こちら六甲山中狼妖峠前出張所! 

笠原氏が藤崎氏へ語る体験談。
それが本作の体裁です。

定年間近の彼へ所属するメガバンクが命じたのは、出張所の閉鎖業務。
〝狼妖峠出張所〟
そう呼ばれる任地は、兵庫県の六甲山の山中にありました。

同氏がこの場所で経験した世にも稀なる事柄とは。 
そして語られる、この銀行の出張所の長い因果と因縁と奇縁の物語とは。

まずは作品冒頭。
詩情溢れる景色のなかに建つ、赤と黒の色彩のコントラスをまとう木造平屋である狼妖峠出張所。
そこへ、いたる道程には梔子の香が漂います。

小野塚さんの描かれる世界には、いつも彩りと、植物の香りが備わっています。

この深い情趣のなかで現し世と幽世の端境、あわいの際にて、物語は展開するのです。

怪事を語りながらも、どこか優しい滑稽味を覚える。
本作は、そんな物怪録です。

忙しない日常を離れ、心の散策を存分に楽しめる一作。
どうぞ、ご覧くださいますように。

お帰りになれるかは、保証しかねますけれども。



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