滅ぼし、救う魔女

 世界は眩しいほどにキラキラと輝いていた。その中心には一人の少女が花畑の中心で死んでいるかのように眠っていた。

 きっとこの光景を見たものはきっと口を揃えて口にするだろう。”神の祝福”だと。

 そしてこれは誰も知らない。それは僕たちにとってはただの呪いに過ぎないのだと。

 この世界にきっと僕たちを救ってくれるものは存在しない。神に逆らって姫様を救う勇者なんてものは夢のまた夢なのだろう。世界を救うのが勇者であるならそれはきっとスピカ様ということになるだろう。世界を救うには犠牲は付き物だ。だが、彼女はその犠牲すらも救おうとしている。救えなかった者まで自分で抱え込んで生存者の憎悪をその小さな体で受け止めている。僕はそのことを思うと心が苦しい。思わずここに生き残った人を皆殺しにしたくなってしまうほどには。

 首を振ってそんな考えを捨てると前を向いてスピカの元に歩いていく。

 だが、そんなことをしたらきっと笑ってスピカ様の隣に立つことが出来なくなってしまう。それにこれは彼女が命をかけて救った命だ。僕が殺すなんて権利はない。命を救ったものだけがその命を好きにする権利を持つ。スピカ様が助けると決めたのなら僕が今どうこう言う資格はない。

 スピカはいつも大丈夫、大丈夫と言う。しかし僕は知っている大丈夫なんかじゃにことを。僕は知っている起きている間は平気な振りをしているけれど寝ている時はうなされて泣いていることを。きっとスピカ様自身も大丈夫だと思っているのだろう、しかし彼女は自分自身の心に疎い。心が限界なのを自覚していないのだろう。それでも自己犠牲を止めようとしない。そういう人なのだ。本来は物語にいるような勇者が担うべきものなのだ。

 この世界にも勇者という存在は存在はしている聞く。しかし、これまで待っても現れないというのならば全てを犠牲にしても、この世界が滅ぼうと僕はスピカ様だけの勇者になろう。これが僕にできる最大の世界への復讐だ。

 歩いていると広場の周りからは狂ったように狂喜乱舞している住人たちが声をかけてきていた。


 「ありがとう、勇者様!」

 「悪い魔女を倒してくれてありがとう」

 「ふ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

3日ごと 22:00 予定は変更される可能性があります

私は、君は世界を滅ぼす死ねない月狂いの魔女 冴切リタ @Rlitaa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ