ちぃちゃんの内緒話

淡野こはく

第1話 ちぃちゃんの内緒話

ちぃちゃんは、まだ小さな女の子。


ちぃちゃんはいま、内緒話に夢中。


ちぃちゃんは、お母さんの耳元で内緒話をするのが大好き。


今日もちぃちゃんが、

「あのね、あのね、お母さん」と、お母さんにこっそり話しかける。


「なあに?」と、お母さんは膝を折って、ちぃちゃんの口元に耳を寄せる。


「あのね。あのね。」

「なあに?」

「お母さん、大好き」


「あら、嬉しい。お母さんもちぃちゃんが大好きよ」

そう言って、お母さんはちぃちゃんを優しくぎゅうっと抱きしめる。


ちぃちゃんは、この「内緒話からのぎゅう」が大好き。


ぎゅうってしてもらいたいときは、いつも内緒話をしてあげる。


ある日、ちぃちゃんはクレヨンでお絵描きをしていた。


でも、ちぃちゃんの描く世界は画用紙じゃ足りなかった。


だからちぃちゃんは、フローリングにクレヨンで、世界を広げた。


お母さんはびっくりして、

「ちぃちゃん、ダメ!」と叱った。


ちぃちゃんもびっくりした。


お母さんが怒るなんて、ひどいと思った。


だからつい、

「お母さんなんかキライ! もう内緒話してあげない!」って言ってしまった。


お母さんは少し困った顔で、

「またしたくなったら、お話してね」って言った。


それから少し優しく、

「でもね、これから床に描いたら、ちぃちゃんがお掃除するのよ。

お掃除は大変だから、もうしないでね」と話した。


ちぃちゃんはお返事できなかった。


その日の夕方。ちぃちゃんはお母さんとお買い物に行った。


お母さんは、お肉を見比べて悩んでいる。


ちぃちゃんは、

「お母さん、あのね、あのね」と、もじもじ。


「なあに?」と、お母さんはまた膝を折って、ちぃちゃんの口元に耳を寄せる。


「あのね、大きくなったら、お母さんにお肉、ふたつ買ってあげるね」


お母さんはびっくりしたけど、

「ありがとう」と言って、ちぃちゃんを優しくぎゅうっと抱きしめた。


ちぃちゃんは「ぎゅう」をしてもらって嬉しかった。


さっき「内緒話してあげない」って言ったことは、

もう、ちぃちゃんの中で内緒にしようって思った。


おしまい


※この作品は「ちぃちゃんの小さな世界」にまとめられました。

その他の作品も、そちらの方でお楽しみください。

https://kakuyomu.jp/works/16818622177127042584/episodes/16818622177127131400

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ちぃちゃんの内緒話 淡野こはく @awanokohaku

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