文字を

ふみその礼

第1話 文字を



外にいたかった子を

あぶないよと

無理やり内側に生まれさせた

それが

いま いる

この世界だ


何かを失ったまま

とどかぬままの

胸の内の

この隙間すきま

年とともに

じょわじょわ

紫色に溶けかかり

終わりというものが

萌えはじめてる


思いだしてみると

なにか

かすかな

約束があった



このどろどろしたわが有機体を

透過する光

貫きそして

照らし出す


その先に

わたしに願われたツトメのヘンリンが

待ちくたびれ


アキラメテ



ゆらゆら

ゆれながら

おちてゆくよ





そして


ひょっとしたら


あぶなひよぉ


と言われる前に


生まれることができそうだった


そこ


そこに


こんどこそ

きみはここに生まれなさいと


そお 


導いてやりたい



間違いやら

憎しみやらを

正すとかじゃない


ただ問いたかった

この世界のほんとうの願いを



たいせつなこの子を

やわらかいひかりに

とかしておくるから



こんどこそ



その先の世界に

根づかせ

芽ばえ


はな


ひらかせてやってください



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