その峠は、現世と異界の境にある

定年目前の銀行員に与えられた、最後の任務。
それは、兵庫・六甲山中にある謎の支店——《狼妖峠出張所》の『閉鎖』。

そこは地図にも載らず、支店の誰も詳しく語りたがらない。
「百年を越える契約」「お化けが出る」「呼んではならぬ名」
まるで都市伝説を地で行くようなその支店に、男はただ一人、送り込まれる。

薄暗い山道を抜けた先、灯る提灯の列。
梔子の香とともに現れたのは、漆黒の平屋と銀行のロゴが掲げられた看板。
そして、パーティションに浮かぶ『人の目玉』——それは、ほんの序章にすぎなかった。

この峠には、確かに『何か』がいる。
それは幽霊か、因習か、それとも……この国が長い時をかけて埋めた『闇』なのか。

異界は、案外近くにある。
日常のすぐ裏側、名もなき出張所のその扉の先に。

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