これ本当に面白いです……! ぜひ、お勧めします。
主人公はタワマンに暮らす、81歳のおじいちゃんです。
彼には双子の兄弟がいるのですが、今日は彼の命日のようです。
部屋のリビングでは、食事が遅い、81歳のおばあちゃんが朝ごはんを食べてます。
『喪主』は、彼女が務めるのだとか。
おじいちゃんは、『思い出レコード』という媒体を使って、
兄弟との思い出、そして……リビングにいる女性との思い出を、なんとなく振り返ってみます……。
『音』と『楽』というふた文字を与えあった兄弟に、一人の女性が紡ぐ、
優しく、温かく、そして、苦い人生。
人生とは、ビートのようなものなのかも知れませぬ。
強くお勧めいたします。
ご一読を!!
物語は、主人公たちの朝から始まる。
ゆっくり歩かないといけない主人公、食べるのが遅い女性。
まともな会話にならない言葉のやり取り。
その乾いた雰囲気が、二話目の瑞々しさをより際立たせる。
難しい言葉や言い回しは使われていない。
ある意味朴訥とした文章が、硬い質感を伴って綴られていく。
その中で唯一柔らかな感触を読み手に与えるのは、アイネの存在と「愛してください。」。
兄弟とアイネの青春は、読み手の心のどこかに、ふわりと入り込んでいく。
そうして油断しているうちに――
全てを咀嚼し飲み込む覚悟を決めた読み手には、満ち足りた読後感が待っている。