ゴブリン「くっ、殺せ!」

AK3t(TuT)

第1話

「くっ、殺せ!」


「ホントに人間の言葉を話せるんだな、お前」


「そんな事はどうだっていいだろ!」


「まあ落ち着け、石をぶん投げようとするな。それめっちゃ痛いんだよバカ」



俺の名はシャ=チク。

お偉方にこき使われる哀れな人間だ。

今日もわざわざ王都から離れた森に来て、命じられた任務をこなしている最中だ。



「殺しゃしねーよ。とりあえず付いてこい」


「くっ、という言葉には騙されんぞ!これから私に酷いことをするに決まっているんだ!」


「そんなエ◯同人みたいな事するわけないだろ。大体、お前の貧相な体じゃ興奮できんわ」



緑色の肌に小さく痩せ細った体に、襤褸布を纏ったコイツ。

印刷術の発展に伴って普及したエ◯同人にも、こんな特殊すぎるヒロインはいないだろう。



◆◆



「どこだここは!なんだあの、白くてデッカイ壁は!」


「城壁だよ。魔物から街を守ってんの」


「じゃあ私は入れないな!」


「まあ、許可取ればいけるかもしれねーけど···面倒くさいから城壁外にあるこの施設で済ませるぞ。ほら、腕出せ」


「ひっ!?」



注射針に怯えているらしい。



「滅菌処理済みだから安心しろ」


「安心できるわけ無いだろう!甚振るくらいならとっとと殺せ!」


「暴れんなっつの。···チッ、《麻痺バインド》」


「う、動けなっ···」


「一瞬チクっとするけど我慢しろよー」



ぷすっ



「············え?」


「《麻痺》解除。どうだ、痛かったか?」


「これが拷問···なのか?」


「これは拷問じゃねえ、採血。お前の血を少しだけ抜き取って、いろいろ検査するらしいぜ」


「検査?」


「そうだ。詳しいことはそのうち話すけど、とりあえず俺はこの血液を王都の研究施設に届けてくるから、お前はここを動くんじゃねーぞ···あ、コイツ2時間くらい預かっといてくれ」


「はい。お任せ下さい、シャ=チク様」


「誰だお前!うっわ私と同じくらい腕細いのに力強っ···やめろ!やめろぉぉおおお!?」


「良い子で待ってろよー」



医療職に就けるのはエリートばかりだ。

前線で活動することもある彼女は、フィジカルもそんじょそこらの冒険者を凌駕している。

ヒョロガリメスゴブリンが敵う相手ではない。



◆◆



王都、地下研究施設。


「はい、こちらが結果です」


「早くね?」


「“異世界の民”の技術の結晶ですから」


「ふーん、どれどれ···何も分からん」


「え、分かんないんですか?ざーこざーこ」


「異世界に毒されすぎだろ···俺は科学はからきしなんだよ。猿にも分かるくらい簡単に説明してくれ」


「はいはい。まあ、色々とおかしなところはあるんですけどね。上層部の予想通りでしたよ」


「つまり···」


「人間とゴブリンのハーフです。多分“FOX”して生み出されたんじゃあなくて、人工的に作られたんだと思います」


「根拠は?」


「“配列”が綺麗すぎるんですよ。人工的に作られたとしか考えられない。魔導式に置き換えたら美しいんだろうなぁ···」



基本的に研究職の人間は優秀だが変態だ。

この男も魔導式にメスガキ的な萌えを見出す、極めて高度な変態だ。

何を言っているのか理解したくない。



◆◆



城壁を飛び越え、王城に参上した。


「ツヤイー王、こちらが検査結果でございます」


「うむ、ありがとう···やはりそうだったか」


「はい···イルワ帝国の国境付近で発見された事も踏まえると、まず確定でしょう」


「そうか。イルワ帝国には倫理に反した行動であると国際的に大々的に批判しておく。イルワが非を認めた時は国家が人権を保障して養おう。だがしかし、それまでは君が養っていくのだぞ」


「むぅ···はい」



◆◆



話の早い王様のおかげで、想定より30分は早く戻れた。



「おかえりなさい。早かったですね」


「お陰様でな。後はコイツをどうするか···」


「ここでお世話してもかまいませんが?」


「いや、いい。拾ったのは俺だから、きっちり責任取るよ」


「では間を取って、この子を私たち2人の子供とするのはどうでしょうか」


「却下」



コイツの人権も保証してもらったし、後は諸々の雑事を済ませてしまおう。



「おら!風呂入れ」


「熱湯の拷問か!?···あっ、きもちいい」



「おら!飯食え」


「何これうっま···何これ···」



「おら!寝ろ!」


「すごいふかふかだぁ···スヤァ···( ˘ω˘)」



······疲れたけど、こういう生活も悪くないかもしれないな。



──────────────────────



◯シャ=チク

出自は平民だがクソほど優秀。

王お抱えの冒険者、もとい何でも屋。

実際、大抵のことは何でも出来る。

高さ20m超の城壁を素の力で飛び越えるフィジカルゴリラ。魔法も強い。

ただし自己肯定感はやや低く、本人は自分を器用貧乏だと思っている。



◯王都の研究員(男)

魔導式に対して性的に興奮する変態エリート。

フィジカルは一般市民よりも多少マシという程度だが、そこそこ高位の魔法を使える。



◯城外の研究員(女)

シャ=チクの元同僚で戦闘狂だったが、負傷の後遺症が原因で引退した。

ただし、極短期間なら全盛期並の動きは出来る。

シャ=チクに媚薬を仕込むこと数十回、全て看破もしくは解毒されて失敗している。



◯ツヤイー王

いい奴。政治と隔絶したシャ=チクに対しては気安く接するが、政争となれば毅然とした王としての仮面を被り辣腕を振るう。

ただ、政治モード中も内心では「かったりいなー」とか思ってたりする。



◯イルワ帝国

悪の帝国。ゴリゴリの軍事独裁政権。

放っといてもそのうち滅ぶ。



◯ゴブリン(♀)

ゴブリンらしからぬ美貌や知能に加えて、ゴブリンを凌駕する戦闘力を持つ。

とはいえまだ子供なので、強めの魔物に襲われたら普通に死ぬ。

厳密には人間とゴブリンのハーフ。



◯異世界の民

異世界転生者の集団。

ラノベでよくある奴。

出所不明の知識チートをフル活用し、現代日本の生活レベルを目指して日々邁進している。

エ◯への情熱と探究心は計り知れない。

シャ=チクとも交流がある。



──────────────────────


反響があったら真面目に書きます。



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