半々空

古出 新

第1話 半々空。

空が半分、縦に半分、斜めに半分、晴れと雨。


車で移動中、屋内の窓から、あるいは歩いているときにも、ふと気がつくと、いつも半分の半々空。


ふわりと吹いた風が、雨の匂いを運んできた。


今日の予報は曇りのち晴れで、あいにく傘は持って来ていない。


あたりは田んぼと道路だけ、雨宿りできそうな場所もない。



雲から逃れて高台へ、東屋に隠れて遠くにある降水雲の柱を眺めた。


強く吹きつける春の風は、草木や花の香りを一緒くたにしてかっ攫い、東へと走り去ってゆく。


町を覆う雲は、逃げるバイクや車に追い付き家も人も次々と飲み込んでゆく。


あるところからくっきりと分かれる明と暗、カラスたちがその境を目指して飛んでいった。



雨が降らないと植物が困る。


しかし、降りすぎればまた土中にいる生き物達が溺れてしまう。


雨が好きなものは雲の下へ、晴れが好きなものは日の下へ。


いつも両方あって、自由に選択できればいいのにな。


いつでもどこでも半分なら、誰も困らないだろうから。

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