第23話 歴史の彼方へ、二人の正史

鎌倉での役目を終えた私は、

すぐに義経様のもとへと、

引き返した。

私の介入により、

頼朝公からの義経様への追討は、

完全に停止された。

歴史は、

大きく、

そして確実に、

書き換えられたのだ。


義経様は、

歴史上では迎えるはずだった、

悲劇的な最期から解放され、

生き延びることができた。

私のこの手で、

彼の運命を、

変えることができたのだ。


数日後、

私は、

義経様と再会した。

日が傾きかけた草原の向こうに、彼の姿があった。

彼は、

私が鎌倉へ向かったことなど、

知る由もない。

ただ、

私の帰りを、

静かに待っていた。


再会は、

感動的な抱擁や、

言葉の洪水ではなかった。

私たち二人にしか通じない、

静かなものだった。

彼は、

私が無事に、

戻ってきたことを、

ただ、

その瞳で受け止めてくれた。


私は、

彼の前に立ち、

深々と頭を下げた。

「……遅くなりました、義経殿」

私の声は、

少しだけ震えていたかもしれない。

それは、

安堵と、

そして、

歴史を動かしたことへの、

密かな高揚感からだった。


義経様は、

私の顔を、

じっと見つめた。

彼の瞳には、

言葉にならない、

深い理解と、

感謝の念が浮かんでいた。

彼は、

私の行動の全てを、

理解しているかのように、

静かに頷いた。


そして、

彼は、

かつての呼び方に戻し、

静かに、

しかし、

確かな響きをもって、

私に答えた。

「遅い。

遅いぞ、弁慶」


そこに、

涙も、

笑顔も、

いらなかった。

ただ、

私たち二人の間に、

深く、

揺るぎない絆が、

確かに存在していた。

運命を共にし、

歴史を書き換えた者だけが持つ、

静かな尊厳。

それが、

私たちを包み込んでいた。


私は、顔を上げた。


「はい、もう迷いません」

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義経×弁慶、これだけはゆずれない──史実にない?書物には沢山ある……それだけのこと 五平 @FiveFlat

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