人のいない街で、二台の機械が見つけた優しさの物語

冒頭の「君、泣いているみたいだね」という言葉に、思わず心を奪われた。

ロボットに涙があるわけではないのに、
この一言で二台の機械の間に流れる温かさを感じた。

タイトルから、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」を思い起こす。
けれど、ここには貧しい人々も、宝石で飾られた王子の像もない。

人間が消えた世界で、
機械だけが残された静寂の中に、
別の種類の愛が芽生えていた。

機械同士の出会いが、
こんなにも美しく描かれるなんて思わなかった。

特に心を打ったのは、二人が町の機能を止めていく場面だ。

もう帰ってこない人たちのために動き続ける機械たちを、
そっと休ませてあげる姿が切なくて美しい。

何かを与えるのではなく、休ませてあげる優しさに触れて、
私も誰かを大切にしたいという気持ちが込み上げてきた。

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