第36話:自作発表会、自分らしさ全開リップ

「よーし、今日は最高の作品を見せるぞ!」


鏡の前で、ひなたは小さくつぶやいた。

中学二年生の土曜日。

今日は、地域のこども絵画展で、

自分の作品を発表する日だ。


ひなたは、絵を描くのが大好き。

この日のために、時間をかけて

一生懸命、絵を描いてきた。

みんなに感動を与えたい!

「自分らしさ全開の私」で、

自信を持って発表したいな、と思っていた。


そんなひなたの秘密のアイテムは、

自分のテーマカラーである、

鮮やかなエメラルドグリーンの色付きリップ。

塗ると、なんだかクリエイティブな力が

湧いてくる気がするのだ。

「これがあれば、きっと大丈夫。」

ひなたは、リップがくれる

「おまじない」のような力で、

やる気を高めていた。


リップを唇に塗ると、

鮮やかな色が広がり、

なんだかクリエイティブな力が湧いてくる。

これで発表もバッチリだ。

そう確信して、ひなたは家を出た。

会場へ向かうバスの中で、

最後の確認をした。


会場に着くと、自分の作品を展示した。

他の子たちの絵も並んでいて、

ドキドキしながらも、

自分の作品の前に立っていた。

その時だった。


ブツンッ!


突然、会場の電気が消えてしまったのだ。

「きゃー!」

周りの子たちが、驚きの声を上げる。

まさかこんなハプニングが起きるなんて!

心臓がバクバクする。

こんな時、リップのおまじないなんて、

ちっとも役に立たない気がした。


会場は真っ暗になり、ざわめきが広がる。

でも、ひなたはすぐに気持ちを切り替えた。

「大丈夫!懐中電灯、持ってるよ!」

ひなたは、いつも持ち歩いている

小さな懐中電灯を取り出した。

リップは塗ったままだったけれど、

こんな状況で、

がっかりしている暇はない。


リップがくれた「自分らしさ」と「創造力」が、

ピンチを乗り越える力になった。

懐中電灯で自分の作品を照らし、

作品への思いを語り始めた。

すると、他の子たちも、

ひなたの周りに集まってきて、

一緒に作品を見てくれた。


トラブルを乗り越え、

無事に発表会を成功させる。

リップは技術的なトラブルを解決できなかった。

でも、リップがくれた「自分らしさ」と「創造力」が、

ピンチを乗り越える力になった。

読後感は、自己表現の達成感と、

トラブルを乗り越えた喜び。


家に帰って、お母さんに

発表会の話と、

電気が消えたハプニングの話をした。

お母さんは、うんうんと頷いてくれた。


「ひなた、発表会お疲れ様。

口元、なんだか輝いてるけど、

リップのおかげかしら?

ううん、きっとひなたの才能ね。」


お母さんの呟きが、

ひなたの心にじんわりと温かく響いた。

リップの秘密はまだ内緒だけど、

きっとお母さんも、私の今日の頑張りを

応援してくれているんだ。

そう思ったら、なんだか心がポカポカした。

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今日の私と、秘密のリップ 五平 @FiveFlat

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