第6話
パーンという乾いた銃声と共に、ミアは倒れる。肩から出血したミアは、咄嗟に出血した場所を抑え、エミリアの方を向く。
エミリアは銃を下ろし、ミアに近づく。
「エミリア大将。貴方は自分が何をしたかわかって…」
こんな状況であるにも関わらず、ミアはそうはっきりとした口調で言った。エミリアは何も言わない。
「…ああ、そうですか」
ミアは何かを察したように言った。
「貴方は、ユダヤ人なのですね」
先程までのエミリアなら、動揺して必死で否定しただろう。だが、エミリアは動じず、ミアの目の前で再びルガーP08をミアに向けた。
「やはりユダヤ人は必ず我々アーリア人に牙を剥く。今貴方がそうしているように」
まるで勝ち誇ったかのように彼女は言ったが、エミリアには一切響かなかった。
「…ユダヤ人で結構」
エミリアはそう言い放つ。ミアは、ただ笑っているだけだった。
「結局は、私も、貴方も、神のオルガンに合わせて踊っているに過ぎません。こんな結末も、運命というものです」
ミアがそう言い終わったと同時に、エミリアは発砲する。
「リナ!」
リナの所属する基地に着いたエミリアは、訓練中であるのも構わず真っ先にリナの元へ駆け寄った。
「エミリア大将…?!」
沈んだ表情をしていたリナは、驚いて顔を上げる。エミリアはそんなリナの手を掴んで、一言言った。
「行こう」
それだけを言って、エミリアはリナの手を引いて走り出す。
「ちょっと!エミリア大将!」
大隊長や他の隊員達が唖然としてその様子を見ていることしか出来なかった。
それからの2人の行方は、誰一人として知らない。ある噂では、ゲシュタポに捕らえられたとか、ある噂では大日本帝国に亡命したとか、無事なのか既に死亡しているのかさえ分からない。
そもそも、この話が武装親衛隊内の同性愛を禁じる為の作り話という説まである。
彼女らが今、一体どこで何をしているのか、そもそも実在したのか、それは神のみぞ知る。
第三帝国にて 北島綾 @kitazimaaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます