第1怪異輸送民間軍事秘匿機関

@SHUBAINU

第1話 初めての勤務

今日は叔父から斡旋してもらった会社に初めて行く。この前まで劣等感と一緒に布団の中で抱き合っていたものだが、今になってはきっちりスーツを着て会社に行くとは不思議なものだ。


「よう、新入り。ここの事は深くは知らないんだってな?」色白で端麗な顔をした女性がしゃべりかけてきた。スーツでなく作業着を着ているが綺麗だ。


「俺の名前はチェレンコフ。こんなんでも日系だ。お前の世話係だな。」にぱっとひまわりのような笑顔を見せてきた。確かに外国人といった感じの顔立ちではない。


「失礼ながら、女性か男性どっちですか?」性別ははっきりさせておかないと気持ちが悪い。くくっと笑った彼女は女じゃないよ、とだけ言った。


「仕事の話に戻るが、ここの仕事の話は聞いたか?」首を振るとだろうなといった顔をした。


「ここでの仕事は怪異運搬だ。鎮圧部門、運搬部門、人事部門。この3つの部門の仕事をとりあえず教える。仕事する上の理念もな。」


白色の廊下を通っていく最中にいろんなものや人が通り過ぎて行った。人間じゃない人もいるのか?

「怪異って?」 


「簡単に言っちまえば妖怪と動物の間の奴だ。殺すことも生かすこともできない。うちでは稀だけど妖怪とかも取り扱ってるがな。」 


「怪異って買ってなんかメリットあるんですか?」 


「うまくいけばその力でうまく金が集まったり、相手を痕跡付かせずに殺せたりする。だから個人で買う奴も団体や軍で買ったりするやつもいるな。」


気づくと大きな電磁表示板には「運搬部門」と書かれている大きい鉄製のドアに着いた。チェレンコフさんがカードキーでそこを開けると人とオフィス。そしてコンテナや木製の箱が山積みにされていた。近くにはキャタピラが付いた軍用の運送車両がいる。


「まずはここの部門だが、ここの仕事は文字通りに運搬したり運搬の依頼を受ける場所だ。正直、ここが一番稼ぎやすい。」


「ついてきてくれ。」手招きされたところは木箱だとかが山積みにされたところだった。キツイ匂いがする。「臭いだろ?これは泥田坊の匂い。怨念とまじりあって腐ってんのさ。」コンテナ内にいるらしいそいつはドンドンと鋼鉄の壁を蹴っていた。


「ここではこのコンテナたちをあの運送車両、VTAPに乗せるだけの仕事さ。」

「アイツには最新の人工知能が搭載されててね。長期的な運航でもイカれないようにできてるのさ。」ブイタップというらしいその運送車両はよく見るとお札が貼られ、お経の文が書かれていた。


「後は書類仕事だったり雑務。依頼を受けたり、金貰ったり、トラブル解決するだけ。」

「なんでコンテナの仕事と分割されてるんですか?オフィスの人がやればいいんじゃないですか?」

「精神錯乱に追い込まれて脱走させたりするから分割されてんだってよ。」


んじゃ次は、そう言って別の廊下を走り始めた。

そうしていると格納庫らしき場所に着いた。「ここが鎮圧部門、UAVや攻撃機、戦車だとか揃えてる、歩兵部隊とかもな。俺もここで働いてる。」

「やっぱ脱走するんですか?」

コク、と頷く。「一番、殉職者が多いのもここ。昨日は2人死んだよ。」

びくっとすると、彼はにやっと笑って

「大丈夫、最近じゃ脱走は少ないし。」


「んで最後はここ」一番多い人と机と書類が散乱している部門だった。

「ここで殉職者届、辞職届、精神カウンセリングが行われる。」

やめたくてしょうがなくて死にたくなってきたらここにきて辞めろ。辛いな~辞めたいな~くらいで来るな。と釘を刺された。どれだけ過酷なのだろうか?


その後は帰っていいということになってチェレンコフさんと飲みに行った。おごってもらって気分がだいぶ楽になった。別れ際に作業着とメモの切れ端を貰った。そのまま、家に帰って溶けていくように寝た。


起きた二日酔いのまま、メモを読んだ。


「これは理念だ。1つ目、人間は死んだ時点で忘れろ。2つ目、人間になりたいとかをぬかす怪異が出てきても構うな。3つ目、怪異は怪異だ。元人間でもしかるべき処置を下せ。」


これだけがメモに書かれていた。メモは血であっただろう物で染まっていた。誰かが殉職したときに胸の中に持っていたのだろうか?なぜ彼が持っているのだろうか、彼の愛していた人が持っていたのだろうか。


チェレンコフさんにLENEを送る。


「昨日はありがとうございました。」 

                           「昨日は飲んでたね。」


「ようやくつけた仕事でしたから」

                          「はは、そりゃよかった」


作業着に着替え、会社に向かう。そういや会社名を教えてもらってないな。


出社すると社長室に呼ばれた。配属を決めるらしい。「えー君はサイトB鎮圧部門地上部隊配属となる。おめでとう。」髭を蓄えた強面のおじさんから言われた。鎮圧部門に向かうとチェレンコフさんと出会った。「ここの配属になったか、ラッキーだね。給料は高い。銃と札の使い方を覚えれば後はトントンさ。」


ロッカーに荷物を積める。ロッカーは殉職者の物だったらしく、写真が入っていた。写真は背を向けさせた。見たくない。「とりあえず最近では脱走は少ないから好きな銃選んで使いこなせれるようになりな。札はひとまず練習はいい。」


そう言われたから、射撃場に来たが農業用のコンテナに山積みになった銃を見るとすごい世界に来たことが分かった。ここは火薬臭い。誰かが置いて行った銃の銃口から紫煙が吹いている。


とりあえず、適当な銃を拾う。AK-47というらしい。映画で見たような典型的な構え方をする。ぎこちない。


…一通り銃は撃ってみた。やはり、反動が少ない銃が一番扱いやすい。グロックを手に取った。これが今日から俺が扱う銃だ。「いい銃を見つけたじゃないの」そう言ってストローで野菜ジュースをちゅうちゅうと吸ってるチェレンコフさんがいた。


「…いつから居ました?」「君が機関銃を触って反動に悩んでいるとこから」


「いつですかそれ…」「ふふ、いつだろうな?」


仕事の通知を告げるPDAが鳴る。「あ~仕事だ。付いてこい初仕事だぞ小林君。」

車に乗り、適当に揺られている。「てかこの会社、民間でも依頼できるんですね。」

「捕獲して利益に出来るからな。今回は駆除だが。」


「駆除なんですか?どうしてです?」「住み付いちまった品だからな。地縛は相当な品じゃないと運搬はしない。」そうしていると目的地に着いた。



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