勇者と魔王 彼らは何故闘ったのか

テマキズシ

真実


「………なんで。」


どれだけ考えても答えは出てこない。何故勇者は魔王を殺したんだ?何故あんなに優しい魔王は皆から恨まれるようになったんだ?


確かにあの事件は恐ろしい事件だった。しかし私には彼があの事件の犯人だとは思えない。






ある日突然、この世界は滅びかけた。各国の首脳陣はパニックになり、世界全体が悲鳴を上げた。街道は使い物にならなくなり、世界からエネルギーが消えていった。


私はちょうど今いる場所からは反対の所に居た。街道に現れるモンスター達の退治。それこそがこの私の仕事だ。


モンスターは偶に世界の内部から現れるが、基本的には世界の外から現れる。世界の傷から現れるそいつらはとても強く仲間がよくやられる程だった。特に運送の仕事に就いているものは大量に死に続けた。どれだけ被害を減らそうとしても無理なほど恐ろしい相手。


しかし魔王はそんなモンスターとは比べることすら恐ろしい程の存在だった。魔王は私の…私達の仲間だった。多くのモンスターを共に倒した同志だった。


今でも思い出せる。私がモンスターの圧倒的な物量で押しつぶされそうになっていた時、魔王は私を助けてくれた。モンスターが市民達に襲いかかろうとしていた時、魔王が市民を守ってくれた。


私にとって共に戦ってくれた彼は、友を越えてもはや家族のようなものだった。



だからこそ信じられない!なんで!なんであいつが討伐されなければならない!悪口を言われないといけないんだ!


確かに清廉潔白な彼なら勇者と呼ばれても当然だ。魔王によって荒れていく世界に異世界から突如現れた勇者は、困っていた私達の声を聞いてすぐに魔王を討伐し、私達を助けてくれた。 


勇者は私が討伐パレードの際に馬から落としてしまっても許してくれた。その時分かった。彼は本当に優しい人なのだと。それが余計心に響いてしまう。善人のふりをした悪党なら恨みきれたのに。


「あの恐ろしい事件を魔王が起こせるわけ無いのに!!!なんで魔王が犯人だと言われてるんだよお!!!」


仕事に出ず引きこもり、ただただ私は喚き続けた。他人の迷惑なんて知ったことじゃなかった。なんで魔王が犯人なんて呼ばれているのか…。その理由が知りたかった。



トントン



「…え?」


突然、ドアからノックが聞こえてきた。おかしい。今日は誰も訪ねてくる予定なんてなかったのに。


誰だ…?


疑問に思い声をかけようとするが、それより先にドアが開かれる。一瞬泥棒かと思ったが、そこに現れた存在を見て、俺は泥棒が現れる以上の衝撃を味わった。




「ゆ………勇者?!!!」


まってまってまってまってまってまってまってなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!…………えっ?えええ?


「どうやら相当頭が混乱しているようだね。まあ無理もないか。……少し話しをいいかな?まあ君が何を言っても僕は会話を続けるけどね。」


一方的に話しを続ける勇者に頭がフリーズしてしまう。そして数秒後。勢いよく彼に殴りかかった!


「うるさいうるさい!!死ね!!!魔王の仇!!」


「悪いけど無駄だよ。」


「うぎゃあ!!!」


だが意味はなかった。私のパンチはスラリと躱され逆に一撃貰ってしまう。



ああ…頭が回んない。色んな疑問が頭を支配してる。私は勇者から貰った一撃でダウンした状態で嗚咽を吐き続けた。


「ごめんね。魔王と君が友達だったってこと、他の衛兵から聞いたよ。」


「うるさい!それなら分かるだろ!さっさと殺してくれ!そうじゃないと…私はお前を恨むことができないんだよお!!!!」


まるで子供の駄々こねだ。もう私は生まれてから1日も経っているというのに…。


勇者はこちらを慈悲深い目で見てくる。その目だよ…。その目が憎くて溜まらない。善人だと分かるその目が!!!許せないのに…許したいと思ってしまう………。


「君には話した方が良いんじゃないかと思ってきたんだ。聞いてくれないか。この世界のこと。そして魔王が何故あの事件を起こしたのかを。」


「………………え?」


勇者はなんて言ったんだ?教えてくれるのか?私の心に残り続けるこの疑問を。その答えを。


「教えてくれ!いや教えてください!!!お願いします!!私は知りたい。あの優しい魔王に何があったのかを!!!」




「そうか。じゃあまず最初に言っておくよ。魔王は何も悪意があってこの事件を起こしたわけじゃない。この事件の引き金は、魔王や君が所属しているモンスター討伐の仕事が原因なんだ。」





































ピッ、ピッ、ピッ


真っ白い部屋に無機質な機械の音が鳴り続ける。備え付けのベッドには一人の男の子が眠っており、直ぐ側に男の子の両親と思われる大人が二人座っていた。


座っているうち男の方は怒りと安堵に満ちた表情をしている。子どもの心配以外にも誰かに怒っているのだろう。


対してもう片方、女の方はただただ涙を流していた。その涙は嬉しさと後悔が詰まっていた。


「あなた。ようやくこの子落ち着いてくれたわ。…まさか給食を無理やり食べさせられるなんて。なんて酷いことを…。」


「抗議の電話を入れてきたよ。これは明らかな殺人未遂だ!!必ず訴えてみせる!」


「ええ。もし教頭先生がエピペンを刺してくれなかったから息子は死んでいたのに謝りにも来ないなんて!弁護士の夫婦を怒らせたこと、思い知らせてやりましょう!」



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