この幻妖なる雰囲気。とても美しく、妖しく、強く心に響いてきます。
主人公の少年は、ある時に「異界」と思われるような空間に迷い込んでしまいます。
榊の木が並ぶ場所。神社のような空間。謎の老人が現れ、何かの「禁止事項」があるかのようなことを口走る。
その先で少年が目にしたもの。そして、少年が現在身を置いている場所。
彼はこれから、どんな運命を迎えることになるのか。
人の運命や人の生命。そして人が人であること。
そんなものすら「手のひらの上」で転がすような、コトワリを越えた存在。
軽い戯れのように、人の運命を簡単に壊して狂わせてしまえる絶対的なもの。
正体不明の「神」か何かのようなもの。そんな存在に翻弄される人間存在は哀れだけれど、それ以上に善悪を超越したような神的存在の感覚に美しさを感じてしまいます。
彼らにとって、人間なんて手のひらに乗る小さな虫のようなもの。それを生かすも殺すも自由。
圧倒的な力。それは自然とか世界とか、はたまた真理とか、人間の心や頭で把握しきれない、大きな広がりを垣間見させてくれる。
文学的な香りも高く、そしてゾクッとするような怪奇と幻想のカタルシスを味わえる、素晴らしい作品でした。