冷艶で清冽な過去と、風化しゆく現実を噛みしめろ。

物語は、主人公たちの朝から始まる。
ゆっくり歩かないといけない主人公、食べるのが遅い女性。
まともな会話にならない言葉のやり取り。
その乾いた雰囲気が、二話目の瑞々しさをより際立たせる。

難しい言葉や言い回しは使われていない。
ある意味朴訥とした文章が、硬い質感を伴って綴られていく。
その中で唯一柔らかな感触を読み手に与えるのは、アイネの存在と「愛してください。」。
兄弟とアイネの青春は、読み手の心のどこかに、ふわりと入り込んでいく。
そうして油断しているうちに――

全てを咀嚼し飲み込む覚悟を決めた読み手には、満ち足りた読後感が待っている。

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