アウラ

海中金雪丸

幽霊のきぶんで

 半透明なまま通過移動のためのあらゆる場所に痕跡を遺したいと、願望のままに遊歩をする。

すると、いつしか時間は進んで行き、静まった市場、かつての居住まい、故郷の大路などで……ファンタスマゴリーとでもいうべき、ある種の郷愁を覚えてしまう。

終わらない帰り道、あざやかな夕闇につつまれて、思い出がこぼれてゆく。うすれてゆく。

いくつか子供の頃の写真を見ても、私は思い出せない。あれ……好きな子とか、友達とかっていたっけな。

いや、そもそも家族っていたか。故郷とその香りは思いだせる。けど、家族?あの海底に沈んだ16余年とその季節に、そんなものがあっただろうか。

ガラス張りの商店街をハリボテの街ずたいに経巡る幼年時代しかわからない。

 ずいぶんと遠い場所にいることだけが、私にはわかった。











 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アウラ 海中金雪丸 @Yukimaru-1126

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ