ちぃちゃんの宝物

淡野こはく

第1話

ちぃちゃんは、まだ小さな女の子。


今、ちぃちゃんの宝物は、箱ティッシュを開けたときに切り取る、丸みのある長方形の紙――フラップと呼ばれるそれ。


お母さんにもらった順番も、ちゃんと覚えているみたい。


ちぃちゃんは、その紙たちに名前をつけている。


「あのね、この子はみみちゃん。この子もみみちゃん。そして、この子も……やっぱりみみちゃん。」


まだ「みみちゃん」以外の名前は出てこないようだ。

10枚もあるのに、みんな「みみちゃん。」


お母さんは、ちぃちゃんのために、毎回違うデザインの箱ティッシュを選んで買うようになった。


ちぃちゃんは、新しいみみちゃんに会いたくてたまらない。


「ティッシュがなくなったら、次のみみちゃんに会える!」


そう思ったちぃちゃんは、箱からティッシュを1枚、また1枚と引き抜いていく。


ぴよっこ、とティッシュが顔を出す。


「こんにちは。」

ちぃちゃんは、新しいティッシュにご挨拶。


また1枚、また1枚。

「こんにちは。」

「こんにちは。」


とうとう、ティッシュは空っぽに。


お母さんがやってきて、「あらあらあら」と言いながら、ちぃちゃんに「ダメでしょ」と軽く叱った。


ちぃちゃんは悲しくなった。


涙がぽろぽろ、お鼻もぐずぐず。


そのまま床に落ちていたティッシュの上に、わーんと倒れ込んだ。


ちぃちゃんは、ティッシュまみれになって泣いている。


お母さんは、ちいちゃんのお鼻を優しくふき取り、


新しいティッシュ箱からフラップを丁寧に切り取ると、

ちぃちゃんに「はい」と手渡した。


ちぃちゃんは涙をぴたっと止めて、笑顔になる。


「みみちゃん、こんにちは!」


ちぃちゃんは、新しい宝物にそっとご挨拶した。


みみちゃんは、ちぃちゃんの大切な新しい宝物になりました。


ちぃちゃんのそばには、今日もみみちゃんがいます。


おしまい


※この作品は「ちぃちゃんの小さな世界」にまとめられました。

その他の作品も、そちらの方でお楽しみください。

https://kakuyomu.jp/works/16818622177127042584/episodes/16818622177127131400

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ちぃちゃんの宝物 淡野こはく @awanokohaku

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