【いじめ】みんなが「法による復讐」を行っていないから、いじめは無くならない

晋子(しんこ)@思想家・哲学者

いじめは「心」の問題ではない。「いじめは損」という思想が広まればいじめは減る

いじめはなぜ無くならないのか。

これだけ問題視され、学校教育でも再三注意され、メディアでも頻繁に取り上げられているのに、なぜいじめは消えないのか。

それは、いじめという行為が「リスクの無い快楽」になっているからだ。


本能的に考えれば、人間は基本的に弱者に優しくできる生き物ではない。そして、私は人間は基本的に性格が悪い生き物であるとも考えている。


本来、人間は利己的で、優位に立ちたい、支配したい、勝ちたいという衝動を本能的に持っている。

そしてその本能を最も安く、手軽に、リスクなしで満たせる手段が「いじめ」なのだ。


いじめっ子は、いじめをしている最中に笑っている。

それは罪悪感のない笑いだ。

なぜなら、「やり返されることはない」という確信があるからだ。

ここには一種の信頼関係すら成立している。

いじめっ子は、いじめられっ子が反撃しないことを信頼している。

だからこそ、安心していじめることができるのだ。


もし、いじめられっ子が毎回反撃してきたら?

あるいは、後日きちんと仕返ししてきたら?

いじめっ子は、いじめを楽しめない。

いじめが「損」になる。

だからやらない。

実に単純な話である。


それでも私たちの多くは、「復讐は良くない」と教えられてきた。

「やり返したら同じになってしまう」と。

「復讐の連鎖になる」と。

しかし、そもそも最初に悪いことをしているのは誰なのか?

いじめをしているのはいじめっ子である。

復讐の連鎖などという言葉は、最初の加害者が存在しなければ成立しない。

つまり、「復讐が悪」なのではない。

「いじめがすべての元凶」なのである。


とはいえ、やられたら殴り返せというのは、法治社会では推奨できない。

それは単なる暴力の応酬であり、社会秩序を破壊する。

だからこそ、私たちが今必要としているのは、「正しい意味での復讐」だ。

それが、法的手段による制裁である。


現行の日本の制度でも、いじめに対して損害賠償請求をすることは可能だ。

精神的苦痛に対する慰謝料、通院費、転校費用、教育機会損失に対する補償。

こうした請求を、いじめっ子本人、あるいはその保護者に対して行うことは法律上認められている。

にもかかわらず、それがほとんど行われていないのが現実である。


なぜか?


それは多くの場合、被害者側が「動かない」からだ。

あるいは、「動けない」と言った方が正しいかもしれない。

精神的に追い詰められていて、訴訟をする余裕がない。

親が「大ごとにしたくない」と止める。

学校が「目立たないように処理したい」と抑え込む。

結果として、いじめっ子は「やっても許される」「バレても軽く注意されるだけ」という感覚のまま、次の標的へと向かう。


だが、もしここで、いじめられっ子が立ち上がったとしたら?

弁護士を通して、正式な請求書を送り、法廷に立つ準備を整えたとしたら?

いじめっ子とその家族は、ようやく「やばい」と思うだろう。

学校も「放置していた責任が問われる」と気づくだろう。


このような例が増えれば、社会全体に一つの空気が生まれる。

「いじめはリスクが高い」「いじめると損をする」「訴えられるかもしれない」

この空気が、何よりの抑止力となるのだ。


いじめを無くすためには、感情論だけでは足りない。

道徳的に「いじめは悪い」と教えるだけでは、加害者の行動は変わらない。

人は、損をするときに初めて行動を見直す。

いじめっ子にとって、「いじめると自分の人生に傷がつく」「親も損害賠償で苦しむ」

そう思わせることが、いじめの根絶につながる。


もちろん、いじめられた側にすべての責任を背負わせることはしてはならない。

だが同時に、「泣き寝入り」がいじめを再生産してしまっているという現実も、私たちは直視すべきだ。


だからこそ、社会全体として、いじめに対する「正当な復讐=法的手段による制裁」を推進すべきである。


学校には、いじめ被害者への法的支援体制を整える責任がある。

弁護士会には、いじめ特化の相談窓口や無料支援の制度を拡充する責任がある。

行政には、いじめの損害を立証するためのサポートを義務化する責任がある。


そして私たち一人ひとりも、「訴えることは悪ではない」「正当な怒りを行動に変えることは正義である」という価値観を共有しなければならない。


いじめを許さない社会とは、優しさだけでできている社会ではない。

正義が正しく機能し、悪に対して確実に代償を支払わせる社会である。

それを築くために、私たちは「法による復讐」をもっと推奨し、制度的に支援していく必要がある。


それが、いじめのない社会の第一歩である。


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