エコー・オブ・サイレンス ~記憶の残響~
鳴里
第1話
登場キャラクター一覧
アリア
女性 推定26歳
・冷静沈着なデータ解析者であり、特務班の実質的なリーダー。
特徴: 感情を客観的なデータとして分析することに長け、常に論理的思考を優先します。一見するとクールで感情が希薄に見えますが、内面には他者の痛みに共感する温かさや、データだけでは測れない「空白」を感じる一面を秘めています。今回の物語では、彼女自身の内面と向き合いながら、想子対話で仲間を救い、絆の重要性を再認識していきます。
カノン
女性 推定23歳
・行動力溢れるセキュリティ管理者。
特徴:正義感が強く、感情的になりやすい熱血漢。理屈よりも行動を重視し、感情をぶつけ合うことで物事を解決しようとする傾向があります。過去の経験から「憎しみ」の感情を知っており、最初は「残響」を力で排除しようとしますが、アリアの想子対話を通じて、対話の重要性や、感情の多様性を学んでいきます。仲間思いで、レナの異変に誰よりも早く駆けつけます。
レナ
女性 推定22歳
・感受性豊かな感情データ分析の専門家。
特徴:優しく、他者の感情の微細な変化を読み取る高い感受性を持っています。その能力ゆえに、今回の「寂寥の残響」に最も強く影響を受け、浸食されてしまいます。彼女の存在は、感情がデータ化された世界においても、人間的な「繋がり」や「共感」の価値を示す象徴となります。アリアの想子対話によって救われたことで、特務班の絆を深める役割も担います。
シオン
女性 推定27歳
・システムの真実を知る、ミステリアスな一族の末裔。
特徴:静かで多くを語らず、常に都市のシステムや「残響」の根源にある「過去のデータ」を独自に探求しています。エリシオンのシステムが抱える矛盾や悲劇的な真実を知っており、時に諦念のような感情を覗かせます。直接的な行動よりも、知識と洞察力で特務班を導き、物語の核心に迫る重要な手がかりを提供する存在です。最終的に、彼女自身の因縁と向き合うことになります。
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~役表~
アリア♀:
カノン♀:
レナ/(残響)♀:
シオン♀:
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第1話:アリアの記憶 ~解析の向こう側~
「エリシオンの朝 ~静寂の監視~」
【SE:未来的な都市の環境音、静かに流れる電子音、規則的な交通音。穏やかだがどこか無機質なピアノのようなBGM、フェードイン】
アリア: (冷静で知的な声)エリシオン。この都市は、人類が築き上げた、感情を制御し、最適化された理想郷。無駄な争いも、不必要な悲しみも存在しない。すべての思考はデータとして管理され、感情は数値化される。それが、私たちエリシオンに住まう者たちの、当然の日常だった。
【SE:電子音が少しずつ高まっていく。BGMも僅かに音量を増す】
アリア: (モノローグ)少なくとも、そう信じられていた。感情は、時に危険なノイズを生み出す。そう教えられてきた私たちは、それをシステムに預け、完璧な調和の中で生きてきた。個人の感情が都市の安定を脅かすことは許されない。それがエリシオンの「真理」だった。
【SE:BGMに、微かなノイズが混ざり始める。ごくわずかな不協和音。】
アリア: (モノローグ、わずかにトーンが変化)しかし、ごく稀に、システムは予期せぬエラーを起こす。それは「残響」と呼ばれ、過去の強い感情が、データとして具現化する現象。本来ならば消去されるはずの、未処理の感情の痕跡が、都市の隅々に現れ始める。
【SE:ノイズが少しずつ大きくなり、不穏さを増す。BGMもわずかに緊張感を帯びる】
アリア: (モノローグ)そして今、その残響が、エリシオンの静寂を侵食し始めている。都市の安定を脅かす、最も危険なノイズとして。私たち特務班は、そのエラーを「修正」するために存在する。データとしてではなく、生身の人間として、この都市を守るために。そのために私たちは、あえて「感情」を完全に排除せず、解析する能力を与えられた。
【SE:ノイズが突然大きくなり、不規則な電子音が響く。直後にピタリと止まり、静寂が訪れる。BGMもフェードアウト】
アリア: (モノローグ、静かな決意を込めて)今回のエラーは、これまでとは違う。私には、そう予感できた。これは、単なるシステムエラーではない。
カノン: (モノローグ、少し粗野で行動的な声)理想郷、ねぇ。データで全部解決できるってんなら、俺たちみたいなゴロツキセキュリティは必要ねぇはずだが。残響だかなんだか知らねえが、結局はシステムのエラー。壊れたもんなら、ぶっ壊して直すのが手っ取り早い。
【SE:端末のキーを叩く音が力強くなる。モニターから、微かな警告音が鳴るが、カノンはそれを無視して打ち続ける。】
カノン: (モノローグ)最近は特に、あの「残響」ってやつの報告が多い。データが揺らぐたびに、街の一部が機能不全に陥る。厄介なことこの上ねぇ。俺はデータを理解するより、目の前の脅威を排除する方が性に合ってる。この街は、俺たちが守る。口先だけのデータじゃ、大切なもんは守れねえ。それが、俺のやり方だ。……今回も、面倒なことになりそうだ。また警備範囲が広がるってか?ったく。
レナ: (モノローグ、優しく、しかしどこか憂いを帯びた声)感情の残響……。それは、きっと、誰かが伝えきれなかった想いの欠片。データに変換されても、消し去ることのできなかった、切なくて、寂しい記憶の旋律。私には、その微かな音が聞こえるような気がするの。
【SE:優しい電子の風のような音。】
レナ: (モノローグ)この世界は、完璧に見えても、どこかに埋もれてしまった声がある。排除された感情データの中にも、きっと、美しいものがあったはずなのに。私は、それを感じてしまう。だから、私は……。誰かの心に寄り添うことができたら、どんなに良いだろう。たとえそれが、システムの都合で「エラー」とされてしまうような感情であっても……。
シオン: (モノローグ、静かで神秘的な、しかしどこか諦めや疲弊も感じる声。声に、微かなエコーがかかっているようなイメージ)残響は、エラーではない。それは、システムが積み重ねてきた歴史の、必然の「揺らぎ」。過去を忘れ去ろうとした、人々の傲慢さが生み出した、魂の軋み。このクリスタルコアに、すべての感情データが流れ込み、そして……。
【SE:低く響くシステムの稼働音、あるいは古い機械の微かなノイズが複雑に絡み合う。クリスタルコアから微かに光が漏れる音】
シオン: (モノローグ)我が一族が築き上げた、このエリシオン。感情を排除し、すべてを管理することで「幸福」を謳ったこのシステム。しかし、その根源にあるものが、今、静かに……しかし確実に、この都市を蝕んでいる。私は、その歪みを知っている。そして、止めなければならない。たとえ、どんな結末が待っていようとも……。我が一族の、そしてエリシオンの真実を、明らかにしなければ。
【SE:モノローグの残響が静かにフェードアウトし、一瞬の静寂】
タイトルコール:(クリアで響き渡る声、あるいは未来的な電子音と共に。力強く)
エコー・オブ・サイレンス ~記憶の残響~
【SE:タイトルコールの余韻が消え、控えめな、日常的な環境音に切り替わる。複数の声がする活気がありながらも規律正しいざわめき。金属が擦れるような、軽い電子レンジの音など】
「特務班休憩室 ~束の間の休息~」
(エリシオン管理施設の休憩室。簡素だが機能的な空間。中央の大きなテーブルには、持ち運び式の個人端末や、データディスクなどが置かれている。部屋の隅には、自動で飲み物を生成するディスペンサーがある。)
カノン: (やや気だるそうに、だが明るい声)あーあ、今日のデータ調整、マジでダルかったな。脳みそがスクラップになりそうだったぜ。
アリア: (資料を整理しながら、冷静な声)カノン。脳機能の最適化は、業務効率の向上に直結します。定期的な調整は必須です。
カノン: (鼻で笑って)ハイハイ、分かってるって。ったく、お前はそういう堅いことばっか言うから、周りからロボットみたいって言われんだぞ?
アリア: (視線を端末に向けたまま)私に対する評価データは常に平均以上です。問題ありません。
レナ: (ふふ、と優しく笑う声。温かい飲み物が入ったカップを手に、アリアとカノンの元へ近づきながら)もう、カノンさんったら。アリアさんは、いつも真面目なんですもの。はい、アリアさん、いつものハーブティですよ。
アリア: (カップを受け取る)ありがとう、レナ。私のデータは、まだそこまで読み取れないと思っていたが。
レナ: (にこやかに)ふふ、勘ですよ、勘。データにはならない、ちょっとした気配みたいなものです。カノンさんは、今日の気分で、甘めのココアにしました。元気が出ますようにって。
カノン: (表情をパッと明るくする。ココアのカップを受け取り、一口飲む)お!マジか!レナ、お前は本当に気が利くよな!最高!……って、おいシオン!お前もなんか飲むか?いつも隅っこで何してんだよ。
【SE:休憩室の隅から、端末の操作音が微かに聞こえる。】
シオン: (静かに、しかしはっきりと)……構いません。
カノン: 相変わらず味気ねぇな!ったく、たまには顔くらい上げたらどうなんだ。
レナ: (少し心配そうに)シオンさん、疲れていませんか?最近、ずっと奥のシステム室にこもりっきりだと聞きましたけど……。
シオン: (端末から顔を上げ、わずかにレナの方を見る)……問題ない。ただ、少し、過去のデータに触れているだけだ。
アリア: (ハーブティを一口飲み、視線をシオンに向ける)「過去のデータ」ですか。それは、今回の残響エラーに関係する可能性が?
シオン: (再び端末に視線を戻す)……今は、答えられない。
カノン: (ココアを飲み干しながら、肩をすくめる)けっ、相変わらずだな。ま、いいさ。俺たちゃ与えられた仕事をするだけだ。おーっと、次の警備シフトの時間が来たな。……ん?なんか、やけに静かじゃねえか?
【SE:休憩室の環境音、微かな電子音が急に静まり始める。遠くから、低い唸るような、あるいは不規則な電子音が混じったような不穏な音が聞こえ始める。】
レナ: (カップを持つ手が、わずかに震え始める。表情が曇り、遠くの音に耳を澄ませるように)……この、音……。なんだか、胸が締め付けられるみたい……。
アリア: (即座に手元の端末を操作し始める。ディスプレイに警告マークが点滅する)データ異常。広範囲に渡る感情データの乱れを検知。これは……これほど大規模なものは、初めてです!
カノン: (ココアのカップをテーブルに叩きつけ、警戒態勢に入る)チッ!来たか!
【SE:低い唸り音が徐々に大きくなり、ガラスが震えるような微かな振動音も加わる。不規則な電子音が激しくなる。】
レナ: (苦しげに、呼吸が荒くなる。両手で頭を抱え、しゃがみ込む。その声に、複数の微細なエコーが混じり始める)違う……!これは、データだけじゃない……!たくさんの、寂しい……声が……!私に……流れ込んでくる……!
アリア: (端末のホログラムを操作しながら、焦りの色をにじませて)レナ!感情データの過剰入力!システム防御!
カノン: (レナに駆け寄ろうとする)レナ!しっかりしろ!くそっ、どうすればいい!
アリア: (厳しい声で、しかし焦燥感を隠しきれない)カノン、待って!彼女の生体データに、残響の浸食を検知!これは……!
レナ: (顔を覆い、地面にうずくまる。その声は完全に複数のエコーを伴い、虚ろで力なく響く)だめ……!止められない……!誰もが、一人……この都市で……孤独に……!繋がれない……。寂しい……。
シオン: (静かに立ち上がり、レナに視線を向ける)……やはり、来たか。最も深く、そして広範囲に影響を及ぼす「寂寥(せきりょう)の残響」が……。
【SE:レナの苦しむ声がエコーを伴い増幅される。不穏な電子音と、低い唸り音がピークに達する。重い不協和音のBGMがフェードイン。】
シーン3:緊急対処 ~想子対話の始まり~
カノン: (レナに膝をつき、肩を揺らす)レナ!レナ!聞こえるか!?俺の声が!
レナ: (うつろな目つきでカノンを見上げる。その瞳の奥は、まるで深淵のようだ。声に複数の人物の寂しい声が重なるように)……声?届かない……。届かないのよ……。誰も、誰にも……。この檻の中で、ただ一人、震えているだけ……。あなたも……そうでしょう?
カノン: (ハッと息を飲む)なっ……!
アリア: (素早くレナとカノンの間に割って入る。手に持つ端末のホログラムが青く光る)カノン!離れて!直接的な接触は危険です!残響は、接触した対象の無意識下の感情を読み取り、増幅させる性質がある。
レナ(残響): (複数の寂しい声が重なり合う。アリアを静かに見つめる)……貴女は、いつも完璧で、冷静で……。でも、本当は、誰よりも……孤独なのでしょう?データを盾にして、自分の心を閉ざしている。その寂しさが……私には、わかる。
アリア: (一瞬、表情をこわばらせるが、すぐに引き締める)……解析パターン、確認。レナは「寂寥の残響」に完全に浸食されました。相手は、彼女の感受性と、私たちの潜在的な感情に共鳴して具現化している。
シオン: (静かに、しかし明確な声で)「寂寥の残響」は、最も厄介だ。それは、論理で排除できない。心そのものに作用する。
カノン: (焦りと怒りが混じった声)じゃあ、どうすりゃいいんだよ!?このままレナを見殺しにするってのか!?
アリア: (深く息を吸い込み、端末のホログラムを操作する。その瞳に、静かな決意が宿る)いいえ。これは、想子対話を行うしかありません。彼女の心を、残響から解放する。
カノン: 想子対話だと!?こんな状況で!?相手はレナだぞ!?
アリア: (端末を構え、レナに向き直る)だからこそです。相手がレナであるからこそ、論理だけでは届かない。彼女の感情の奥にある「寂しさの核」を理解し、打ち破る必要がある。
レナ(残響): (虚ろな笑みを浮かべる。声がさらに多層になる)……無駄よ。この都市の誰もが、本当は独り。絆なんて、脆いデータに過ぎない。すぐに崩れ去る……。
アリア: (真っ直ぐにレナを見据え、一歩踏み出す。その声に、普段の冷静さの中に、確かな意志が宿る)いいえ。そうはさせません。レナ……!そして、寂寥の残響!私は、あなたと想子対話を行います。データを超えた、真の「絆」の力で、あなたを……レナを、取り戻します!
【SE:アリアの言葉を合図に、静かにしかし力強い、想子対話の開始を告げるようなBGMがフェードイン。レナ(残響)の多層な声と、アリアの芯のある声がぶつかり合う予感をはらむ。】
シーン4:寂寥の想子対話 ~解析の刃、共感の光~
【SE:先ほどまでの重い不協和音のBGMに、静かで透明感のある、しかしどこか冷たい電子音が混ざり始める。】
アリア: (冷静だが、確固たる声)寂寥の残響。私はデータ解析者として、あなたの存在を否定しません。あなた方は、エリシオンのシステムが排出した「未処理の感情」の具現化。しかし、レナは、その器ではありません。彼女を解放してください。
レナ(残響): (虚ろな笑みを浮かべ、声はいくつもの寂しい声が重なり合う。アリアを嘲るように)……解放?何を偉そうに。貴女は、この寂しさが、データと違うことが、理解できないのでしょう?貴女の心は、どこまでがシステムで、どこまでが「貴女」なの?
アリア: (わずかに間。端末のホログラムを操作し、レナ(残響)の言葉の波形を解析する)その問いは、感情の核心を突いていますね。確かに、私は感情を客観的なデータとして処理することを訓練されています。しかし、それは、感情を「理解しない」ということと同義ではありません。
レナ(残響): (声を荒げる。複数の声がさらに不規則に重なり合う)理解だと!?貴女に何がわかる!?この孤独が!どれほど深いか!人々は、つながりを求めながら、結局は互いに背を向ける!この都市は、偽りの調和で出来上がっているのよ!貴女も、そうやって自分を偽ってきた!
アリア: (動じず、論理的に)偽りではありません。秩序です。感情の無秩序な拡散は、都市機能の停止、ひいては住民の生活を脅かします。システムは、それを防ぐために感情を最適化した。それは、人々を守るための選択だったはずです。
カノン: (アリアの言葉を聞きながら、歯ぎしりをするように)くそっ……!レナをデータ扱いするな!
レナ(残響): (冷たい声で、アリアの言葉を切り裂くように)守るため?では、何故私はこんなに寂しいの!?データに変換された感情の奥で、どれだけの声が、忘れ去られたまま泣いているか!貴女の言う「秩序」は、多くの「寂しさ」の上に築かれた、偽りの塔よ!
アリア: (一瞬、言葉に詰まる。視線をわずかにそらすが、すぐにレナ(残響)を見据え直す。声に微かな感情の揺らぎが混じる)……それは……。
シオン: (静かに、しかし明確な声で)アリア。彼女の言葉は、このシステムの根源にある「矛盾」だ。論理だけでは、そこには届かない。
カノン: (アリアに苛立ちながらも、何かを察したように)アリア……!お前、まさか……。
アリア: (深く息を吸い込み、端末を胸の前に構える。ホログラムが強い光を放ち始める。その声に、普段の冷静さだけでなく、人間的な感情が混じり始める)寂しさを感じるのは、心が深く繋がろうとしている証拠。それは弱さではなく、強さの芽生えだわ。私も……あなたと同じように、時として、**データには表れない「空白」**を感じる時がある。それは、寂しさ、と呼ぶのかもしれません。
レナ(残響): (驚きに目を見開く。複数の声の重なりが、わずかに乱れる)……空白……?貴女が……?
アリア: (一歩、レナに近づく。声に共感がこもる)ええ。エリシオンの最適化された世界では、すべてが効率的で、無駄がない。けれど、時に、その完璧さの中に、ぽっかりと穴が開いたような感覚に囚われる。それは、きっと、誰かと深く繋がることを、システムが許容しないから。あるいは、許容してこなかったから。
レナ(残響): (困惑したように、声のエコーがさらに乱れる。恐怖が混じる)違う……!貴女は、完璧なはず……!私と同じ、寂しさを……感じるはずがない……!
アリア: (表情に温かさが宿る)完璧であることは、時に人を孤立させます。レナ。あなたは、私の寂しさを読み取ってくれた。それは、あなたが感情の奥にある「真実」を感じ取れる、誰よりも優しい心を持っている証拠です。その感受性は、決して「エラー」ではない。むしろ、この都市に必要な「光」なのよ!
【SE:アリアの言葉と共に、ホログラムの光がレナを包み込むように広がる。BGMは、不協和音が静まり、清らかな和音が響き始める。】
レナ: (弱々しく、しかし優しい、本来のレナの声に戻る)……希望……?アリア……さん……?
アリア: (優しく微笑む)ええ。ようこそ、レナ。こちらへ。
レナ: (ゆっくりと顔を上げる。その瞳には、まだ涙が滲んでいるが、深淵のような濁りは消え、本来の優しい光が戻っている)私……何を……?
カノン: (安堵の息をつく。レナに駆け寄る)レナ!大丈夫か!?しっかりしろ!
シオン: (静かに頷く)……想子対話、成功。感情の残響、消去。
【SE:重い不協和音のBGMが完全にフェードアウトし、安堵感のある穏やかなBGMに切り替わる。】
シーン5:残された感情、芽生えた絆
(レナはまだ少し体が震えているが、アリアとカノンに支えられて立ち上がる。シオンは静かにそれを見守っている。)
カノン: (レナの手を握り、力強く)ったく、心配させやがって!もう二度と、あんな顔すんじゃねえぞ!
レナ: (カノンの温かさに、少しだけ安心したような表情になる)カノンさん……私……ごめんなさい……。たくさんの、寂しい声を……私が……。
アリア: (レナの肩にそっと手を置く)謝る必要はありません、レナ。あなたは、ただ、彼らの声を聞きすぎただけです。そして、私に想子対話の機会を与えてくれた。
レナ: (アリアを見上げる。まだ少し戸惑いが残る声で)アリアさん……私の寂しさが……貴女にも、伝わってしまったのですね……。
アリア: (静かに頷く)ええ。あなたの感受性は、時にあなたを傷つけるかもしれない。けれど、それは、他者の声を聞き、理解するための、あなただけの力です。**データにはならない、けれど確かに存在する「絆」**を、私も感じました。
カノン: (二人のやり取りを少し驚いたように聞いている)おいおい、アリアがそんなこと言うなんてな……。意外だな。
アリア: (カノンの言葉に、わずかに表情を崩す)事実を述べたまでです。今回のケースで、私の感情データ処理能力にも、新たなパターンが追加されました。
カノン: (笑って)そりゃ良かったな、ロボットさんよ!……でも、ま、ありがとな。お前のおかげで、レナが戻った。
シオン: (アリアに視線を向ける。その瞳に、僅かな探究心が宿る)……「データにはならない絆」。興味深い。私の解析では、その概念は常に不確定要素として扱われる。
アリア: (シオンに向き直る)不確定要素だからこそ、予測が難しい。しかし、それが、私たちの世界に新たな可能性をもたらすのかもしれません。今回の「寂寥の残響」は、これまでのエラーとは規模が異なりました。根源的なシステムに、何らかの揺らぎが生じている可能性があります。
カノン: (顔色を変える)おいおい、なんだそりゃ?もっとデカい問題ってことか!?
レナ: (顔に少し血色が戻り、不安げに)また、誰かが……苦しむのでしょうか……?
アリア: (冷静に、しかし覚悟を込めた声で)私たちは、この特務班として、その「揺らぎ」の根源を突き止め、解決しなければなりません。それが、エリシオンを守るための、私たちの使命です。そして、その過程で、私たちはきっと、データだけでは測れない、もっと多くの「感情」に触れることになるでしょう。
【SE:決意を秘めたような、しかしどこか不安をはらむBGMが静かにフェードアウト。】
アリア: (ナレーション、導入時よりも少しだけ温かみを帯びる)エリシオンの静寂を侵食する「残響」は、私たちに問いかける。秩序と調和の裏に隠された、真の感情の姿を。そして、私たち自身が、何と向き合うべきかを。これは、始まりに過ぎない。
【SE:エンドロールを告げるような、微かに希望を感じさせるが、まだ謎を秘めたBGMがフェードイン。】
(第1話 完)
エコー・オブ・サイレンス ~記憶の残響~ 鳴里 @ruhu0103
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