カクヨム短歌賞一首部門応募作品

来冬 邦子

カクヨム短歌賞一首部門応募作品

わたしAI 少女型ヒューマノイド 家出してみた初めての夜


初対面 猫が指先嗅ぎに来る 「知らない匂い だけど好きかも」


蛍飛ぶ川辺は猫の遊歩道 「きみ、変わってるね」と猫に言われた


悲しくて目を逸らしたらキスされた 「ほめたんだよ」と猫が笑った


猫柳しだれて揺れる川の風「坐ろうか」ってベンチがひとつ


腰かけたわたしの膝に猫が乗る ゴロゴロゴロと不思議な振動


「きみが好き」猫の瞳が丸くなる 「わたしも好き」と答えていいの?


「スカートからプラグが出てる。それなあに?」そろそろ危ない残り22%


膝の猫、抱きしめてキス そっとそっと。「ごめんね。帰る」息が苦しい


猫が鳴く 置き去りにして 駆け出せば 足がもつれる 残り19%


人の声「ここにいたのか」 抱き上げて 連れ戻される 家出失敗


ついてくる猫には誰も気づかない 最後に聞こえた 「きみが好きだよ」


誰も知らないAI少女と猫の恋 この思い出を初期化しないで

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カクヨム短歌賞一首部門応募作品 来冬 邦子 @pippiteepa

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