遠回りの夏に

朝巳そると

遠回りの夏に

暑いから、行きたくないよね。

窓辺から夏空仰ぎそっと呟く。


風鈴はカーテンレールにくくられて、

風も当たらずそよともしない。


忙しい?面倒だよね、嫌だよね、

きっと混んでる、ちょっと遠いね。


諦めるための言葉が止まらない。

怖いだけだよ。断られるのが。


言い訳と怠惰は恐怖に依るものと、

優しく諭すぬくもりを求めた。


「ヒマだよね?これから花火観に行こう!」

震える手元は誰にも見えない。


「お前って、ホントに直球!」笑う君。

プロセスも理由わけも教えられない。


「うるさいわ!」って普段通りのリアクション。

遠回りの羅列、なにもかも忘れて。


初めて着てきた君の浴衣に降る、

日没あとの大輪の光。


言の葉の意味を求めては彷徨う、

正解を知らない、二人の物語はなし

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遠回りの夏に 朝巳そると @saltyhouse_cafe

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