信勝

石動 守

信勝

春をゆく 躑躅ヶ崎の 松ヶ枝に 祖父の面影 在りし日思ふ


人もなく 堀も消え行き 石垣も たたずむ館 月影に建つ


疾き風 砂塵も散らし 吹き抜ける  振り向く今は 病葉わくらば揺らす


静かなる 歩み進める 道行みちゆきに 姿昔の 木々のささや


焔立つ かたき滅ぼす つわものの とき上ぐ声も かたきのものと 


四方よもの山 甲斐の守りと 頼みしが 光も影も 夢と去り行く


崩れ落つ 新府の城に 露と消ゆ 人の心も 忠義の声も


仰ぎ見る 天目山の 闇空やみそらに 十六夜いざよう月の 行方知らずも


あだに見よ 誰もあらしの 桜花 さき散るほどは 春の夜の夢


澄空すみそらへ 微風そよかぜ舞いし 花弁はなびらに 残す香も 春の言の葉

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信勝 石動 守 @mamoru_isurugi

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