ご主人のおてつだい!

星乃想來

🔪

「みなさんこんにちは! 僕の名前は――『包丁』!」


「ご主人が料理する時に、僕はいつも大活躍!

……だけど、実はそれだけじゃないんだ。」


「実は、ご主人は『猟師』なんだ!」

「だからたまにご主人が狩ってきた猪とかを捌く時だってあるんだ!」

「そんなご主人だから切れ味にはうるさくてねぇ...wいつもツンツンの状態なんだよねー」


台所の光で包丁の刃の部分がキラッと光り、天井に一つの光の筋ができていた。


「そんなご主人は、今は絶賛狩りに行ってるんだ。今日はどんな獲物が来るのかな?刃物として腕がなるぜ!どんな獲物も捌いてやるぞい!」


包丁がウキウキしていた時、不意に――ドンッ。


「お!銃声!?今日も一発で仕留めたのかな?」

「……でも、ちょっと近すぎない?たまたま近い場所だったのかな?」


そんなことを思いながら静寂の中ご主人を待つ。

しばらくして何かを引きずるような音が近づいてきた。


「...お?ご主人来たかな?」


そんなことを思うと、キィィ...と木でできた玄関扉が開く音が聞こえた。

外の冷たい空気が部屋の中を走る。


そしてご主人と仕留めたであろうものが入ってきた。

布が床を擦る音が響く。


「お!ご主人!今回もうまくいったみたいですね!」

「......大きさ的に...ご主人1人分ぐらいの大きさかな...?...にしても解体しないで持ってきたってことは本当に近かったんだなぁ...」

「ま!それはさておき!解体のお時間ですか??僕の出番?」


ウキウキしながら待っていたが、ご主人の歩みは止まらず仕留めたものと一緒に奥に進んで行った。


「...っとぉ?ご主人?」


あまりにもイレギュラーなご主人の行動に驚く包丁。


「んもぉー。やる気満々だったのにぃ...」


不貞腐れながら待つこと、数分後。奥からご主人が戻ってきた。

そのご主人は裾を捲ったり、腕捲りをしていた。

捲ったところから獲物を担いで鍛えられた筋肉が見え隠れしていた。

少し顔が興奮しているようにも見えた。


「...?!やる気満々じゃないっすか!いいっすねぇ!」


興奮したご主人が荒めに包丁を手に取り奥に進んで行った。


「っしゃ!!やったんで!」


包丁もやる気十分のようだ。


ご主人と一緒に部屋の奥に進んで行った。

包丁は基本的に台所にいるため、家の奥には行ったことはなかった。


「へぇ...部屋の奥ってこんな感じになってるんだぁ...新鮮」


そんなことを思いながら一緒に移動すると、とある部屋に入っていった。

それは部屋の中が異様に明るく、天井・壁・床の材質が変わっていた部屋だった。

その部屋の中には深めの入れ物があり、ご主人が仕留めてきたであろうものがいた。


「...こ...ここはどこなんだ?少し湿っている?というか濡れてるな...」

「そして、仕留めてきた獲物...?見たことないなぁ...?なんの生き物なんだろう...?見た感じ哺乳類っぽいけど...?珍しい生き物なのかな?すごい!」


ご主人は迷いなく、腹部の柔らかそうな部分に刃を当てた。

ずぶり。やわらかい音とともに包丁が沈む。


「っお!いつもはなかなか入らないんだけど、今日はすんなり入った!今日は調子いいぞ!」


刺したところから赤いものが流れ出る。

ご主人が丁寧に研いだ刃が腹部の上で踊る。踊るたびに赤いものが流れ出て入れ物の中で溜まっていったが中に穴がありそこから赤いものが流れていった。

それと当時に体の中にある臓器の解体が始まった。


「うわ、歯並びのきれいな骨だなぁ...っと...これは...肝臓...?こっちは...胃?...おっかしいなぁ...見たことないようなものばかりだな...」


そして入れ物の中のものが少しずつ部分ごとに分けられていって小さくなっていった。

とその時、ご主人が包丁を置いた。


「お?解体が一通り完了したのかな?...ふぅ....今日もいい切れ味!初めてのものだったけどうまくいってよかった...!」


そしてご主人は壁にかけてあったものを手に取り、レバーを上げた。

ご主人が持っているものから出てきたもの。水。

入れ物の中にあるモノの赤いものを流していき、綺麗な肉があらわになった。


「ぉおお!水!こんなことができるのかこの部屋!それなら毎回ここで解体すればいいのに...何で今回だけなんだろう?珍しい生き物だったからかな?」


肉が綺麗になった時、ご主人が部屋の外にあったビニール袋を手に取り、箱の中にある肉を袋の中に入れていった。どこかご主人が急いでいるように見えた。

袋の中に入れ終わると包丁を肉が入った袋を持って移動した。

向かった先は台所だった。

荒めに包丁を置くと、その流れで玄関に袋を持ったままご主人が出ていった。


「...ふぅ...今日もよく切った切った...!超調子良かったし楽しかった!ものすごくご主人急いでいたみたいだけど...どこにいくのかな?」




「そして...あの生き物...なんだっだろうなぁ...?」

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ご主人のおてつだい! 星乃想來 @SolaHoshino

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