夜の檻【完】

夜凪（よなぎ）、23歳。
大学を中退し、現在はアパートで一人暮らし。
職も家族も遠ざかり、
唯一の支えは恋人・綾斗だけだった。

ある朝、腕に自分で噛んだような痕を見つける。
そこから始まったのは、
「わたしがわたしでいられない時間」
の連続だった。
夢遊病のように記憶が途切れ、
目覚めれば部屋の空気も、自分の声も、
昨日とは違っている。


診断は――解離性同一性障害。
彼女の中には、
別の“わたし”たちが存在していた。

•外の世界に笑顔で接する人格「朝陽」
•記憶と感情を管理する理知的な「久遠」
•暴力性と痛みを抱えた「晄」

それぞれが、彼女自身を守るために
現れたはずだった。
でも、それは“守る”ことと“壊す”ことの
境界を曖昧にしていく。

綾斗が遺体で発見された日。
夜凪は、最…続きを読む