エピローグ

1

「ん……」

 目を薄く開き、きょろきょろと辺りを伺うみむろ。自分のいる場所が鼎のキューブの座席の上だと分かると安心して再び目を閉じる。

「おい!帰るまでが仕事だぞ」

 小学生の遠足のような事を言いだす鼎。

「……疲れた」

「ああ、頑張ったな」

 慣れない事をして疲弊してしまったみむろを労う鼎。熟睡しすぎてみむろの口からよだれがたれていたのは秘密だ。

「終わったの…?」

「事件はな……一成は相続とか、会社の事とか問題山積みたけどな。樹莱の今後の事もあるし」

「あ、呼び捨てだ」

「本当だ。半日しか一緒にいなかったのにな」

「今日は許してあげる。特別」 

 もう少し早く出会っていたら友達になれただろう女の子。出会った時にはもう救えなかった女の子。

 償える罪なら償って欲しい。とても重い罪だけれども。

「取り敢えず帰ったら」

「帰ったら?」

「メシと風呂」

「発想がおっさん……」

「何か言ったか?」

「ううん。でもご飯は賛成。奢りで」

「何でだよ、バイト代入っただろ自分で払えよ」

「知ってる。一成からの報酬は私のバイト代より多い」

「呼び捨てだ。何時まで彼女面するんだ」

「誤魔化すな。ピンハネ事務所」

 賑やかな車が山道を走り抜けた。駆け抜けた風は少し秋の香りがした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

橋部屋敷の殺人 じゅん うこん @junOS

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ