それでも明日は続くのだから、希望の灯を灯し続けよう!
- ★★★ Excellent!!!
舞台はウイルスに冒された終末世界。
生き残った人々は活動地域のみならず活動規模をも縮小させねばならない状態。
すでに失われたものも多い中、一人の少女・桃香はかつて行われていた子どもの日なるイベントの存在を知る。
彼女のため子どもの日を復活させる……はずが、アンデッド化した実父やアンデッドを利用する宗教なども巻き込んだ事態に発展する。
最終的には子ども祭りの開催に成功するも、子どもたちの笑顔の裏では涙なしには読めない一幕が演じられていたり。
ハードボイルドな非日常の(※作中の彼らにとっては日常だろうが)雰囲気の中、時折和やかな日常を切り取ったシーンが挟まれる本作は、希望とは何か、そして幸福とは何かを読者に問うているのではと感じさせられた。
希望。それは子どもたちひとりひとりのことを指すのかもしれないし、他の何かかもしれない。
しかし、終末世界であろうと人々が命を紡ぎ続ける限り、人として生きることを諦めない限り、希望は潰えはしないだろう。
希望。そのうちのひとつが季節のイベントごとなのではないだろうか。
『そんなことをしている場合か?』なんて切り捨てるのは無粋だ。
こんなときだからこそ行うのだ。
人々が明日も生きていかれるように。希望の灯を絶やさぬように。
そのことをこの物語が証明し、肯定してくれている。