真摯に生命について考えているからこそ、生まれるであろう短歌の数々。大切なものでありながら、いつかは消えていくもの。短歌という短いリズムの中だからこそ、作者様の寂寥と生命に対する強い想いを感じます。美しい表現も素敵です。
生きるって辛い生きるって怖い生きるって苦しい生きるって悲しい何で生まれてきたのとか命って何だよとか思ってしまうけど生きるって綺麗生きるって素敵生きるって生まれてきたのって命って美しい
無い、持たない、流れず、などなど。否定形をこんなに上手く使える手腕に、瞠目しました。それと同時に、否定形を多用することで、独自の奥深い世界観を獲得しています。本作のテーマは命でしょうか。世界の深みに触れる短歌は、すなわち命の深みに触れる短歌になるのです。心にズシンと響く、お勧め短歌集です。推し短歌2首。水の舟揺られる小さな灯(ともしび)ようまれぬままの春を抱いてあの頃の母は居ないと気づいた日めくれた布団直す手は無い
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