

蒼（少し笑って）

「だったら今日、“今の俺”を見てってよ。過去じゃなくてさ」

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🎬SCENE 03：トレーニングパート・パス＆ムーブ／視野トレーニング

（蒼が、ボランチの位置でプレー。

素早い判断、タッチ数を減らしながら展開する。だが、動きはまだ硬い）

日下部（低くつぶやく）

「判断は悪くない。ただ、身体が……まだついてきてないか」

（蒼、トラップが乱れてロスト。悔しさをこらえる）

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🎬SCENE 04：水分補給タイム・ベンチ脇

（蒼がひとり頭を下げる）

モノローグ（蒼）

「やれることはやってきた。

でも、“やってきたつもり”じゃダメなんだ。

今ここで、“見せる”んだ。俺の、すべてを」

（その時、コーチが指名する）

日下部

「次、紅白戦。蒼、青チームの6番。ボランチで入れ」

蒼

「はい！」

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🎬SCENE 05：紅白戦スタート

（前半、周囲との連携に苦しむ蒼。だが、途中から“相手のパスコース”を読んでカット。徐々に存在感を出す）

（前半25分――味方のCBがプレスを受ける）

（蒼、素早くサポートに入り、リターンをワンタッチで逆サイドへ展開）

観覧席の指導者A

「おっ、あいつ……“見えてるな”。タイミングがいい」

（その後も、ロングボールを読んでカット、味方にスルーパスを通すなど、攻守で安定感を示す）

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🎬SCENE 06：後半20分・セットプレー時

（相手CK。マークがズレる）

（蒼、咄嗟にラインを上げて味方に指示）

蒼

「9番、ファー戻って！　2列目、詰めてる！」

（結果、相手のシュートをカットし、即座にカウンター展開）

（味方が抜け出し、シュート――ゴール）

ベンチ

「よっしゃああああ！」

（日下部コーチが手元のメモに書き込む）

日下部（つぶやく）

「声も出せる。戦術理解も深い。…“今の綾瀬蒼”、か」

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🎬SCENE 07：試合終了・フィールドに座り込む蒼

（汗だくの蒼が、芝に手をついて座る。空を見上げながら）

モノローグ（蒼）

「蹴れた。走れた。指示も出せた。

でも――まだ全然“戻れてない”。

だけど、確かに“帰ってきた”。俺は――ピッチに」

Episode15「選ばれる声」

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🎬SCENE 01：療養施設・リハビリ室・午前

（蒼が室内リフティングをしている。ボールの動きはどこか落ち着かず、視線が遠い）

桐生（入室しながら）

「落ち着かないのね」

蒼（リフティングを止めて）

「そりゃあ……。もう三日も経ったんです。

連絡がないってことは、ダメだったのかなって……」

桐生

「選ばれるってことは、“誰かが選ばれない”ってこと。

だからこそ、簡単には届かないのよ、そういう声は」

（蒼、小さくうなずく）

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🎬SCENE 02：施設の庭・午後

（唯が差し入れを持ってやってくる）

唯

「はい。ホットレモネード。今日寒いから」

蒼（苦笑しながら）

「……ありがとう」

唯

「連絡……まだ、ないんだよね？」

蒼

「うん。でももう、気持ちは切り替えた。

今の自分じゃ、まだ半分も戻れてないし。

また、がんばればいい」

唯（ふっと微笑んで）

「蒼くん、“選ばれること”ばっかりが、全部じゃないよ。

ちゃんと、走ってたよ。私、見てたもん」

蒼（目を伏せるが、静かに感謝を込めて）

「……ありがとな、唯」

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🎬SCENE 03：病室・夕方

（蒼が着替えをしていると、スマホが鳴る。

見知らぬ番号。躊躇した後、出る）

蒼

「はい、綾瀬です」

電話の声（男性・日下部コーチ）

「綾瀬蒼くん。トライアウト、お疲れさま。

いきなり本題だけど――“選ばれたよ”。」

蒼（動けないまま、数秒沈黙）

「……え？」

日下部

「本当にギリギリの評価だった。でも、

“今の君”が持ってるプレー精度、視野、判断。

間違いなく、必要な戦力だと判断した」

（蒼、壁にもたれて座り込む）

日下部

「ただし、これでスタートライン。

“戻ってきた”んじゃなくて、“これから始まる”。それを忘れないで」

蒼（絞り出すように）

「……はい。ありがとうございます」

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🎬SCENE 04：屋上・夜

（蒼が夜空を見上げながら、スマホを手にして、唯にLINE）

《選ばれたよ。ありがとう》

（送信。風が吹き抜ける中、蒼が独り言のように）

蒼

「本気でやってきて、よかった……」

モノローグ（蒼）

「“誰かに選ばれる”って、

“誰かに背負わせる重み”でもあるんだな。

なら俺は――選ばれた責任を、ピッチで返す」

Episode16「始まりのスタメン表」

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🎬SCENE 01：選抜合宿所・到着ロビー・午前

（バスから降りる蒼。3年前より少し背が伸びた。スパイクの音がアスファルトに響く）

モノローグ（蒼）

「トライアウトを越えて、やっと立てた“ここ”。

だけど、“ここ”はゴールじゃない。

また一歩、始まる場所なんだ」

（合宿所には、すでに数人の選手が到着している）

？（声）

「……蒼？」

（蒼が顔を上げる。そこには――）

赤嶺豪

「久しぶり。まさかお前も選ばれてるとはな」

蒼（少し驚いた表情で）

「赤嶺……」

（握手はせず、視線だけを交わす二人）

赤嶺

「ここは“選ばれた者”の場所だ。

前の名前なんて、通用しねぇ。お互い、“今”を見せようぜ」

（蒼、小さくうなずく）

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🎬SCENE 02：ミーティングルーム・昼

（日下部コーチがホワイトボードを前に、チーム戦術を説明）

日下部

「基本布陣は【4-1-4-1】。

攻守の切り替えを制御するのは“アンカー”――つまり、お前らの頭脳だ」

（ホワイトボードには、ポジションに選手の仮名が書かれていく）

赤嶺：CF（センターフォワード）

東堂：RW（右サイド）

柴田：CB（センターバック）

蒼：DMF（アンカー／6番候補）※名前に“？”が書かれる

日下部

「アンカーは未定。今日の練習で“スタメン”を決める」

（ざわめく室内）

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🎬SCENE 03：グラウンド・午後・ポジション練習

（蒼がアンカーの位置に立つ。周囲の選手たちが彼を測るようにパスを繋ぐ）

東堂（蒼の横で）

「久しぶりだな、蒼。まさかまた“右”で並ぶことになるとは」

蒼

「東堂……相変わらず、速いな」

東堂

「お前の視野が、俺を見つけてくれるなら――何度でも走るさ」

（プレー開始。蒼がカット→ワンタッチで前線へ→赤嶺がポスト→東堂が抜けてシュート）

日下部（ベンチでメモを取りながら）

「……いい連携だ。ただ、まだ“読み”が浅いな。

ブランクか、経験か――」

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🎬SCENE 04：夜・合宿所・談話室

（蒼がノートに戦術メモを書いている）

蒼のノート・中身

・東堂→走り出すタイミング0.5秒早い

・赤嶺→ボールの入り方で2手先を読んでる

・柴田（CB）→背後ケアは甘いが対人は強い

？（後ろから声）

「お前、相変わらず“頭でサッカーするタイプ”なんだな」

（振り返ると、かつて控え組だった仲間・市川健斗）

市川

「俺はまだ控えだけどさ、見てたぜ。

あん時病気で倒れたお前が……またここにいるの、正直びっくりだ」

蒼

「俺も……自分でもまだ信じてないくらい、だよ」

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🎬SCENE 05：翌朝・ロッカールーム

（ロッカーに貼り出された紙。『本日のスターティングメンバー』）

CF：赤嶺

RW：東堂

CMF：柏木・早乙女

DMF（アンカー）：綾瀬

CB：柴田・若林　…ほか

（蒼が自分の名前を確認し、静かに拳を握る）

モノローグ（蒼）

「俺は、選ばれた。

“あの日の俺”とは、違う。

“今の俺”で、戦う」

（ロッカーに貼られた自分の背番号――6番が、静かに光る）

Episode17「次の11人」

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🎬SCENE 01：選抜チーム・合宿グラウンド・午前

（青空の下、新生選抜チームの練習試合が始まろうとしている）

モノローグ（蒼）

「“6番”は、ただの数字じゃない。

中盤の要、攻守の舵取り……

今の俺に、それが務まるのか――

試されるのは、今日だ」

（ベンチ前に並ぶ選手たち。蒼はスタメン）

日下部コーチ

「今日の相手は、静岡選抜。個の突破力が高い。

中央を制圧できなければ、ゲームは壊されるぞ」

（蒼がヘッドバンドを締める。その表情は緊張と覚悟が入り混じっている）

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🎬SCENE 02：練習試合・前半

（試合開始）

実況的SE（スピーディーに）

・蒼が中盤でボールを奪う→前線へ縦パス→赤嶺のポスト→東堂のクロス

・しかし、タイミングがずれる

→赤嶺が苛立った表情で蒼を見る

赤嶺（声を荒げる）

「出すのが、1テンポ遅ぇんだよ！」

蒼（眉をしかめる）

「……（自分の足元を見る）」

（数分後、今度は柴田からのパスをトラップミス）

→相手に奪われ、カウンター→失点

観客席のざわめき／日下部の険しい視線

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🎬SCENE 03：ハーフタイム・ベンチ

（静かなロッカールーム）

日下部コーチ（ホワイトボードを見つめながら）

「綾瀬、悪くはない。だが、連携が取れていない。

“アンカー”に必要なのは、個の良さじゃない。

チームを“つなげる力”だ」

蒼（小さくうなずく）

「……はい」

（隣に座る東堂が、ぽつりと）

「お前、前より迷いが増えてる。

フィールドに戻るの、怖かったか？」

蒼（驚きながら）

「……ああ。怖かったよ。

でも、俺……ここで終わりたくない」

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🎬SCENE 04：後半・残り10分

（蒼が中盤でボールをカット→サイドに展開→東堂のスプリント）

（東堂、パスを受けてクロス→赤嶺が飛び込む）

→ゴール！同点！

日下部コーチ（小さく）

「ようやく、“つながった”な」

（蒼、肩で息をしながらも、目に光が戻る）

モノローグ（蒼）

「チームの“歯車”になる。

その意味が、少しだけわかった気がした」

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🎬SCENE 05：試合終了後・ロッカー

（日下部が選手表を眺めながら、スタッフと会話）

日下部

「綾瀬は、あと一歩。

でも、その“一歩”が、大きな違いを生むんだよな……」

（蒼、片隅でストレッチをしながらその言葉を聞く）

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🎬SCENE 06：夜・グラウンドの外・静かな道

（東堂と蒼、帰り道を歩く）

東堂

「なあ蒼、“替えの利かない選手”ってなんだと思う？」

蒼（少し考えて）

「……いなくなったら、“穴”ができる選手。

そういうやつ、なんだろうな」

東堂

「なら、お前はその穴を“埋められる選手”だよ。

今日、お前じゃなきゃ繋がらなかった。俺も、赤嶺も」

（蒼、肩越しに東堂を見る）

蒼

「ありがとう、東堂」

Episode18「選ばれる、ということ」

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🎬SCENE 01：合宿所・会議室・午前

（壁一面のホワイトボードに、番号が書かれた名簿用紙が貼られている。まだ名前はない）

日下部コーチ（前に立ち、視線を集めながら）

「今日の午後、次の公式戦メンバーを発表する。

結果はすべて、今までの練習試合と紅白戦の内容で決める。

……いいな？」

（ざわつく室内。蒼は息を吸い、背筋を伸ばす）

モノローグ（蒼）

「数字に、名前が刻まれる。

それは、誇りであり……同時に、選ばれなかった者の“喪失”でもある」

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🎬SCENE 02：午前練習・紅白戦

（紅白戦スタート）

・蒼：ボールを受けてワンタッチでサイドへ展開

・東堂：素早く裏へ走り込みクロス

・赤嶺：豪快なボレーシュート → ゴール

→ベンチで見ている控え組の中には、腕を組んで苦い表情を浮かべる選手も

（蒼の視線に映るのは、同じポジションを争う南条優輝――無言でプレーを見つめている）

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🎬SCENE 03：控え組ベンチ・練習中

（唯が観客席からベンチに近づき、蒼に笑顔を見せる）

唯

「今日、いい動きしてるじゃん。…でも、ちょっと硬い？」

蒼（苦笑）

「……まあ、選考前だしな」

唯

「大丈夫。蒼は、ちゃんと見てくれてる人がいるよ」

（その声を背に、蒼は再びピッチに向かう）

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🎬SCENE 04：午後・合宿所会議室

（全員が座り、前方に日下部が立つ。紙を持つ手元に緊張感）

日下部コーチ

「では、発表する。背番号順だ」

（番号と名前が読み上げられる）

「1番……高瀬」

「2番……藤原」

「3番……赤嶺」

…

「6番……綾瀬」

（蒼は小さく息を吐き、胸の奥が熱くなる）

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🎬SCENE 05：発表が終わった後

（選ばれた者と、呼ばれなかった者の間に温度差が漂う）

・南条優輝：背を向け、ロッカーに向かう

・柴田：呼ばれず、目を伏せたまま座っている

・蒼：背番号を受け取りつつ、柴田の背中を見つめる

蒼（心の声）

「喜びと悔しさが、同じ部屋に溢れている。

俺は……この番号を、簡単には渡さない」

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🎬SCENE 06：夜・グラウンド端

（蒼と東堂が並んでランニング）

東堂

「選ばれたな、“6番”。」

蒼

「ああ。でも……誰かを押しのけて得た番号だ。

喜んでばかりもいられない」

東堂

「だから、お前は外されないんだよ。そういうやつは」

（夜風が吹き抜ける。蒼は少しだけ笑った）

Episode19「それぞれの道へ」

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🎬SCENE 01：選抜合宿・最終日・朝

（合宿所の廊下。荷物をまとめる音が響く。選手たちがそれぞれのバッグを背負い、別れの言葉を交わしている）

赤嶺（蒼の肩を軽く叩く）

「今度は“公式戦”でやろうぜ。千早FCも潰すつもりで来いよ」

蒼（小さく笑い返し）

「ああ……負けない」

（東堂は少し離れた場所で荷物を抱え、蒼に親指を立てる）

東堂

「次に会ったとき、どっちが多くアシストしてるか勝負な」

蒼

「いいね。それ、記録つけとけよ」

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🎬SCENE 02：グラウンド・最後の集合写真

（日下部コーチがカメラを構える）

日下部

「はい、全員揃え。――このメンバーでやった日々を忘れるな。

またどこかで交わる。それまで各自、鍛えてこい」

（シャッター音。笑顔の裏に、名残惜しさと闘志が混ざる）

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🎬SCENE 03：バス乗り場

（バスが次々と出発する。蒼は窓の外にいる唯を見つけ、手を振る）

唯

「おかえり、蒼。……またここからだね」

蒼（窓越しに頷く）

「ああ、ここから」

（バスが動き出し、唯の姿が小さくなっていく）

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🎬SCENE 04：千早FC・ホームグラウンド

（チーム練習に合流する蒼。仲間たちが駆け寄る）

守屋

「おい蒼！選抜どうだった？」

蒼

「……強かった。でも、俺らだって負けてない」

（監督が練習再開を告げる）

千早FC監督

「地区大会まで一か月。戦術をもう一度叩き込むぞ！」

（ピッチの空気が引き締まる）

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🎬SCENE 05：夕暮れ・帰り道

（蒼がスパイクを肩にかけ、独り歩く。空は茜色）

モノローグ（蒼）

「終わりじゃない。

選抜の日々は、ただの“通過点”だ。

またあいつらと会うために、俺は走り続ける」

（遠くで緋城ユナイテッドの赤いユニフォームが練習する影が見える――赤嶺がこちらを一瞬見て、背を向ける）

Episode20「再び、千早FC」

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🎬SCENE 01：千早FCホームグラウンド・朝練

（蒼が久しぶりに千早FCの練習に合流。チームメイトたちが輪になってアップ中）

守屋

「おーい、選抜帰りのエース様！」

蒼（苦笑しながら手を上げる）

「エースはやめろって。俺、あっちじゃ普通だったから」

（監督が笛を吹き、全員が集合）

千早FC監督

「蒼の復帰に合わせて、新しい戦術を試す。

フォーメーションは――4-2-3-1だ。

守備の安定と中盤の構築力を強化する」

（黒板に戦術図。蒼はボランチに配置）

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🎬SCENE 02：紅白戦

（実戦形式の練習）

・蒼：低い位置からのロングパスで東堂を走らせる

・守屋：カットインしてミドルシュート → ポスト直撃

・新加入のFW・三浦海斗：ポストプレーで攻撃の起点になる

監督（プレーを止めて）

「蒼、守備の切り替えを早く！ボランチは攻守の要だ」

蒼（息を整えながら）

「はい！」

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🎬SCENE 03：給水タイム

（東堂が蒼に寄ってくる）

東堂

「お前が後ろにいると、前は安心して走れるな」

蒼

「選抜で学んだんだ。前だけじゃなく、後ろを固める大事さ」

（その様子を唯が遠くから見て微笑む）

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🎬SCENE 04：夕方・戦術ミーティング

監督

「次の地区大会初戦の相手は――緋城ユナイテッドだ」

（室内がざわつく。蒼は眉を上げる）

守屋

「いきなり赤嶺かよ……」

蒼（心の声）

「また、あの背中を追える――いや、並び立つ」

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🎬SCENE 05：夜・帰宅途中

（蒼がボールをリフティングしながら歩く）

モノローグ（蒼）

「もう一度、俺たちのサッカーを見せる。

あいつらに、“千早FC”は止められないって証明する」

（暗闇の中、街灯に照らされた赤い練習着の男が立っている――赤嶺）

赤嶺

「お前ら、準備できてんだろうな」

蒼

「……もちろん」

Episode21「地区大会編・開幕」

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🎬SCENE 01：試合会場・朝

（スタンドはすでに観客で埋まり、横断幕が揺れている。「千早FC」「緋城ユナイテッド」両チームの応援がぶつかる）

唯（客席で手を振る）

「蒼ー！やっと本番だよ！」

蒼（軽く手を挙げ、深呼吸）

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🎬SCENE 02：ロッカールーム・キックオフ前

千早FC監督

「フォーメーションは4-2-3-1。蒼と守屋がダブルボランチ。前線は東堂・海斗・佐伯。

緋城は4-3-3で来るはずだ。赤嶺がCF。サイドの速さに注意しろ。

そして――俺たちは“自分たちの形”を信じる」

（蒼、黙って頷きながらスパイクの紐を締める）

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🎬SCENE 03：キックオフ

千早FC（4-2-3-1）

GK：西村

DF：田代、桐谷、吉野、坂井

MF：蒼、守屋（ボランチ）／東堂（右）、佐伯（左）、山口（トップ下）

FW：三浦海斗

緋城ユナイテッド（4-3-3）

GK：真田

DF：榊原、笹本、田村、岸田

MF：宮地、相馬、北川

FW：赤嶺豪（CF）、斉藤（RW）、大森（LW）

（主審の笛、試合開始）

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🎬SCENE 04：前半15分

（緋城がショートパスで中盤を崩し、赤嶺が裏へ抜ける）

実況

「赤嶺！一瞬の加速――シュート！」

（GK西村が弾くも、こぼれ球を大森が詰めてゴール）

スコア：0-1

守屋（悔しげに）

「くそ、二列目の飛び出しを見切れなかった…」

蒼

「まだ前半だ、立て直そう！」

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🎬SCENE 05：前半終了間際

（蒼が中盤でインターセプト → 東堂へスルーパス → 海斗がポストプレー → 再び蒼が走り込んでミドル！）

実況

「蒼のシュート！……ゴール！！」

スコア：1-1

（蒼が拳を突き上げ、仲間たちとハイタッチ）

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🎬SCENE 06：ハーフタイム

監督

「よく追いついた。だが後半は相手が前線の枚数を増やしてくるはずだ。蒼、守屋、お前たちが鍵だ」

蒼

「わかりました。守備も攻撃も、絶対に負けません」

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🎬SCENE 07：後半

（両チーム激しい攻防。蒼は相手の縦パスを読み、ボールを奪ってカウンター。だが赤嶺も負けじと体を張ってボールキープ）

赤嶺（小声で）

「簡単には勝たせねぇぞ」

蒼

「それはこっちのセリフだ」

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🎬SCENE 08：試合終盤

（残り5分、スコアは1-1。東堂がサイドを突破し、クロスを上げる。海斗のヘディング！）

実況

「決まったー！！千早FC、ついに勝ち越し！」

スコア：2-1

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🎬SCENE 09：試合終了

（ホイッスル。蒼は地面に膝をつき、息を吐く。赤嶺が歩み寄って手を差し出す）

赤嶺

「次は負けない」

蒼（握手を返し）

「俺もだ」

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🎬SCENE 10：観客席

唯（涙目で拍手）

「やっぱり、蒼は蒼だね……」

Episode22「ベンチの声、ピッチの声」

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🎬SCENE 01：試合後のロッカールーム

（勝利の余韻に沸く千早FC。蒼はタオルで汗を拭きながら、ふとベンチ側を見やる）

蒼（心の声）

「90分間、あの声はずっと途切れなかった……」

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🎬SCENE 02：回想・試合中（ベンチサイド）

ベンチ組の古賀（DF）

「守屋！裏警戒！」

「ナイスカット、吉野！」

（サイドバックの小田が声を張る）

「逆サイド空いてるぞー！」

※彼らは試合には出ていないが、全員がピッチの状況を読み、声を飛ばし続けていた。

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🎬SCENE 03：ピッチ上の蒼

（後半30分、守屋が中盤で潰されそうになる瞬間）

蒼（心の声）

「ベンチの声……左か！」

（左に展開 → 東堂へ → シュートまで持ち込む）

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🎬SCENE 04：試合後・スタンド下

（観客席から降りてくる唯。ペットボトルを差し出す）

唯

「お疲れさま。……すごかったね、今日」

蒼

「俺だけじゃないよ。ベンチの声が、ずっと背中押してくれた」

唯（微笑）

「それでも、蒼は走ったじゃん。誰かの声を信じて」

（蒼、少し照れながらペットボトルを受け取る）

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🎬SCENE 05：帰り道

（夜のグラウンド脇。照明が落ち、二人だけの空気）

唯

「ねぇ……もしまた、フィールドから離れることがあっても」

（立ち止まり、真剣に）

「私、離れないから」

蒼（少し間を置き、低く）

「……ありがとう。じゃあ、俺も離れないよ」

（短い会話。だが二人の間にあった“選手と応援”の関係が、少しだけ近づく）

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🎬SCENE 06：チームミーティング

監督

「次の相手はフィジカル重視の港南ブルーズ。お前たちが勝てたのは、全員で戦ったからだ」

（ベンチ組の面々がうなずき合う。蒼も目を合わせて頷く）

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🎬SCENE 07：練習後

（ベンチ組と蒼が自主練。蒼は古賀とパス練を繰り返す）

古賀

「俺らも次はピッチに立つ。お前も負けんなよ」

蒼

「もちろん。もう、声だけじゃなくプレーで返す」

Episode23「背番号は白紙」

（30分脚本形式／戦術変更・新加入選手・ポジション競争）

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🎬SCENE 01：チームミーティング・朝

監督

「今日からフォーメーションを変える。港南ブルーズ戦に向けて――3-5-2だ」

（ざわつく選手たち）

監督

「中盤の厚みを作る。守備から攻撃への切り替えを速くするためだ。

全員のポジションは白紙。スタメンはまた一から決める」

（蒼、静かに手元のノートを握りしめる）

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🎬SCENE 02：新加入選手の紹介

監督

「今日から加わる。港南中のキャプテンだった――黒川隼人（くろかわ はやと）、DFだ」

（長身、筋肉質。寡黙な表情）

黒川

「よろしく。……勝つために来た」

（守屋が小声で蒼に）

「強そうだな。お前のポジションも危ないかもな」

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🎬SCENE 03：紅白戦・午前

（新フォーメーションでの実戦練習）

・蒼：中盤で黒川からの縦パスを受けるも、前を塞がれバックパス

・中原（控えMF）：鋭いスルーパスで東堂を抜け出させる

・監督：そのプレーに頷く

（蒼の心の声）

「やばい……俺じゃなくても回せるって思われる」

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🎬SCENE 04：給水タイム

唯（スタンドから声をかける）

「蒼ー！下向かない！」

（蒼は軽く手を振るが、表情は硬い）

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🎬SCENE 05：午後練・セットプレー練習

監督

「ボランチは守備だけじゃない。攻撃の起点になれ」

（蒼、コーナーキックからのこぼれ球を拾い、ダイレクトで逆サイドへ展開 → 守屋がヘディングシュート）

監督（短く）

「……今のだ。続けろ」

（蒼の表情に少し光が戻る）

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🎬SCENE 06：夕方・グラウンド隅

（蒼が一人でボール回しの自主練をしていると、黒川が近づく）

黒川

「お前、悪くない。……でも、まだ足りない」

蒼

「足りないって、何が」

黒川

「“俺じゃなきゃ”って思わせるプレー。

それを持ってるやつだけが、このポジションに立てる」

（黒川はそれだけ言って去る。蒼は息を吐き、ボールを強く蹴る）

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🎬SCENE 07：夜・唯との会話

唯

「蒼、なんか焦ってない？」

蒼

「焦ってるよ。だって、今のままじゃ俺じゃなくてもいいから」

唯

「……じゃあ、“蒼じゃなきゃ”って思わせればいいじゃん」

（唯の真っ直ぐな目に、蒼の口元が少し緩む）

Episode24「次の11人」

（30分脚本形式／最終選考・黒川＆三条との競争と共闘）

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🎬SCENE 01：朝・ロッカールーム

監督

「今日が最後の紅白戦。ここでの出来を見て、次戦の11人を決める」

（張り詰めた空気。蒼、黒川、三条がそれぞれ黙々とシューズを締める）

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🎬SCENE 02：キックオフ（紅白戦）

フォーメーション：3-5-2

蒼：ボランチ右

三条：ボランチ左

黒川：中央CB

開始直後――蒼のパスを黒川がカット → カウンターの起点にされる。

蒼（心の声）

「また奪われた……まずい、印象が悪い」

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🎬SCENE 03：前半15分

三条がドリブルで持ち上がるが、相手に囲まれる。

蒼、すかさずサポートに入りパス交換 → 左サイド突破。

三条（小声で）

「ナイス。……今日はお前に合わせる」

（蒼が驚きつつも頷く）

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🎬SCENE 04：共闘の兆し

三条とのワンツー → 蒼が相手中盤の裏へスルーパス → 東堂が抜け出すもシュートはGK正面。

ベンチの唯（スタンドから）

「いいよ蒼！次だよ！」

（蒼の表情が少し和らぐ）

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🎬SCENE 05：黒川との直接対決

後半25分、CKのこぼれ球を蒼が拾う。

黒川が前に立ちはだかる。

一瞬フェイント → 足元を抜くドリブル → ミドルシュート！

ボールはポスト直撃。観客席がざわつく。

黒川（ぼそっと）

「……やるじゃねぇか」

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🎬SCENE 06：ラスト5分

三条の縦パスを蒼がワンタッチで落とし、再び受けて逆サイドへ展開。

チーム全体が流れるように動く。

監督、腕を組んで頷く。

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🎬SCENE 07：笛が鳴る

選手たちが整列。

監督

「今日の紅白戦で見せたものは、すべて評価に入れる。発表は明日だ」

蒼（心の声）

「明日……俺の名前は呼ばれるか。

でも――今日は、“俺じゃなきゃ”って思わせられた気がする」

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🎬SCENE 08：夜・帰り道

唯

「今日はすっごく良かったよ」

蒼

「……そうかな」

唯

「うん。“蒼らしい”プレー、見えたもん」

（蒼、少し照れた笑顔を見せる）

Episode25「選ばれる、ということ」

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🎬SCENE 01：朝・ロッカールーム

（全員が静かにスパイクを磨く。時計の針の音がやけに大きく響く）

監督（手に名簿を持ち、前に立つ）

「これより、明日の試合のスターティングメンバーを発表する」

（その瞬間、空気が固まる。蒼は深呼吸）

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🎬SCENE 02：発表

監督

「GK……山科」

「右SB……本田」

「CB……黒川、藤堂」

「左SB……佐久間」

「ボランチ……三条、綾瀬」

（蒼の名が呼ばれる。胸の奥が熱くなる）

監督

「トップ下……東堂」

「右WG……川瀬」

「左WG……原」

「CF……城ヶ崎」

「以上が、明日の11人だ。控えは……」

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🎬SCENE 03：呼ばれなかった者たち

（“控え”の中に、期待されていたFW森山の名前）

森山（小声で）

「……なんで俺が外れるんだよ」

（ベンチの片隅で、GKの渡部が俯く。蒼は視線をそらせない）

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🎬SCENE 04：蒼の心の声

蒼（心の声）

「呼ばれた嬉しさと、呼ばれなかった奴の悔しさ。

この空間には、二つの温度が同時にある……。

次は、俺がそっち側になるかもしれない」

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🎬SCENE 05：練習開始前

三条（蒼に近づき）

「おめでと……って言っていいのか分かんねぇな」

蒼

「俺も分かんない。でも、立ったからにはやるだけだ」

（三条が小さく笑う）

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🎬SCENE 06：帰り道・夕暮れ

唯（スタンドから降りてきて）

「蒼、明日出るんだって？」

蒼

「うん……でも、喜びより責任の方がデカい」

唯

「じゃあさ、責任も全部背負って、ちゃんと笑って帰ってきてよ」

（蒼、短く頷く）

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🎬SCENE 07：夜・部屋

（ユニフォームの背番号を見つめる蒼）

蒼（心の声）

「“選ばれる”ってことは、理由がある。

それを見せられなきゃ、すぐ剥がされる。

だから――明日は証明する」

Episode26「港南ブルーズ戦」

【試合会場／地区大会 準決勝】

〔スタンドからの歓声が波のようにうねる。港南ブルーズの青い旗が揺れ、反対側では千早FCの黄色いユニフォームの応援団が声を張り上げている〕

実況「さあ、キックオフです。準決勝、千早FC対港南ブルーズ！」

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前半5分

〔港南ブルーズが自陣深くで4-4-2のラインを固め、千早の攻撃を外に追いやる〕

蒼（心の声）「……中央が閉じられてる。縦のパスコースがない」

〔サイドへ展開→クロス→CB本郷がヘディングでクリア〕

東堂「くそっ、跳ね返される！」

蒼「焦るな、もう一回作り直そう！」

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前半18分

〔港南の右サイド、早乙女が縦に突破。千早DFをかわしてクロス〕

〔ゴール前、橘がワンタッチで流し込む〕

実況「ゴーーール！先制は港南ブルーズ！右サイドからの速攻、鮮やかでした！」

蒼（心の声）「……奪われた一瞬が、全部を変えた。」

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前半終了／ハーフタイム

〔ロッカールーム。選手たちの呼吸は荒く、沈黙が重い〕

監督「蒼、アンカーに下がれ。三条と東堂を高く上げる。サイドから押し返すぞ」

蒼「……はい」

〔唯の姿がスタンドに映る。手を口元に当て、小さく「大丈夫」と呟く〕

蒼（心の声）「俺は……まだやれる。やるしかない」

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後半10分

〔千早FC、4-3-3へシフト〕

蒼（アンカー）→三条（IH）へ縦パス→サイド突破→クロス→東堂ヘッド！

実況「同点ゴーーール！ついに港南の堅守をこじ開けました！」

〔蒼はガッツポーズ。スタンドで唯が立ち上がり、両手で大きく拍手〕

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後半35分（残り10分）

〔再び港南がカウンター、早乙女のクロスが橘へ〕

蒼（心の声）「通さない！」

〔スライディングでパスカット→素早く立ち上がり、前線へロングパス〕

東堂「任せろ！」→三条とのワンツー→再び東堂→決定的なスルーパス→東堂シュート！

実況「逆転ゴーーール！千早FC、残り時間わずかで試合をひっくり返しました！」

⸻

試合終了／スコア 2-1 千早FC 勝利

〔ホイッスル。蒼は両膝に手をつき、空を仰ぐ〕

唯（スタンドから）「蒼ー！おかえり！」

蒼（心の声）「ただいま……」

〔港南主将・橘が歩み寄る〕

橘「いいアンカーだな。次は負けねぇ」

蒼「そっちこそ」

〔握手。蒼の目は、もう次の試合を見据えていた〕

Episode27「最後のホイッスル」

決勝戦

対戦相手：

鳴海イーグルス

• フォーメーション：4-2-3-1

• 特徴：中盤を厚くし、ボール支配率で優位に立つ。ポゼッションから崩すスタイル。

• キープレイヤー：

　・No.10　白石悠斗（司令塔／精密なパスとミドルシュートが武器）

　・No.9　村岡海翔（CF／ポストプレーと決定力）

　・No.7　水瀬陸（左WG／高速ドリブル）

千早FC 決勝用布陣：4-3-3

• 蒼（アンカー）、三条・東堂（IH）、両ウィングは速攻型、CFは森村

• 戦術：前線からのプレスで相手ビルドアップを妨害し、奪ったら即カウンター。

• 蒼の役割：守備時のカバーと、攻撃の起点となるロングパス。

〔試合会場。決勝特有の熱気が立ち込める〕

唯（スタンド／小声）「蒼……楽しんで」

蒼（心の声）「この90分が、俺たちの全部だ」

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前半10分

鳴海の中盤がパスを回し、千早を揺さぶる。

白石が縦パス→村岡が受け、反転シュート！

実況「先制は鳴海イーグルス！」

蒼（心の声）「……これが決勝か」

⸻

前半35分

千早、右サイドから反撃。

三条→東堂→森村シュート！ポスト直撃→こぼれ球を東堂が押し込む。

実況「同点！千早FC、すぐに追いつきます！」

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ハーフタイム

監督「蒼、白石を自由にさせるな。お前が試合を締めろ」

蒼「わかりました」

唯（客席から手を振る）→蒼、頷く。

⸻

後半20分

白石のスルーパスから村岡が抜け出す！

守屋（GK）が前に出るが……蒼がスライディングでブロック！

蒼（心の声）「絶対に通さない！」

⸻

後半40分（残り5分）

蒼→左サイドの高橋へロングパス→クロス→東堂ヘッド！

実況「逆転ゴーーール！！千早FC、残り時間わずかでリード！」

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〔ホイッスル〕

蒼（心の声）「これが……俺たちのサッカーだ」

唯（涙）「おめでとう……！」

〔チーム全員が抱き合い、優勝旗が千早FCに渡される〕

season3へつづく…