『生きる』ということ
- ★★★ Excellent!!!
このお話の中では、蝉の生と入院中のお母さんの生、そして戦争を知る世代のひいおばあちゃんの生、もちろん主人公の有輝くんの生も描かれている。
様々な生がお話の中で息をし、触れ合い、交差していく。
各登場人物の具体的な心理の描写は、それほど多くない。
主人公の有輝くんの心持ちですら、時々しか語られない。
しかし、その素っ気なさがたまらない。
作者は主人公の気持ちやお母さん、時にはひいおばあちゃんの気持ちになって書き進めていたのではないか。
本当はもっと心の動きを書きたかったのではないか。
それをあえて最小限の状況描写などに収め、ストーリーを紡いでいったと、私は想像した。
つまり、素晴らしい手腕で書かれた素敵な物語ということだ。
ぜひ手に取り、読んでいただきたい。