第9話
ミルグレン・ティアナ。
サンゴール王国第一王女。
【光の王】グインエルの娘。
彼女の公式な記述は十四歳までの時のものしか残されていない。
尚、エデン大陸史に同じ名の女性が存在するが、この二人を正確に同一人物と特定する文献や証言は一切後世に残されていない。
聖キーラン歴1000年に派生する【エデン天災】において、これを晴らそうと北嶺、眠れる大地を目指した冒険者達の中で、最も輝きを残す一人である。
彼女の消息は【次元の狭間】が閉じ、エデンに平穏が戻った後、完全に途絶える。
世界に平和をもたらした勇者エドアルトの随行者の一人。
暗黒時代を彩った英雄譚を描いた、後世の絵画の多くには、
彼らの一行は必ず三人で描かれる。
真紅の鎧と聖なる大剣を背負ったエドアルト・サンクロワの姿はどの文献にも共通するが、もう一人は老人であったり、天使であったり、多種多様に姿を変え、
勇者を導く【助言者】という位置づけで描かれた。
そして最後の一人は、年格好は色々ではあるものの、
必ず弓を携えた女性の姿で描かれる。
聖弓を持ち、勇者に襲いかかる数多の不死者を打ち払い、彼の辿るべき道を晴らした【導く者】である。
彼女は勇者エドアルトの母とも娘とも姉妹とも、恋人とも友人とも妻とも記された。
エドアルト・サンクロワとミルグレン・ティアナの両名の名だけはいついかなる時も明確に文献に刻まれている。
ミルグレンは【次元の狭間】が閉じる最後まで、彼と旅を共にした。
そして世界が平和になると、聖弓を神殿に封じ彼女は歴史の表舞台から姿を消す。
もしサンゴールの第一王女と彼女が同一人物であると仮定するならば、
彼女は故郷に戻ったのかもしれないが、それよりおよそ二十年後滅亡するサンゴール王国の文献には彼女の名は一切出て来ない。
……彼女が何を願い、何を叶え、何と最後まであったのか。
それを知る術は後世には残ってはいない。
【終】
その翡翠き彷徨い【第58話 大好きなひと】 七海ポルカ @reeeeeen13
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