嫁、また爆発したのか?

蹦蹦騎士ピョンピョンナイト

隙あらば自爆!俺の相棒はジバクアリ。

太陽の暖かさを顔に感じながら、俺は目を開け、ベッドから起き上がり


新しい一日の始まりだ。


体を伸ばした途端、ドアが勢いよく開いた。


衝撃の音が、俺の中に残っていた眠気を一気に吹き飛ばした。


俺の相棒、人間の姿に変えられたジバクアリのクレモが入ってきた。


「おはよう!今日は最高の天気だね!」


今日の声も元気いっぱいだった。


彼女の頭の上にある、二本の触角は長い赤髪に紛れて、感情に合わせてふわふわ揺れている。


クレモは下の手でパンケーキを載せたお皿を二枚持ち、上の手でそれを指差していた。


彼女は燃えるように赤い目で、期待に満ちた目で俺に微笑んだ。


「今日焼いたパンケーキ、大成功だよ。両面すごく滑らかで、焦げてないよ!」


「そうか?わかったわかった。顔洗ったら食べる。」


「むう……わかった!」


クレモは少し不満そうに口を尖らせ、空いている手の指で俺を指す。


「早くしてね!」


俺はあくびをしながら、簡単に身支度を整え、簡素な小さなダイニングテーブルに座った。


施設を出てから数年も経った。


今は町の人たちの依頼を受けて、働きながら修行をしている。


幸い、院長名義で古い家を借りることができた。


そうでなければ、どうしたらいいのかわからない。


小さいけれど、ただの小さな平屋だけど。


とは言え、クレモと二人で暮らすには十分な広さだ。


あれからそんなに時間が経ったのだろうか?


最初は、強力な攻撃手段がなかったため、一人で魔獣を仲間にするのは至難の業だった。


魔獣の卵を準備してくれる家族もいなかったため、相棒と出会うには魔獣の市場で賭けるしかない。


その時、市場で卵売りのおじさんが卵を取り出した。

「いいことを教えやろ!この卵は大きな穴で見つけたんだ。その穴は焦げ跡だらけだ、範囲もすごく大きかった!きっと強力なモンスターなんだ!君、この卵が欲しいかい?」


おじさんは手で大げさに大きさを描いていました。


今思えば、あの頃の俺は本当にだまされやすいバカだったな。


施設の隣にある寮に戻り、古代の呪文を唱え、これで自分の魔力が卵と繋がり、こいつが孵化したら俺の相棒になる。


それを思いながら時が流れてゆく。


しばらくは卵を見守りながら待つだけの日々が過ごした。


ある日、寝る前に、その時が来たと感じて、相棒の誕生を見届たいから誕生までは寝れないと決めだ。


俺は未来の相棒の卵を見つめ、何かの変化を期待している。


すると、卵突然薄い光を放つた……


白い光の中、飼い猫ほどの大きさのアリが目の前で殻を破り、動き始めた。


赤い体と、細く節のある六本の脚が素早いで動く、まるで俺の皮膚の上で這っているかのようだった。


巨大な赤い複眼には、無数の俺の姿が映し出されている。それにあの頭の触角が揺れるたび、俺は少し吐き気を感じる。


巨大なアリは頭を傾け、口を開けたり閉じたりしながら、どんどん俺に近づいてきた。


複眼の中で、恐怖の表情を浮かべたの俺は、どんどん大きくなっていく。


「うわああああ!」


俺思わず叫びだす、目を開けた。


白い光の空間は消え、見慣れたの部屋が現れた。


「夢か?」


俺は息を吐いた。まさかこんな悪夢を見るとは……


虫の肢と複眼、そして虫の体のあの硬い殻が本当に苦手だ。


考えるだけで鳥肌が立つ。


この前も虫採りが好きな友達によく笑えたものだ。


そう思いながら、目の前突然に赤い線が二本揺れていた。


どこか見覚えがあったよう……


どうやらあれは悪夢ではなかった……


それから、燃えるように赤い複眼に映る無数の自分の姿が見えた。


猫ほどの大きさのアリが胸に飛びかかり、頭でこすってきた。


あまりの恐怖で体がすくんだ。


その瞬間、冷たい感触に思わず身震いした。


巨大アリは、俺に向かって頭を傾け、まるで笑みを浮かべるかのように口をパクパクと開いたり閉じたりした。


愛と恐怖が同時に感じられ、激しい混乱で視界が暗闇に包まれた……



目が覚めると、院長と院長夫人が俺に尋ねた。


もし耐えられないのなら、呪いを解いて方がどうだ?


確かに、呪いを解くならば、耐える必要はないが……


俺は考えながらベッドに横たわる赤い巨大アリを見る。


と、まるでこちらの言葉を少し理解したようだった、巨大アリは頭を傾け、口をパクパクと開閉し、触角で俺に触れた。


なんだ、こいつ……


しばらく考えた後、俺は覚悟を決まった!


確かに俺、虫苦手だげと、でももうこいつは俺の魔力の気配が付いている。


野に放てば、こいつの巣は受け入れないだろう。こいつの種族、巨大アリとっては、餓死させるのと変わらない。



少し勇気を振り絞って、巨大アリに触れてみた。


冷たく、少し吐き気もした。


だが、確かに自分と巨大アリの間に繋がりを感じた。



しかし、悩みはこれだけで終わりではなかった。


巨大アリの相棒、俺は慣れることができなかった。


特に、こいつは肌に触れるのが好きなようだったからだ!


燃えるように赤いの硬い体に触れるたびに、冷たい気持ちが襲ってくる。


時折、這い寄ってくることもあり、細い脚が少しずつ体の上を動く感じるたびに頭皮が痺れる。


この二つの症状が重なりと、すぐに意識を失ってしまった。


このままじゃ不味い!


どうしようもないので、院長に助けを求めに行った。


院長は、人化の術という一つの案を提案した。


昔、ある貴族が私利私欲のため、魔物を人間に変化させ、妻や側室として仕える魔法を開発した。


その起源は極めて欲深なものであったが、多くの引退した騎士と絆を結んだ魔獣たちを人間の姿に変化させ、共に暮らすことが出来た。


しかし、人間の姿に変化すれば、その姿が固定され、魔獣の体に戻ることはできなくなる……


それは、絆騎士にとって最も重要な乗り物を失うことを意味する……


それでも……やるしかない!


院長の指示に従い、俺はルーンに手を当て、体内のエネルギーを陣形に注入した。


魔力が徐々に満たされ、魔法紋様が光を放った。光は蝋燭のような光から次第に強い光へと強まり、巨大アリは陣形全体の光に閉じ込められた。


光が消えると、陣形の真ん中に四本の腕を持つ裸の子供が横たわっていた。


俺は相手が少女だと気づき、慌てて視線を彼女の体からそらした。


それでも分かった、彼女の人間の姿は本当に綺麗だった。


整った顔立ちは、とても小柄で可愛らしく、閉じたままの目には長いまつげが生え、燃えるように赤い髪はキラキラと輝いている。


額の上には、触角のはずの飾りのような、ひときわ長いものが二つあるが、以前ほど違和感はない。


毛布に覆われた体全体は見えないものの、かすかに見える体の曲線から、何らかの手がかりが浮かび上がってくる。細い腰と丸いお尻が刺激的な曲線を生み出し、まだ未熟ながらも存在感のある胸の主張もかすかに見えている。


あの頃の巨大アリが、今ではすっかり人間の姿での生活に慣れているとは、思わなかった……


性格のちょっと張り切りすぎたなところもな。


クレモが朝食を用意してくれたことも、今隣で今日焼いたパンケーキを誇らしげに見せびらかしていることもそうだ。


パンケーキの材料は意外と高いけど、俺たちは食費と宿泊費以外に出費はない。


欲しいものもそんなにないから、クレモの食欲を満たすために使うだけさ。


「おっ?今日は上手くいったみたいだな、もう食べていいのか?」


「もちろん……まだだよ!最後の仕上げが残ってるから。」


クレモは蜂蜜の瓶を取り出し、まるでタダみたいにたっぷりかけた。


このように蜂蜜を使えば、どう稼いでも財布が持たないの気がする。


それに、蜂蜜に浸ったパンケーキを見てると、食べる前から甘さで歯が痛くなりそうだった。


思わず顔をしかめた。


「またそんなにか?アリ人間かよお前は?これ、死ぬほど甘いの感じるな……」


クレモは手を止めずに頭を上げた。


「ええ、アリ人間ですが、なにか?」


「それもそうだな、お前の言う通りだ!」


確かに……こいつは本物のアリ人間だ、何も間違ってない。


くう……


「うん……変なこと……あ!まあ、それはそれとして、熱いうちに食べてね!」


クレモはナイフでパンケーキを小さく切り分け、フォークでつまんで、俺に差し出す。


「ほら、「あーん」して……」


またか!こいつ、一体どこでこんな奇妙な行動を覚えたのか?


しかし、この時に言わ通りしないと、しばらく膠着状態に陥る。


蜂蜜が滴るベタベタのパンケーキと、クレモの期待に満ちた瞳を見つめ……


仕方ない!俺は口を開け、クレモにパンケーキを口に入れさせた。


「甘い!」


口の中に広がる蜂蜜の味があまりに美味しくて、思わず叫んでしまった。


「うん、美味しいでしょ?」


クレモは嬉しそうに微笑み、目を細めた。


「まあ!悪くない……」


俺はパンケーキを口の中で噛みしめた。


正直に言うと、クレモの作るパンケーキは本当に美味しかった。


過剰な蜜に浸っているの見た目以外は、いい感じがした。


ちょうど良い温度が、柔らかな食感を生み出していた。蜂蜜もクレモが選んだものだった。


彼女はお菓子にこだわりがあって、蜂蜜もその延長だ。


その組み合わせで、とびきり美味しいパンケーキができた。


でも、そんなことを言ったら、きっと誇らしげにされるだろう。


その誇らしげな表情を思い出すと、簡単に成功させたくないと、つい頭を軽く叩きたくなる。


「今回もだめか!もっと練習しなきゃ」


クレモは両手を握りしめ、その目には不屈の闘志が宿っていた。


「ああ、ああ……はい、はい!」


クレモの熱意についてい出来ないと感じるながら、俺はしばらく目の前のパンケーキを集中する。




いつものように、クレモと俺は、町の人々と院長からの仕事依頼を解決し、報酬を貰うために様々な仕事をこなした。


クレモの四本の手とアリの巨大な筋力のおかげで、仕事はスムーズに進んだ。


薪割りも、家畜の世話も、重いものを運ぶのも、彼女は苦にしなかった。


俺が担当するのは技術が必要な部分だ。こんな風に分担できると、少し安心できる。


少なくとも、相棒に頼りっばかりという感じはしない。


「柵の修理はほぼ終わった。クレモ、残りの木材を持ってきてくれ」


俺は板に釘を打ち込み、手で揺すり、柵が倒れないことを確認し、思い通りに仕事が終わって、満足して頷いた。


「任せてくれ!」


クレモは残りの材料を四本の手で軽々と持ち上げた。


振り返って立ち去ろうとしたその時、彼女の頭の触角が突然激しく震え始めた。


「どうしたんだ?クレモ。」


クレモの感覚は人間よりはるかに鋭い。周囲に動きはなかったが、クレモが何の理由もなくこんな反応をするはずがない。


「変な匂いがする、数が多い!しかも、すごく近い!」


クレモは木材を置き、用心深く辺りを見回した。


俺も必死に敵を探したが、視界には俺たち以外、生き物はいなかった。


「クレモ、この周りは、何も生き物もないだが?」


「見つけたよ…奴らは…地下に潜めている!」


クレモは不思議な力で地面を踏み鳴らし、鋼鉄の鼻を持つ巨大ハタネズミが数匹、振り出された。


それらの体は、幾重にも変形し、骨はねじれ、体には不規則な成長が見られ、手足はあまたどか萎縮とか、不吉な魔力の揺らぎを感じた。間違いない、あれは混沌獣カオスビーストだ!


指先に魔力が集まり、素早く水柱を放った。


この水柱は、一定距離内の敵を槍のように突き刺すことができる。水ヤリとでも言おうか。


水ヤリを数発撃ち、巨大ハタネズミを数匹撃ち抜いたが、仲間が殺されたせいか、さらに多くの数が地面から現れ、そのうちの何匹かがこちらに向かってきた……


慌てて水の魔力を使い、波動シールドを構築し、奴らの鋭い鋼鉄の鼻を防いだ。


「ふん!この……くらえ!このネズミども!」


クレモの体内に膨大な魔力が集まり、高圧縮された魔力は液体のような光となった。


「待って!クレモ、やめろ……」


俺の言葉が言い終わる前に、巨大な光が爆発し、炎が辺りを覆い、煙と塵が舞い上がった。


「自爆すんな……」


煙が消えるのあと……目の前に現れたのは、粉々に吹き飛ばされた鋼鉄の鼻を持つ巨大ハタネズミと、服が破れ、ほとんど裸同然のクレモだった。


「ふん!楽勝だよ!」


クレモは得意げに四本の親指を立ててみせた。


「全部倒した!イイェイ!」


「お、おい、バカ!身体見えてるぞ!」


仕方なく、用意していた毛布をクレモの体巻きて、少しでも裸よりましだ!


ていうか、こんな状況に慣れてる自分も、なかなかおかしいな……と、苦笑いした。


俺の相棒は、ただの巨大アリではなく、ジバクアリだ。


これは人化後に判明したこと。


だから、火の魔術師が敵にダメージを与えるために地中に埋めた戦術魔法陣の名をもとに、相棒に名前をつけた。


何度も注意しているのに、こいつの隙あらば自爆する癖は治らない。


「えへへ、あ!本当だ、また服が爆発した、ごめん!」


クレモは手で後頭部を押さえ、申し訳なさそうに微笑んだ。


「軽々しく自爆すんなと、何度も言ったでしょうか……服はともかく、自爆は体に相当な負担がかかるんじゃないか?」


思わず声を荒げ。


同時に、ボロボロの服でより艶めかしく見える肌を見ないように目をこらした。


「ふーん?でも、自爆って大切な人を守るためにある力ですよね?」


クレモは首を傾げ、困惑したように俺を見た。


確かに、ジバクアリは巣と女王を守るために自爆する能力を持っている。


普通のジバクアリは自爆直後に命を落とすが、これも人化術の影響か、クレモの自爆は直接的な生命の脅威にはならないものの。


それでも、身体への負担は大きい。


しかし、クレモの性格と自爆の理由を考えると、彼女を叱ることは、俺はできない。


彼女は何も悪くないだ!


「ああ……ただ、そんなことをしたら、お前を心配してるだけだ!」


「えへへ、ありがとう。」クレモの笑顔は、作物を照らす太陽のように明るかった。


それは、眩しいすぎる笑顔……


「……さて、荷物をまとめて、町に戻って混沌獣のことを知らせに行こう。」


「わかった。」


クレモは片手で毛布を掴み、残りの三本の手で余った薪を軽々と持ち上げた。


道具箱は自分で運び、証拠として巨大ハタネズミの金属の鼻を切り落とし、持ち帰るために道具箱に入れました。


俺の魔法は水属性で、一般的にヒーラーとしてな属性、力は弱いと思われていますが、長年の訓練で筋肉もあまり発達してないだが。


それでも、こんな小さな道具箱を運べないわけではない。


他の騎士志願者とは違い、クレモに頼って長距離を素早く移動することはできず、俺は自分の足でゆっくりと歩くしかない。


俺たちのホワイトウィロータウンはそれほど大きくないが、町外れの農家の柵から町に戻るにはかなりの時間がかかる。


「ところで、クレモ。」


「どうしたの?」


クレモは俺を見つめで、瞬きをした。


彼女は三本の手にそれぞれ薪の束を持っていたが、それでもまだ余裕があるようだった。


「すまんない。恐怖に打ち勝てないから、お前をこんな風にしてしまった。」


長年の獣の絆なら話は別だが、普通の魔獣にとって、人間の姿は不便のはずだ。


「またその話?」


クレモは首を横に振った。


「本当に嬉しいよ、傍に立ち、色々な大切な思い出を出来るなんて。」


「クレモ……」


「それに、人間になってから、こんなに美味しいお菓子が食べられるんだ。」


クレモは明るく笑った。その笑顔、あまりにもの明るさだ!


殴りたくなるくらいだ!


「お前と言う奴は……」


さっきまでの罪悪感と悲しみが、一気に消え去った。


「ふふ。」


気分はすっかり良くなり、足取りも軽くなった…でも、さっきの混沌の獣たちの出現で少し心配になったので、急いで町へ報告しに行かなければならなかった。


「よう!クレモちゃん、その格好……お前さん、嫁、また爆発したのか?」


知り合いからは、こんなふうにからかわれるのも、もう何度目かわからないな。


俺も、いつも通り同じ返しをするしかない。


「嫁じゃねえ、相棒だ!」

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