このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(355文字)
機械と人間が争う、戦乱の時代。その中で出会った、機械から棄てられた"ツバメ"と、人間から棄てられた"プリンス"。彼らが求めたもの、そして共に見たものとは……。人工知能のなかに芽生え、そしてたしかに通じ合ったものを、ぜひともお確かめください。
与えられた命令を遂行することがAIの本能なのだろう。そして、その本能に従って最適解を求める行動が、時には親切や友愛に見えることもある。翻ってそれを人間に当てはめると、「愛とは本能を満たす為の選択的行動が、他者からはたまたまそう見えるに過ぎない」と言えるのかも知れない。この短い物語は、そのような事を書いてはいない。しかし、そのような示唆に富んだ素晴らしい物語である。読む者それぞれに、様々な示唆を与えてくれるこの物語は、まさに寓話と言えるだろう。ご一読をオススメいたします。
「幸福な王子」のSF版……と思いきや、最後には「なるほど」と感嘆しつつ、そして切ない終わり。丁寧な描写に精緻なSF設定、「王子」と「ツバメ」の機械なはずなのに伝わってくる想い。一級のSF短編でした。
遠い未来で人類が見捨てた街でロボットだけが動いているという絵は時々見かけますが、そこで動いているのがあの「幸福の王子」と「ツバメ」だったとしたら?ツバメはどこに何を届けるのでしょう?幸福の王子は誰に幸福を届けるのでしょう?