DIYエッセイ「夏場のドライブを超快適に! シートの蒸れとおさらばできる手作りグッズ!」をアップしようとしてできなかった件。
湾多珠巳
拾い読みは命に関わるかもですんで、ちゃんと全部読んでください。
真夏に自動車を運転する時に、何がたまらんと言って、暑い車内で背中が汗まみれになるのがたまらん、と言う方、意外と多いのではないでしょうか。
湾多はもろにそのタイプで、ただでさえ背中ばかり汗が出る体質なんで、十五分程度の短いドライブでもTシャツの後ろがぐっしょりになってしまい、もうそれだけで着替えたいぐらい。汗対策として、シャツと肌の間にタオルを挟むことも日常的にやってるんですけれど、七月も下旬になると、到底その程度では追いつきません。
要するに、背中とシートが密着するのがよくない。べったり状態になるのを防ぐような対策なりアイデア商品なりはないものか? と考え、結果、ちょっとした解決策のイメージが浮かびました。つい十日ほど前のことです。
ちなみに、この件に本気で具体的に動く直前には、ざざっと世間に出回ってる既製品も一通り確認してみたんですけれど、なんかろくなもんがないという印象なんですよね。メッシュシートを重ねただけのものとか、はっきり言ってぬるい。効果てきめんとは程遠い印象。もっとはっきりと、背中とシートの間に空隙を作れるような何かはないのか? なんでその程度のアクセサリー一つ、どこの会社も作っていないのか?
一抹の疑問を抱えつつ、とにかく、誰も手を差し伸べてくれないのなら自分が何とかするしかない、と腹を決め、基本設計も何も固まってないまま、某ホームセンターに。
結論から言うと、その時の二十分程度の散策で、まさにおあつらえ向きと言えそうな恰好のパーツを見つけることが出来、簡単で安価で手軽に作れる……ええと、名前もいちいち考えてないんだけど、とにかく背中の蒸れ防止になるグッズを即日完成させられました。それは今も問題なく使えています。
こうなると「このアイデアを世間に知らせて思いっきりドヤ顔したいっ」と考えるのは人の性というもので w、そもそも工作に取り掛かる前からその手の記事を書く気満々だったんですが、ふと、気づいてしまったんですね。
(これ、自動車アクセサリとして見た場合の安全性とか、どうなんだろう……)
つまりですね。仮にこのグッズをnoteとかブログとかで紹介して、それなりの評価をいただき、他の人々が実際に作って利用し始めたとします。皮算用的な話ですが、仮に千人ぐらい実践者が現れたとしたら、その中にはなんらかの理由で運転中に事故に遭う人も出てくるでしょう。
その時、私のへんなグッズのせいでことさらに重いケガを負うことになってしまったら?
実をいうと、この工作品、構造的には「大事故に遭ったら背骨とかに食い込んでやばいことになるかも」ってしろものなんですよね。車種によっては、エアバッグの妨げになるとかそういう可能性もあるような気が。いや、大事故とまではいかなくとも、急ブレーキを踏むような場面で、結局破損一つ起きずに済むようなケースなのに、運転席だけ妙なことになってしまったりとか……それ以前に、何かのはずみでこの手作り品に服が絡まったりして、ハンドル取られてそれが逆に事故につながったりとか――。
考えれば考えるほどろくでもない想像が出てきます。さすがに一目で安全運転義務違反に直結するようなモノではないにしろ、警官とか整備士職の人が見たら、渋い顔されるんじゃないかなあと。
そこでようやく湾多は、なんでこんな簡単なアイデアが全然商品化されてないのか、その理由が理解できた気がしました。これ、画期的な便利商品としてまっとうに宣伝するには、クリアしなければならない製品試験とか安全性検査とか、相当ややこしい手続きが必要なんじゃないかと。ええ、もちろん一発当てて売り逃げること前提の海外の零細業者とかなら、保証も何も考えずにさっさと売り出せるんでしょうけど、そういうあこぎなビジネスはちょっとねえ。
とは言え、運転席の一部が人体にめりこむ心配をしなきゃならん事故に遭う確率なんて、ほんとに微々たるものです。それよりも、毎日の不快事である背中の蒸れを何とかしたい。大汗かいたまま冷房の中で仕事したりすると、いっぺんに体調を崩す可能性だって高いです。それを恒久的に緩和できる便利グッズなんですから、これはこれとして重宝する人も出てくるでしょう。
うん、記事にしたい、アップしたい! と思いつつ、しかし万が一、と考えると、どうしても二の足を踏んでしまいます。問題点があることはしっかり念を押しつつ、話の分かる読者層を狙ってささやかに発表すれば、などと妥協したところで、紹介記事が好意的に見られて話が広まったら、その分惨事が起きる確率も上がります。もう、典型的なジレンマです。
と、そこまで考えたところで思ったんですけど、一昔前は、発案者がこんなふうに何から何まで心配して忖度してアイデアの開陳を自重するようなこと、そうそうなかったような気がするんですよね。そもそもネット上であらゆる立場の人が自由発言できるようになったこと自体、そう昔じゃないんですけれど、00年代とかは、もうちょっと屈託なく、色んな分野で意見交換なんかが出来てたような気がします。政治テーマにしろ、技術テーマにしろ、「まあ問題点は色々あるかもですから、みなさんで議論してください」と丸投げしても、別に怒られることはなかったような 笑。
で、ここで強引に話は創作論へとつながってしまうんですが w、それはたとえば小説とかマンガなんかもそうで、まあこれはあくまで印象論なんですけれど、二十年代に入ってからなんかこう、言葉の一つ一つに色々気を遣わなきゃならん空気がデフォルトになってしまってるような気がします。やっぱ炎上なんかが日常化してからかな? 「それは使っちゃいかん言葉」みたいなものは四十年以上前からあったけれども、今は「やっちゃいかん人物造形」「含ませちゃいかんメッセージ」「ポジティブに書いちゃいかんテーマ」とか、暗黙の制限が多面的になってきたというか。
巷では暴言・失言の類がいまだに満ち溢れていますが、その手の「なんも考えずに喋り散らす」キャラは一定数いるんで、それは当たり前。むしろ、それ以外の一般層が、必要以上に一つ一つの行動・発言に対して慎重かつ臆病になってしまってるような気がしてなりません。
具体的に書くと……と、本来ならここで事例を挙げて今の言論空間とかの特異性をぐだぐだと論述するのが筋なんですけれど、本作は創作論に名を借りたDIYエッセイなんで、ここで元の話に戻ります w。
さて、そういうわけで、湾多が作り上げた欠陥工作品は、前述の理由で紹介するわけにはいきません。が、タイトルを見て「おっ!?」と期待した方に対し、それはあんまりだろうと思うんで、〝架空の完成形〟を語ることにしましょう。つまり、工作スキルが高い人ならここまでのものを作ってしまうんだろうな、と思える、安全上もそう問題はなさそうな「アンチ蒸れガジェット」のイメージ図です。
カーアクセサリーの製作所ならこの程度、本当に商品化してしまうかも知れませんね。っていうか、これぐらいのアイデア、絶対に相当数の方がとっくに考案していることと思いますんで、もしもこのエッセイを元にどこかの会社なり個人なりがぼろ儲けしたとしても、物言いはつけません。どのみち、湾多には完全な品物を作る甲斐性はありませんし、実用新案とか申請するのも(できたとして)楽にはできそうにないし……。
背中の蒸れを防止する運転席シート用ガジェット(仮)
基本コンセプト
通気性のある網目構造の背板を、シートから一定距離に離れた位置に固定維持できるよう、支持材をとりつけたもの。シルエット的に言えば、スノコの足部分を長くして、横倒しに背面シートにたてかけたもの。
パーツA
網板状の何か。運転者が上半身をもたせかけてもたわんだりしない程度の強度を保てる材質、または仕組みが必要。三十×四十センチ程度。
パーツB
パーツAをシートの背中面から四~五センチ程度浮かせられる仕掛けであれば、どんなものでも。そもそもパーツAは座面からも一定の高さに維持しなければならないので、たとえばパイプ状の何かを二本ほどシートに立てかけて、その上にパーツAをくくりつけるような形にするのがいちばん簡単な解決策か。
材料に関する考察と製作の実際に関して
衝突事故などのケースも考えると、材料に金属・プラスチック・木材が含まれるのは望ましくない(小さな声で告白しておくと、つまり、湾多の〝完成品〟はその手の材料だけでできているということです w)。強度・剛性等は最低限に抑え、耐久性にも目をつぶって、「壊れたらまた作り直せばいい」程度のものと割り切ること。その上で一定の荷重に耐える網目の板構造となると、入手しやすい材料で言えば、段ボールの枠に木綿糸のネットを張る形がベストか。
段ボールに必要な強度を持たせようとすると、それ自体でほとんど木材並みの厚さと重量が必要になりかねないので、完成予定品の必要要件(はっきり言えば、運転者の体格と体重)次第では材料として本末転倒なチョイスになるかも知れない。そうなると、別の可能性を探る必要がある。
たとえば長方形の枠の形をした細い浮き輪と言うようなものがあるのなら、活用できるかも知れない。何ならパーツBを兼ねた部品として、あとはその浮き輪に木綿糸なり毛糸なりゴムひもなりを張って、中空の背面シートクッションにできれば完成である(ちなみに、ナイロン糸は急激な荷重がかかったら凶器になり得るので、避ける方がよろしいかと)。
長方形の細い浮き輪などというものが見当たらなければ、自転車の小さめの車輪用のチューブと言う選択もアリか。枠が円形になってネットを張るのに多少の工夫がいるが、太めのチューブならこれもパーツBを兼ねた形になって作りやすい。空気入れの金属バルブの部分だけ、万が一の時の危険物になりかねないので、使用時にはバルブの位置に留意を要する。
いっそのこと、細長いバルーン風船を組み合わせて枠を作るという方法も可能性としてはある。今思い付きで書いてるので、うまくいくかどうかは全く保証できないし、頻繁に作り直す必要がありそうだし、何かのはずみで運転中にパンパン破裂する危険性だってある。が、そこそこ安定して利用できるのなら、もっとも安価かつ入手しやすい材料にはなるだろう。
浮き輪とかバルーンで作った枠という案の時はさて置き、仮にパーツAとして十分に薄くて強度のある網目板状のものが確保できたとする。その場合、パーツBにあたる部分の材料は何にすればいいのか。これも運転者の体格次第ではあるが、紙パイプがもっとも危険性の少ない、かつ安定的に入手できる材料なのではないかと思う。ホームセンターでそこそこの厚みのある一メートル程度の長さのパイプが手に入ればいいが、ぶっちゃけ、サランラップの芯でしっかりしたものがあれば、それをどうにかパーツAにとりつけて活用できる。
ただ、言うまでもなく、この紙パイプとて頑丈過ぎると木材と同等の危険物になり得るので、いざという時は簡単につぶれて、間違ってもとんがった部分が肉に食い込んだりしないような塩梅でなければならない。そんな手ごろな紙の芯などない、ということであれば……まああとはスポンジ類なり小ぶりなエアクッションなり厚めの風船なり色々チョイスはあると思うので、製作者諸氏の健闘を祈る次第である。
<了>
DIYエッセイ「夏場のドライブを超快適に! シートの蒸れとおさらばできる手作りグッズ!」をアップしようとしてできなかった件。 湾多珠巳 @wonder_tamami
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