春[カクヨム短歌賞10首連作部門]

わたし

「春」

やわらかな きみを抱きしめ 春が吹き

深く吸い込む 桃色の空気


もしものね もしもの話 風のなか

神様ならば 宙に花を撒く


まあるい蚊帳 くらやみ揺れて つつみこむ

空の扉に 流れ星ひとつ


世界の果て みつけた果実は きみのもの

どこか煌めく 黄金のりんご


いまわたし 風船ひとつ 持ち歩く

心の中は すこし軽めで


飛べぬまま 翼の跡を 背に抱いて

はやさもいまは どうでもよくて


眺めたい 一日中の 色たちを

赤に黄色に もふもふの青


踊れない 足にリズムを 刻んでは

タッタラタッタ わたしわらってた


いい言葉 言えないけれど 今日もまた

一緒にいよう 春が変わっても


こわいけど おばけにだって 手をふれる

季節のはざま 浮き足だって

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