太陽の君に花束を

れむ

第1話 1人の少女

時は戦国時代。戦が頻繁に起きていた時代だ。

「お母さん!抱っこ、抱っこ!」

「はいはい」

幼い少女と母親は河川敷を歩いていた。いつものお散歩のルートなのだ。少女の名前は西園寺里。甘えん坊の女の子。里はお散歩の時がすごく幸せだった。ずっとこんな日々が続くと思っていた。

なのに。

家族が殺された。一瞬だった。戦だった。近くの城同士が喧嘩をし、戦をし出したのだ。里はまだ4歳だった。

「おかぁさん、おとぉさん。どこぉ?」

お気に入りのクマの人形を抱え、里は辺りを見渡すがどこも家が燃えていて母親と父親の姿が見当たらない。

ーなんでどこにもいないの?どうして燃えてるの?戦なんて…。

「里ちゃん!!危ないからこっちにおいで!」

近所のおじさんが迎えに来てくれた。

「でもお母さんとお父さんが!!」

ーお母さんとお父さんがまだ見つかっていないのだ。早く探さなければ!

そう思い、前に進もうとするがおじさんに止められる。

「危ないよ、里ちゃん!火が燃えてるだろ?」

おじさんが焦ったように里を止め、抱えた。

そして村の外に走り出した。

「お母さん!お父さん!」

里の悲痛な叫びが響いた。



2年後ー


里は6歳になっていた。戦で家族を失った彼女はある女の人に引き取られた。水無瀬華だ。里の母と雰囲気がとても似ている女性だ。彼女と接していくうちに心の傷も癒え始めた。半年もしたら華に懐いていた。

「里ー!ご飯だよー」

華が呼んでいる。庭で農作業をしていた里は手を止め返事をする。

「はーい!いまいくー!」

農具を片付け、里は嬉しそうに華の元へ駆け寄った。華の作る料理が大好きなのだ。

「よし、じゃあ食べようか。」

「うん!いただきまーす!」

ー今日はやけに豆腐が多いな。

「華さん、今日なんでこんなに豆腐が多いの?」

苦笑いしながら聞く。

「今日、近所の子が豆腐を作りすぎたからって分けてくれたの!」

「へ、へぇ〜」

2人の近所には豆腐作りが大好きな豆腐小僧がいた。よくその豆腐をもらうことがあるのだ。でも美味しいため何も言えないのだ。

他愛のない話をしながらご飯を食べる。里はこの時間も好きだ。

その日の夜。

「ねぇ、里。忍者に興味ない?」

華からそう言われた。里は驚いた。どうしてそんなことを急に…。

「忍者?興味ないよ。」

そんな物騒なものを…。

「なんで?」

「実は、近くに忍術を教えてもらえる学校があって。そこに通ってみない?」

「え!?」

ー忍者に!?私が!?

里はまさかと首を振る。

「無理だよ、忍者だなんて」

しかし華はえー、と悲しそうな顔だ。

「いけると思うんだけどなぁ」

ーなんで私がいけると思ったの!?無理でしょ!

「まぁ、前向きに考えてみてよ!じゃ!おやすみ!」

華は布団に潜ってしまった。

里はそんなぁとへにゃへにゃと横になった。

「そろそろ私も寝ようかなぁ」

ろうそくの火を消し、自分の布団に入った。

寝付くまでの間、里は人形を抱えながら華が言ったことが頭から離れなかった。

忍者…。里がいた村は敵対していたお城の忍者が些細な喧嘩をしたことで戦に巻き込まれたと聞いた。その話を聞いていた里は忍者なんかと思っていた。しかし華があぁ言ったのにはきっと病気のことが関係している。半年前から華は病気を患っていた。なかなか治らない病気だとお医者様に言われてしまった。もし、華が最悪の場合、死んでしまったら里はどうすればいいのだろう。きっとそのために華は言ってくれたのかもしれない。学校に行っていたら1人にはならないから…。そう思ったのかもしれない。でも忍者は…!!

里の中で二つの感情が争っていた。

感情が争っているうちに寝てしまった。


次の日。

「おはよう、里。よく眠れた?」

「うん。ねぇ、忍術学んでみようと思う」

「え?」

華はとてもびっくりしていた。無理もない。昨日結構渋っていたのだから。

「本当に行く?」

「うん。行く!」

里の決意は堅かった。里は強くなろうと決めた。そのためには、まず自分自身を守れるようにならなければいけないと考えたのだ。

「わかった。入学は8歳からなの。それまでに色々やらなきゃいけないからとりあえず、一緒に学校まで手続きしに行こうか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

太陽の君に花束を れむ @ranka0217

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ