誰よりも深く私を憎んで

異国・エジプトに政略で嫁いだアリシアは、第一王妃として冷たい宮廷に身を置いていた。
けれどある夜、祝賀の場で出会ったのは、赤い瞳の美しい奴隷――セシル。
その姿は、どこか懐かしさと違和感を伴っていた。

一方、セシルもまた、かつて滅ぼされた国・アシュマールの誇りと憎しみを胸に、仇であるアリシアへと近づいてゆく。

お互いに真実を知らないまま、罪を背負い、誤解にすがり、偽りの仮面を被るふたり。

それでも、触れた指先に芽生えた感情は――
憎しみのはずだったのに、なぜこんなにも、温かい？

血と嘘と復讐の渦の中で、出会ってしまったふたりの運命が、やがて王国の均衡を揺るがしていく。