【声劇台本】月夜の女神ちゃん

澄田ゆきこ

本編

〇深夜、コンビニ


リョウ:……あ、すいません、75番もひとつ……あの、袋もいいですか……あ、PayPayで……わ、あ、すいませんチャージします、ごめんなさい! (慌てて操作をし)……あ、大丈夫です、あの、これで……あ、レシートはいいです……ありがとうございまーす……。


(コンビニの外に出て、灰皿の前に立つ)


リョウ:(ため息をついたあと、スマホを見る)……あ、終電……。


(間)


リョウ:……くそっ、マジかー……。(ため息)家まで歩いて30分……歩けなくはないけど……だる……でも今日は帰りたい……風呂入りたいし……。(ひとつため息、煙草を一本ぬきだして火をつける)


るな:あははっ、おにいさん、お疲れだねぇ。


リョウ:うわぁっ! びっくりした……。


るな:こんな時間までお仕事? 大変なんだねぇ。しかもその辛いカップ麺……もしかして夕ご飯? あはっ、不健康な若者だぁ。


リョウ:う、うるさいなぁ……。なんなの君、急に……。


るな:ねえ――それ一本くれたら、愚痴、つきあったげるよ。


リョウ:え? 急に何言って……ていうか、君、まだ――


るな:ふふっ、こう見えてもう20代なんだ。この恰好だと若く見られるんだけどね。でも、こういう服好きなんだ。地雷系っていうの? かわいいでしょ?


リョウ:(答えに窮しつつ)……まあ、そうなんじゃない。


るな:わあっ、褒められちゃった!


リョウ:……。


るな:あ、灰、落ちるよ。


リョウ:え? (指に灰が落ちる)あっつ!


るな:(大笑い)……はぁ、かわいそー。(まだ笑いが抜けない)


リョウ:……。(ため息)


るな:ほーら、またため息。幸せが逃げちゃうぞー?


リョウ:……逃げるような幸せなんて、ないよ。


るな:そうなの?


リョウ:僕の人生なんて、ろくでもないことの連続でしかないんだから。


るな:……どういうこと? (目を輝かせながらリョウの顔を見る)


リョウ:……この流れでどうしてそんな顔ができるのかな。


るな:えー、だってるな、おにいさんに興味あるんだもん。


リョウ:そうですか。……ほら、一本あげる。


るな:わぁ、ありがとー! 火も借りていい?


リョウ:どうぞ。


るな:ありがとー。(煙草に火をつけ、煙を吐く)……ふふっ、おにいさん、優しいねぇ。


リョウ:少しだけ誰かに愚痴りたくなっただけだよ。……聞いてくれるんでしょ。


るな:(煙草を咥えたまま)ん、いいよー。(煙を吸って、吐く)……で、どーしたの? 


リョウ:(力なく笑い)改めて言われると困るな。今日も別に、ただの残業帰りだし……。


るな:でも、少なくとも昨日は帰れてないんだよね?


リョウ:……!? なんで……。


るな:えへ、聞こえちゃった。おっきい独り言。


リョウ:ははっ、そっか……。……別に、たいしたことじゃないさ。納期の直前になって仕様変更が来たんだよ。クライアントの無茶ぶりを営業がほいほいのんで、現場にしわ寄せが来たってだけ。


るな:へえー。


リョウ:……主任もカリカリしてるし、エンジニア班もみんなピリピリしてるし、そんな中で僕が初歩的なミスして、主任に怒鳴られながら必死でリカバリーして……まあ、よくある話だよ。


るな:わー、大変だぁ。


リョウ:……絵にかいたような棒読みだね。


るな:だってるなのことじゃないもん。あ、これ、もしかしなくても、ブラック企業ってやつでしょ?


リョウ:さあ……どうなのかな。ホワイトでないのは確かだけど。世の中、どこも同じようなものなんじゃないかな。どうせ。


るな:……ふふっ。(愉快そうに)


リョウ:……(顔をしかめる)。……それにしても君、こんな時間に女の子が一人で、危ないよ。最近、何かと物騒なんだから。殺人事件とか……。


るな:わぁ、心配してくれるの? 優しいんだね。


リョウ:心配というか……。一般論というか……。


るな:……ねえ、じゃあ、おにいさんがるなをおうちまで送ってくれる?


リョウ:……え?


るな:まさか、言うだけ言って一人で帰させるつもりだった? 女の子を、一人で、夜道に放り出すんだ?


リョウ:いや、その……。


るな:そうだ、るなのおうちに上がってもいいよ。おにいさん、家ちょっと遠いんでしょ? うち、すぐだから。お風呂もお布団も貸してあげる。


リョウ:そ、それこそ不用心だろ、見ず知らずの男を……。


るな:大丈夫だよ。おにいさんは”何もしない”。いや、”何もできない”。断言できるよ。るな、この辺のカンはよく当たるの。


リョウ:……。


るな:さあ、どうする? このまま女の子ひとり置いて素知らぬ顔で帰る? それとも家まで送り届ける?


リョウ(N):女の子の大きな目が、じっとこちらを見る。真っ黒な瞳は、星のない東京の夜空よりも、深い深い闇の色をしている。

……危険だ。その言葉が、脳裏に浮かぶ。


るな:おにいさん?


リョウ:……。


るな:私を……見捨てるの?(きゅるんとした上目遣い)


リョウ:……あーもう、わかったよ。家まで送るだけね。


るな:ふふっ、紳士だね。それとも、欲がないって言ったほうがいい?


リョウ:……普通だよ、僕は。


るな:(楽しそうに笑う)


リョウ:……なんで笑うかな……。


るな:んーん、なんでもないよ。……じゃあ、行こっか。



◯るなの家(アパートの入り口)


るな:ここだよー。そこ、雑草で側溝が隠れてるから、気をつけてね。


リョウ:あ、ありがとう……。……君のアパート、ずいぶん古いんだね……おわぁっ!(側溝に足を取られて転ぶ)


るな:あははっ! だから言ったのに!


リョウ:……ってて……。


るな:わ、怪我? かわいそう……血、出てるよ。


リョウ:(よろよろ立ち上がりながら)大丈夫だよ、このくらい……。ちょっと擦りむいただけだし……。


るな:手当てしなきゃ! こっち入って、ほら。


リョウ:わっ、大丈夫だってば! ちょっと!


(一階のアパートの一室に強引に押し込まれ、突き飛ばされる)


リョウ:ぎゃっ! (尻もちをつき、手と腰の痛みに小さくうめく)


(るなが後ろ手に鍵を閉める)


るな:がっちゃーん。えへへっ、鍵、閉めちゃった。密室だねえ。


リョウ:……!(恐怖で身をすくめる)


るな:ん? かわいい顔して、どーしたの?


リョウ:……こ、これ、やっぱり美人局つつもたせとか、そういうヤツ……なんだろ?


るな:えー、やだなぁ、そんなつまんないのじゃないよー。


リョウ:いや、だって、だってこんな……いかにもボロいアパートの一階なんて、女の子は普通、避けるでしょ……。ほら、防犯的に……。


るな:ふふっ。なんとも「普通」らしい偏見だね、山口リョウくん。


リョウ:……!? な、なんで、僕の名前……!


るな:美人局なんかじゃないよ。奥にもだーれもいない。正真正銘、ここには君と私のふたりだけなんだよ、リョウくん。

……やっと、ふたりになれたね。(嬉しそうに)


リョウ:ひっ……! (息を荒げながら後ずさる)


るな:あはっ、尻もちのまま後ずさり? かわいーね、でも、危ないよ?


リョウ:(後ずさりをしていたら、滑る)ぎゃっ! ……な、なにこれ、ぬるっとして……(手にべっとりついた血糊を見て、短い悲鳴。息が荒くなる)


るな:ほーら。だめだよー、傷のある手で血を触ったら、危ないんだよ? だからじっとして、ね?


(リョウ、勢いよく背後を振り返る)


リョウ:(か細い悲鳴) なんだ、あれ……っ!


るな:るなね、実は、リョウくんに一目惚れだったんだー。るなの王子様はこの人しかいないって、ビビッときたの。


リョウ:人の、足……?(うわごとのように)


るな:スーツもくたくたで、クマが濃くて……今にも死にそうな顔がすっごくかわいくて、るな、キュンキュンが止まらなかったの! ずっとこうして話したかったんだぁ……。(うっとりしながら)


リョウ:血だまり……に、ナタ……? 


(フラッシュバック)


アナウンサー:首都圏で6件目となったこれらの殺人は、殺害現場に血痕で描かれた月から、いずれも同一人物の犯行と見られており――


リョウ:月……。……っ!!(恐怖で声にならない)


るな:ねえリョウくん、聞いてる?


リョウ:うわぁっ!! やめっ、手、離して――


るな:人が真剣に愛の告白をしてるのに、よそ見とは感心しないなあ。


リョウ:ご、ごめんなさいっ、許して……!


るな:ねえ、リョウくんは、るなの王子様になってくれるでしょ? るなの全部を受け止めるトクベツになってくれるよね?


リョウ:わかった、わかったから!


るな:わぁっ……!! ありがとう! 嬉しい! 夢みたい……!(うっとりしながら)

……きゃっ!


(リョウ、るなを突き飛ばして、乱暴に鍵を開け、アパートから逃げ出す)


リョウ:(しばらく全力疾走し、息切れしてよろよろ立ち止まる)……なんなんだよ、もう……! (息を整え)……っ、と、とにかく、家に……。(また走り出す)


リョウ(N):その日僕は、逃げ込むように家に帰った。鍵とチェーンをかけ、手のひらの血を洗い流したとたん、体からへなへなと力が抜けていった。すさまじい眠気に抗い、どうにか、這いながらベッドに行く。横になるや否や、僕は気絶するように眠りに落ちた。


翌朝は少し寝坊した。急いでシャワーを浴びて身支度をし、電車に飛び乗った。ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、擦り傷のひりつく痛みだけが、あれが夢ではないことを示していた。

――通報、したほうがいいよな。

ようやく冷静になり、そう考えられるようになったのは、無断欠勤の主任の分まで仕事を任され、目まぐるしく過ぎた勤務時間を終えてからのことで、僕はもう帰路についていた。とりあえず、帰ってからにしよう。昨日の限定カップラーメン、食べ損なったし……。夕飯のあとにしよう……。


僕は力なくドアノブに鍵を刺し、そのまま扉を開けた。



◯リョウの家(アパート)


リョウ:ただいまー……っと。(小声、ひとりごと)


るな:あ、リョウくん、おかえり!


リョウ:え……?


るな:ごめんね、”後処理”してたらごはん作るの遅くなっちゃった。おかずはできてるんだけど、ごはんがまだ炊けてなくて。もう少し待っててね。


リョウ:な、え……? な、なんで……?(掠れ声)


るな:だって、インスタントばかり食べてるんだもん。ゴミ箱もカップ麺の容器ばっかりじゃん。これからは、るなが彼女としてちゃんと作ってあげるから、きちんと栄養とってね。――あ、そうだ、パワハラ上司のいない職場はどうだった?


リョウ:は……? ぱわ、はら……? そ、それって、主任のこと……? (震え声)


るな:うん、そうだよ? ……もう、そんな顔しないでよ。君を傷つける奴を消すのなんて当たり前でしょ? 彼女なんだもん。


リョウ:(息切れが徐々に声を伴い、悲鳴になる) あ、ああ、つ、通報……! う、ああ、くそっ、手がっ――あっ(スマホを落とす)


るな:(スマホを拾い)あはっ、だーめ。そんなことするなら、これは没収ね。


リョウ:(腰を抜かしたまま、目を見開いて、息切れしながらるなを見上げている)


るな:大丈夫。ちゃんと足がつかないようにはしてるし……るなはリョウくんのことを傷つけたりはしないよ。


リョウ:ひっ……やめっ、近寄るなっ――


るな:ほら、ぎゅー。落ち着いて、リョウくん。ここは安全。大丈夫だよ。


リョウ:(まだ肩で息をしている)


るな:(耳元、甘い囁き声で)私が君のために、優しい世界を作ってあげるよ。中学時代に君をいじめてたアイツも、君を裏切って浮気したあの女も、ぜーんぶ私が消してあげる。


リョウ:(少し呼吸が落ちつきつつ)なんで、そんなこと知って……。


るな:好きな人の全部を知りたいのは、普通のことでしょ? だからるな、頑張ったんだ。えへへ。


リョウ:……(溜息をつき)狂ってるな、まったく……。


るな:そうかなぁ? リョウくんみたいな優しい人が浮かばれなくて、人を食い物にする人間の方が成功して……そういう世の中の方が、よっぽど狂ってると思わない?


リョウ:ははっ……そうかもな……。(後半に行くにつれて涙声)


るな:……リョウくん? ……よしよし、泣きたいなら、いっぱい泣きな。


リョウ:……っ。僕は――


るな:うん。(優しい声で)


リョウ:……僕はいつだって、この世界でうまく生きれなかった……。ずっと日陰者で……いくら真面目にやったって、うまくいかないことばかりで……少しズルくて器用なやつの方が、なんでも僕より評価されて……後ろ指をさされるのも、しわ寄せを食うのも、怒られるのも、いつだって僕で……そのくせみんな、都合のいい時だけ僕を利用して……僕は、何も……何も、悪いことなんか……ううっ……(少しずつ嗚咽が大きくなる)


るな:うんうん。リョウくんはなーんにも悪くないんだよ。なんにも間違ってない。リョウくんはずっと優しくて、真面目に、一生懸命がんばってきたんだよね。るなは全部知ってるよ。


リョウ:(るなに縋りつきながらすすり泣く)


るな:ずーっとつらかったね。子どものころから、出来のいいお姉さんに比べられて……。泣くだけで、お父さんには「男のくせに」って怒られて、お母さんもお父さんの言いなりで、守ってくれなくて……。


リョウ:(嗚咽の隙間で)うん……。


るな:寂しかったね。つらかったね。だけどもう大丈夫なんだよ。だって、リョウくんにはるながいるんだもん。るなだけがリョウくんの味方。いつだって大好きなリョウくんを守ってあげる。……ほら、深呼吸。


リョウ:(ぎこちなく深呼吸をする)


るな:そう、いい子。さ、涙拭いて、眼鏡なおして。――ごはん、食べよ。さっき炊けた音がしたよ。


リョウ:……ありがとう。


(間)


るな:今日はハンバーグと野菜スープにしたよ。ほら、そこ座ってて。今ごはんよそうね。――このくらいでいい?


リョウ:うん……。あ、あのさ、一応聞くけど、ハンバーグって何の――


るな:ん?


リョウ:……いや、なんでもない。


るな:(意味ありげに微笑し)はい、お待たせ。じゃあ、食べようか。


リョウ:……いただきます。(スープをすする)あ、美味しいな……。すごく優しい味がする……。あったかい……。


るな:わあ、よかった! ねね、次はハンバーグも食べて!


リョウ:う、うん……。(ハンバーグを食べる)ん、お、美味しいよ……。


るな:へへっ。るなの特性レシピだからね。


リョウ:……。



リョウ(N):るなが僕の「恋人」になってから、一ヶ月。


僕は相当わかりやすいタイプのようで、会社では事務の女の子に「最近肌つやがよくなりましたね」と指摘されたり、同期に「彼女できたんだろ」と露骨にからかわれたりした。主任の件で警察が来た当初はそれなりにざわついたものの、今は何事もなかったみたいに業務が進んで、主任の席にも別の人がついて、すっかり日常を取り戻している。


その一ヶ月の間に、巷で騒がれていた連続殺人は、新たに6人の犠牲者を出した。うちひとりは僕の元同級生、ひとりは僕の元カノだった。それぞれ福岡と青森にいたところを殺された。犯行が首都圏を出たことで、世間は騒然とした。警察は血眼になって捜査を続けているらしいが、いまだに犯人確保には至っていない。


リョウ:……これ、やっぱり君なの?


リョウ(N):僕がそう尋ねると、るなは無邪気な笑みを見せ、うなずいた。


るな:うん! がんばったでしょ?


リョウ:がんばったっていうか……


るな:もう、大丈夫だよ。尻尾をつかませないように、ちゃーんとうまくやってるよ。リョウくんに疑いがかからないように、ちゃんとダミーも作っておいたし。


リョウ:それは……ありがとう……。


リョウ(N):僕は、苦笑いでそう答えるしかなかった。……そして、ある週末のこと。




〇ある週末、リョウの家


リョウ:ただいまー……。


るな:おかえり! もう、おそーい!


リョウ:ごめん、急に部署の飲み会が入って……。


るな:ん。お詫びのぎゅー、して。


リョウ:……わかった。ほら。(抱きしめる)


るな:えへへっ! ふぁ……あったかい……。ねね、撫でてー。


リョウ:……はいはい。よしよーし。


るな:へへ……。気持ちい……。――でも、ウソの匂いがするね。


リョウ:……。(困惑と狼狽)


るな:――ねえ、なんで、香水の匂いと、リョウくんの吸ってない煙草の匂いがするの? 前の「部署の飲み会」の時には、こんな匂いしなかった。


リョウ:それは……。若手だけだったんだよ、今日は。


るな:ふうん、そっか。――いいこと教えてあげるよ、リョウくん。


リョウ:……なんだよ。


るな:君がこっそりいいなと思ってた事務の長谷川さんは、人事部の部長と社内不倫をしてるし、君が仲良しだと思っている同期の杉本くんは、君を陰で「あいつマジ便利でウケる」って笑ってる。ミスの責任をなすりつけたこともあるよ。


リョウ:……。


るな:前にも言ったよね? リョウくんの味方は、るなだけなんだよ。


リョウ:……君は、二人のことも殺すの?


るな:うん。だって、リョウくんの敵だもの。


リョウ:……まるで独裁スイッチだな、君は。


るな:ん? なあにそれ。


リョウ:……なんでもない。――るな。(強く抱き寄せる)


るな:きゃっ。なにーもう、急に情熱的だねぇ。感動しちゃった?


リョウ:――もう、やめよう、こんなこと。


るな:へ?


リョウ:人殺しなんて、やっぱり、よくないよ。日本の警察だって馬鹿じゃないんだし、これ以上は、もうやめよう。……るなが傍にいてくれるだけで、僕は幸せだから。ね?


るな:リョウくん……。


(間)


るな:……それ、本気で言ってる?(冷めた声で)


リョウ:……え? うわっ!(突き飛ばされて尻もちをつく)


るな:私なりに、二人で幸せになるために、がんばってたのにな。そんなこと言うんだ。


リョウ:(焦りながら)いや……だから、それ以外にも、幸せの形って色々あるだろ。ほら、結婚とか……子どもとかも、ほら……君が望むなら、僕はいくらでも協力するし、育児とか――


るな:は? 何それ。つまんな。


リョウ:……えっ?(怯えながらるなを見上げる)


るな:あーあ、がっかりだよ、リョウくん。


リョウ:いやっ、あの、これは言葉の綾っていうか――


るな:もう、何を言っても遅いよ。リョウくんはるなのこと、バカにした。


リョウ:(後ずさりながら)ごめん、ほんとごめん、そういうつもりじゃなくて、ほんとに、君をバカにしたとか否定したかったとかじゃないんだって、僕は――


るな:……残念だなあ。せっかくハッピーエンドだと思ったのに。


リョウ:ごめん、許し――ぎゃっ(押し倒されて頭を打つ)……るな?

はう゛っ(首を掴まれる)


るな:知ってる? 地雷ってね、踏んだ瞬間じゃなくて、足を離した瞬間に爆発するんだって。


リョウ:るな……。(苦しそうに)


るな:大好きだったよ、リョウくん。楽しかった。だからさ、リョウくんは特別に、るなの手で逝かせてあげるね。


リョウ:う゛っ……(少しずつ首を絞められる)


るな:あははっ! いい顔! ねえ、苦しい? 助けてほしい?


リョウ:る……な……(首を絞める力がどんどん強くなる)


るな:かわいいリョウくん。君にはやっぱり、かわいそうな顔が一番似合うね。


リョウ:(喋れずに呻くだけ)


るな:――ばいばーい、リョウくん。


(るな、手に力を込める。苦しがっているリョウは、しばらくしてふっと事切れる)


(間)


るな:……ふぅ。手、疲れたぁ。――あーあ、またやっちゃった。……まあ、いいか。いいモノ見れたし。


……はあっ、やっぱりこの顔、サイコーにかわいい……。(見とれる)


……んしょ。(立ち上がる)


(遠ざかりながら)さて、後処理と行きますかなー。(鼻歌まじりに)ふんふふーん、解体、かいたいーっ、今日はどのコを使おうかな~っと。(刃物の入ったカバンを漁る)――うん、君に決めた!


(近づきつつ)死体は新鮮なうちに血抜きしてハラワタ抜かないとねー。んー、どこからにしよっかなあ。……うん、やっぱり、最初は首だよね。……よし、刃はこのへんでおっけー、っと。それじゃいくよー、


いちにの、さんっ! (首を切り落とす)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【声劇台本】月夜の女神ちゃん 澄田ゆきこ @lakesnow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ