後編:友情合体! 穿て、必殺のランス!
――リリィ・エンパイア遠征軍、旗艦『リリヤケア』ブリッジ。
空気は、敗北の苦い味で満たされていた。冷たい光を放つ純白の壁と、磨き上げられた黒曜石のような床。唯一の音は、コンソールを操作する電子音と、オペレーターたちの抑制された声だけだ。
ブリッジの中央、司令官席に座るアンシアは、正面の巨大なホログラムスクリーンを見つめていた。スクリーンには、これから接続する後方司令部の紋章が静かに浮かんでいる。
「……総司令官閣下。後方司令部、ベアトリーチェ将軍との定時報告回線、開きます」
オペレーターの報告に、アンシアは短く「繋ぎなさい」とだけ応えた。
スクリーンが瞬き、ノイズが一瞬走った後、立体映像が浮かび上がる。そこに映し出されたのは、皺の刻まれた顔に、鷹のように鋭い目を持つ老将軍の姿だった。ベアトリーチェ。女王陛下の覚えもめでたい、古参の軍人だ。彼女の背景に映る豪奢な司令室が、前線であるこのブリッジの機能的な風景を、暗に嘲笑っているかのようだった。
アンシアは席から立ち、敬礼と共に報告を開始した。
「こちら前線司令部、総司令官アンシアです。これより、第一次浄化作戦の戦闘報告を……」
『その必要はない』
ベアトリーチェは、アンシアの言葉を冷たく遮った。その声は、通信回線を通しているとは思えないほど、鮮明な侮蔑を含んでいた。
『戦闘データはリアルタイムで確認している。実に無様だったな。蒸気と歯車で動く、野蛮人の鉄クズに手こずり、貴重な部隊を失うとは』
画面の向こうから突き刺さる、氷のような視線。アンシアは、背後で部下たちが息をのむのを感じながら、平静を装って答えた。
「……申し訳ありません。ですが、敵機体は我々の想定を上回る性能を……」
『言い訳か!』
ベアトリーチェの声が、ブリッジのスピーカーから怒声となって響き渡る。
『期待外れも甚だしい! やはり、あの女の血は、穢れていたということか!』
「……将軍。作戦の失敗は、全て司令官である私の責任です。ですが……」
『口答えをするな、不義の子めが!』
画面の中の老将軍が、怒りに顔を歪ませる。ブリッジのクルーたちは皆、うつむき、唇を噛みしめ、この一方的な叱責が終わるのを耐えるしかなかった。
『貴様の母親と、その身に流れる血の汚名を拭い去る機会を、陛下は寛大にも与えてくださったのだ。その慈悲にすら唾を吐くというなら、陛下の沙汰を待つまでも無く、私がその首をはねてくれようぞ!』
その言葉は、アンシアの胸に深く突き刺さった。だが、彼女は決してうつむかない。顔を上げ、巨大なスクリーンに映るベアトリーチェの目を、まっすぐに見返した。
「……将軍。あなたの言う通り、私は機会を頂いているに過ぎません。ですが、その機会を成功に導くのが、私の責務。今回の敗北は、未知の敵に対する情報不足が招いた、勝利のために必要な犠牲です」
『なんだと……?』
「この敗北で、我々は貴重な実戦データを手に入れました。敵の動力源、武装、そしてパイロットの戦闘パターン。特に、あの不可解な高粘度・高温の液体射出攻撃の成分解析も、既に着手しています」
アンシアは、冷徹なまでの論理で続ける。
「次の攻撃で、私は必ず勝利します。それが、陛下のご慈悲に応える、唯一の方法ですので」
ぐっ、と画面の中のベアトリーチェが言葉に詰まる。
老将軍は、忌々しげに舌打ちをすると、一方的に通信を切断した。ベアトリーチェの巨大な顔がスクリーンから消え、ブリッジには重い沈黙が訪れる。
その静寂を破ったのは、技術士官の一人だった。彼女は恐る恐るアンシアに歩み寄ると、タブレット型の情報端末を差し出した。
「総司令官閣下……。先ほどの敵機の戦闘データを、我が国のヒュージギアと照合した結果……看過できない類似点が……」
アンシアはタブレットに目を落とす。そこに表示されていたのは、Gガイザーのエネルギーフローと、リリィ・エンパイアの誇る巨大兵器『ヒュージギア』の基礎理論との比較グラフだった。出力方式も制御系も、あまりに原始的で、野蛮だ。だが、その根底に流れる思想は、紛れもなく……。
「……本国の最高機密である
全ては、その男に帰結する。女王陛下の『姉妹』に選ばれた母と密通し、その名誉を汚した忌まわしき大罪人。
アンシアの唇から、凍てつくような低い声が漏れた。
「ユーリ・ハザマスキー……」
その名には、軽蔑と、憎悪と、そしてアンシア自身も気づかぬ、微かな渇望のような響きが混じっていた。彼女はタブレットを技術士官に突き返すと、再びGガイザーの静止画が映るメインスクリーンに向き直った。
「どこまでも祟ってくれるじゃないか。……だが、私がその因果、断ち切ってくれよう」
その声は、ブリッジのクルーたちにではなく、画面の向こうにいるであろう、まだ見ぬ父親の亡霊に向けて放たれたかのようだった。
アンシアは、傍らで命令を待つイライザに振り向いた。その瞳は、先ほどまでの屈辱も、過去への執着も全て飲み干し、ただ純粋な、破壊の意志だけを宿していた。
「イライザ」
「はっ!」
「シュヴァルツ・リッターの改修を急がせなさい。第一次攻撃のデータを解析した結果、敵の液体弾は着弾時に瞬間的に硬質化し、運動エネルギーを直接叩き込む特性を持つことが判明しました。通常の防水コーティングでは意味を成しません。装甲前面に、衝撃を段階的にいなすための多層リアクティブアーマーを追加しなさい。対熱・対塩化ナトリウム用の特殊コーティングも三重に。そして、リミッターを解除し、プラズマ大剣の出力を最大に」
「……! しかし、それでは機体への負荷が……!」
アンシアは、部下の懸念を冷たく一蹴した。
「構いません」
アンシアは、手元のコンソールに表示されたGガイザーのデータを見下ろした。
「次は、必ずあの鉄クズを、パイロットごと両断します」
※
夜が明ける前、早朝の公衆温泉。
檜の匂いと、湯本特有の濃い硫黄の香りが、ひんやりとした空気に混じり合っていた。岩造りの露天風呂の湯面からは、もうもうと湯気が立ち上り、星が消えかけた空へと昇っていく。水面を叩くお湯の音だけが、静かな空気に甲高く響いていた。
俺は、父さんと二人、その湯に肩まで浸かっていた。
昨日の戦闘で酷使した体は、まだ鉛のように重く、節々が鈍く痛む。だが、芯まで温まるこの湯が、その痛みを少しずつ和らげてくれているのが分かった。
「……よくやった、勇斗」
湯けむりの向こうで、父さんが静かに言った。その声は、いつもの気の抜けたものではなく、重く、硬質だった。
「だが、お前のGガイザーは、いわば究極の『壁』だ。一点に集中する高圧攻撃は強力だが、機動力の高い敵を相手にするには限界がある」
父さんの横顔は、いつになく厳しかった。ただの心配じゃない。もっと深くて、暗い何かに耐えているような……そんな顔だった。重苦しい空気が、俺たちの間に漂う。
何か、何か言わなきゃ。そう思った俺は、場の空気を変えようと、わざと明るい声を出した。
「父さん、背中流そうか」
その言葉に、父さんの肩が微かに揺れた。
一瞬、驚いたように俺の顔を見ると、すぐに視線を逸らし、ふっと短い息を吐いた。その横顔に浮かんだのは、笑顔のようで、泣いているようにも見える、不思議な表情だった。
「……いや、いい。それより、肩までしっかり浸かっておけ。疲れが取れる」
父さんはそう言うと、ふたたび湯に身を沈めながら、これからの予定を告げた。
「壁だけでは、勝てん。……侵略者を貫く、鋭い『矛』も必要だ。別メニューで訓練中だった誠くんと、今日からは合流して模擬戦闘訓練を行ってもらう」
――誠が……ずっと訓練を? 俺とは別に……?
父さんの言葉が、頭の中でこだまする。
*
その日から、俺と誠の地獄のような共同訓練が始まった。
高機動近接戦闘に特化したGランサーを駆る誠は、シミュレーターの中でも、まるで水を得た魚のようだった。俺たちは何度もぶつかり、言い合い、そして互いの背中を預け合いながら、コンビネーションの精度を高めていった。
研究所が最終切り札と位置付ける『プランDG』の存在も、この時に初めて知らされた。
そして、訓練開始から数日後。シミュレーターでの模擬戦を終え、汗だくで格納庫の片隅に座り込んでいると、隣で同じように息を切らしていた誠に、俺はずっと聞きたかったことを尋ねた。
「誠。お前、こんな日が来ることを知ってたのか?」
「……ちょっと前からな」
平然と答える誠に、俺は少しムッとする。
「俺には誰も教えてくれなくってさ、水くさいって言うか、モヤモヤするな」
「まあ確かに、勇斗の親父さんは不器用かな」
「どういう意味だよ」
「お前にギリギリまで、のほほんとしてて欲しかったんだと思うけど……」
そこで誠は一度言葉を切ると、真っ直ぐに俺の目を見た。
「やっぱり何も言わなかったのはどうかと思った、僕は」
その真剣な眼差しに、俺の中のモヤモヤが少しだけ晴れた気がした。こいつは、ちゃんと俺の側に立ってくれてる。
「行くぞ、誠」
「ああ。背中は任せた」
そう言い合える仲になった矢先、運命の日は、あまりにも突然やって来た。
街に、再び警報が鳴り響いたのだ。
東の空から、リリィ・エンパイアの黒き騎士『シュヴァルツ・リッター』が、数機の護衛を伴って高速で接近していた。
俺たちは、今度こそ二人で、それぞれの愛機へと乗り込んだ。
シュヴァルツ・リッターは、昨日の隊長機とは比較にならない。イライザの駆る黒騎士は、そのプラズマ大剣の一振りで、俺の放った高圧温泉水をたやすく蒸発させてみせた。
『見つけたぞ、鉄くずが!』
イライザの憎悪に満ちた声が響き、シュヴァルツ・リッターが猛然と突進してくる。回避が間に合わない!
その時だった。
――キィィィィン!!
閃光と共に現れた白銀の機体が、その一撃を弾き返した。
流線形の騎士。その機体構造の中心、下腹部から突き出た、鋭利な円錐形のランス。
「誠っ!」
『待たせたな、勇斗。騎士の道は、弱き者を守るためにある。お前の背中は、僕が守る!』
研究所の第二格納庫から、誠が駆るGガイザー2号機、『Gランサー』が発進したのだ。
https://kakuyomu.jp/users/natto-maki/news/16818792435774400777
次の瞬間、Gランサーは信じがたい挙動を見せた。
『Gランサー、最大戦速!
誠の叫びに応え、機体後部のノズルから、灼熱の温泉水が轟音と共に単発で噴射される。その凄まじい反動で、白銀の機体は、まるで彗星のように空を駆けた。シュヴァルツ・リッターに肉薄すると、その下腹部から伸びるランスの切っ先が、黒騎士の装甲を鋭く削る。
『小賢しい!』
イライザが放つカウンターのプラズマ大剣を、ランスの根元に備えられた二つの球体状シールドが、最小限の動きで、しかし的確に受け流していく。キィン、キン!と甲高い金属音を響かせ、全ての攻撃をいなしていく様は、まるで熟練の剣士のようだ。
後方からの噴射による一切の無駄を排した直線的な加速と、重心に最も近い位置に武装と盾を集中させることで可能となる、完全な攻防一体の突撃。それがGランサーの戦い方だった。
俺は、その美しくも合理的な戦い方に息をのんだ。
「す、すげえ……!」
俺はすぐさま体勢を立て直し、誠が作り出した隙を突いて、シュヴァルツ・リッターの関節部を狙いアクアキャノンを放つ。Gランサーが前衛で猛攻を受け止め、俺が後方から援護する。完璧な連携だった。
だが、イライザは冷静だった。Gガイザーが距離を取ったのを見て、彼女はニヤリと笑う。
『来るぞ、あの忌まわしい攻撃が!』
俺は、決め手となる必殺技を放つべく、加圧グリップを握りしめた。
「くそっ、こいつで動きを止める!
白濁したダイラタンシー流体が、再びシュヴァルツ・リッターの頭部へと殺到する。だが!
『同じ手が二度も通用すると思うな、野蛮人が!』
シュヴァルツ・リッターは既に備えていた。黒い装甲を眼前に展開し、待ち構えている。その表面が弾け飛んだ。
「なっ……必殺技が、効かない!?」
着弾の衝撃をいなされた! 硬化した液体は拡散し、その衝撃を相手へ完全に伝えられなかった。
俺の驚愕を切り裂くように、イライザの勝ち誇った声が響く。
『その攻撃は、既に対策済みだ!』
イライザの駆る黒騎士は、リミッターを解除し、二機を同時に圧倒し始めた。
『妹のため……祖国の未来のため……私は、退くわけにはいかないのです!』
渾身の一撃がGランサーの肩を捉え、俺も動きを封じられる。
その時、父さんの決断が響いた。
『プランDGを発動する! GガイザーとGランサーは、合体シークエンスに移行せよ!』
俺と誠は、互いの機体で視線を交わした。強く頷き合った事が伝わってくる。
緊張で、唾を飲み込んだ。
切り札を、こんなに早く使うだなんて。
「誠! 俺の全エネルギー、お前に注ぎ込むぜ!」
「ああ、勇斗! 君の熱いパルス、確かに感じている! 僕のリア・インテークは、君の全てを受け入れる!」
誠の冷静さが、俺の昂りを鎮めてくれる。俺の熱が、誠の迷いを焼き払う。精神が溶け合い、一つの感覚になっていく。
Gガイザーのアクアキャノンが伸長し、Gランサーの臀部にある供給口『リア・インテーク』へと向かう。
前後に繋がった二機。Gガイザーの両手は、Gランサーを支えるよう、その腰に添えられた。
管制室で、さつき姉ちゃんが冷静に、しかし確信を込めて指示を出す。
『両機、最終接続フェーズ! エネルギー流路、開きます! シンクロ率、99.8……99.9……100! 接続完了! 新形態、ダブルGガイザー、起動!』
戦場に、二人の友情の証である究極の攻撃形態が誕生した。
二機分のエネルギーが、湯気となって立ち上る。
「誠! 僕たちの思いを、この一撃に!」
「ああ! 俺たちの故郷の、魂の熱さを、思い知らせてやる!」
ダブルGガイザーの下腹部、すなわちGランサーのランスに、凄まじいエネルギーが収束していく。
行き場を求めたエネルギーがあちこちから溢れ出しそうになる。Gガイザーのボディが前後に揺さぶられるのを、必死になって堪えた。
――折れんなよ、中で折れんなよ!
そして、俺と誠の魂が、一つになって叫んだ。
「「いけえええええええっ!! ペネトレイト・ニトロ・ストライクッ!!」」
超高圧水流によってランスが打ち出される。超音速にまで加速されたランスは、一条の光となってシュヴァルツ・リッターを貫いた。
『妹よ……すまない……』
敵の悲痛な声と共に、黒騎士は光の中に消えた。
エピローグ:仮面の裏、孤独な戦い
静寂が戻った戦場で、合体を解いたGガイザーとGランサーが、蒸気を噴き上げながら並び立つ。
『やったな、誠』
コクピットの中で、俺は汗まみれの額を操縦桿に押し付けた。
『ああ……だが、勇斗。最初の演説の司令官……。彼女の目は、まるで僕たちを憎んでいるようだった。一体、僕たちが何をしたっていうんだ……』
誠の言葉に、俺はうまく答えられなかった。
――その夜、管制室のメインスクリーンには、捕虜とすることに成功した敵パイロットからの聞き取りや、撃破したシュヴァルツ・リッターから回収されたデータが表示されていた。『電子枯渇病』という病名、それに苦しむ子供たちの写真が映写機から投影されている。
「彼らは、生存をかけているのか……」
狭間・優利が、誰にともなく呟いた。その横顔は、暗い影に沈んでいる。
管制室の喧騒が、まるで遠い世界の音のように聞こえていた。
彼の脳裏には、昼間に見たホログラムの映像が焼き付いて離れなかった。
あの、愛した女性の面影を宿す、氷のように美しい娘の顔。
自分の息子たちが、命がけで撃退した軍隊を率いていた、実の娘。
(アンシア……。お前は、この病に苦しむ民を救うために戦っているのか。その純粋な正義感は、まさしく、お前の母親譲りだ……)
優利は固く目を閉じ、司令官の椅子に深く身を沈めた。
その仮面のような冷静さの下で、科学者としての冷徹な思考と、父親としての絶望が渦巻いていた。
(リリィ・エンパイアの破滅は、近い……)
蔓延する病、『電子枯渇病』。それは、彼らの社会構造そのものが生み出した、根源的な歪みだ。
追い詰められているのだ。拙速に過ぎる侵攻に、焦りすらうかがえる。
そして、湯本地底深くに存在するかの場所――オリジン・スパにはおそらく、それを覆すほどの可能性は眠っていない。
日ノ本が結成した研究チームに、一時加わっていたからこその所見だった。
(だが、裏切り者である私の声が、今さら届くはずもない。既にデータの一部を流出させてはいるが……手応えはない。女王は何を考えている? 民を偽りの希望で欺いてまで、この地に固執する真の目的は……)
結局のところ、優利の願いは一つ。
(どうすれば、この戦いが止められるのだ……)
どちらかが勝てば、どちらかが傷つく。
自分の過去の罪が、二人の子供を残酷な運命の天秤に乗せていた。
(私は、どちらの未来も選べない。どちらの幸福も祈れない。ただ、この地獄の中心で、全てを見届けることしかできんのか……)
その引き裂かれるような苦悩を、誰一人として知る者はいない。
湯本の空には、まだ戦いの匂いが残っている。
そして、その空の向こうに蠢く、リリィ・エンパイアの次なる一手を見据えんとする。
物語は、まだ始まったばかりだ。
※
次回予告(嘘)
激闘の果てに訪れた、束の間の平和。
だが、湯本の街に、美しき災厄の影が忍び寄る。
軍服を脱ぎ捨て、一人の少女として敵地へ潜入するリリィ・エンパイア総司令官、アンシア。
その目的は、父の、そして自らの過去を探るためか。それとも、あの忌々しい機体『Gガイザー』の秘密を暴くためか。
夕暮れの橋の上。
そこで彼女が出会ったのは、一人の少年だった。
屈託なく笑う、宿敵Gガイザーのパイロット――狭間・勇斗。
お互いに何も知らぬまま交錯する視線。生まれるはずのなかった感情。
憎しみだけで凍てついていたはずの心が、少年の真っ直ぐな瞳とむき出しの膝小僧に、静かに溶かされていく。
そして、アンシアは目の前の少年に、禁断の言葉を紡ぐ。
この胸の高鳴りが示す言葉を知らぬままに。
「私の弟にならないか?」
残酷な運命の歯車が、今、静かに回り始める。
次回、蒸気爆発! Gガイザー!!
第三話:邂逅! 橋の上のストレンジャー
君も、熱く、ほとばしれ!
――この世界に、金田正太郎はいないのだ。
(あとがき)
いっぺん描いてみたかったんですよね。スチームパンクな世界観ってヤツを。
物語はひとまずここで一段落とさせていただきます。
とりあえず、思いついたネタ全部ぶち込みました。
しかし、AI生成の挿絵では、登場ロボットのカッコ良さを1割も伝えきれないのが悔しいです。
そのうち、絵師さんに依頼してみようと思います。――宝くじでも当てたら。まあ、期待しておいてくださいよ。
蒸気爆発! Gガイザー!! 〜温泉×スチームパンク×ロボット〜 納豆巻 @natto-maki
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