人のいない街で、二台の機械が見つけた優しさの物語
- ★★★ Excellent!!!
冒頭の「君、泣いているみたいだね」という言葉に、思わず心を奪われた。
ロボットに涙があるわけではないのに、
この一言で二台の機械の間に流れる温かさを感じた。
タイトルから、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」を思い起こす。
けれど、ここには貧しい人々も、宝石で飾られた王子の像もない。
人間が消えた世界で、
機械だけが残された静寂の中に、
別の種類の愛が芽生えていた。
機械同士の出会いが、
こんなにも美しく描かれるなんて思わなかった。
特に心を打ったのは、二人が町の機能を止めていく場面だ。
もう帰ってこない人たちのために動き続ける機械たちを、
そっと休ませてあげる姿が切なくて美しい。
何かを与えるのではなく、休ませてあげる優しさに触れて、
私も誰かを大切にしたいという気持ちが込み上げてきた。