月と太陽

IZMIN

第1話:月の国での出会い

 時は1908年明治四一年の春。


 雲一つない快晴の青空の元、スエズ運河を通り地中海へと出た一隻の日本客船が居た。


 客室デッキには紺青こんじょ色が特徴的な日本海軍の軍服と軍帽を被った一人の若い男性が微風を感じながら地中海を眺めていた。


「流石、地中海だ。なんと落ち着いた海だ。次来る時は仕事ではなく休暇でのんびりと過ごすか」


 彼は笑顔で地中海でのバカンスを想像していると右側から一人の同じ軍服と軍帽を被った下士官らしき男性が現れて敬礼をした。


「津村中佐!まもなくマルマラ海に入ります‼︎」


 下士官からの報告に日本海軍中佐の『津村つむら 陽太ようた』は彼の方を向き、敬礼をした。


「ご苦労、大尉。君は先に部屋に戻って準備をしてくれ。一時間後にロビーで落ち合おう」

「はい!中佐。では失礼します」


 お互いに敬礼をすると下士官はその場を後にした。


 そして客船は予定通りにマルマラ海へと入り、オスマン帝国の首都、イスタンブールの港へと入港した。


 多くの乗船客が荷物を持ちながら下船する中でバックを持ちながら陽太は目の前に広がる美しいイスタンブールの街並みに胸躍らせ、笑顔となる。


「ここがイスタンブールか・・・楽しみだ」


 そう言って陽太は少し遅れて来た海軍中佐と合流し、オスマンの地へと足を踏み入れたのであった。



 それから陽太と海軍大尉はオスマン帝国大日本帝国大使館へと到着し、大使館の代表室で代表に挨拶をしていた。


「本日より二週間の特別軍事顧問官として参りました!大日本帝国海軍中佐の津村 陽太と申します!」

「同じく特別軍事顧問補佐官として参りました!大日本帝国海軍大尉の英頼ひでちか 一誠いっせいと申します!」


 軍帽を被った二人は横並びとなって目の前のデスクに座る西洋服を着こなし眼鏡をする男性の代表に向かってビシッとした姿勢で敬礼をした。


 挨拶をする二人に向かって代表は笑顔で頷く。


「長旅、ご苦労様です。オスマン日本大使館の館長を務めております代表の井口いぐち 耕助こうすけと申します。二週間の短い期間ですが、よろしくお願いいたします」


 笑顔で深々と頭を下げる耕助に対して陽太と一誠は再び敬礼をした。


「「はっ!」」


 それから翌日、二人は耕助の案内で朝方にドルマバフチェ宮殿へと赴き、オスマン皇帝と答礼をした。


 その後、陽太と一誠はオスマン帝国海軍との合同軍事訓練や文化交流、そして大使館や宮殿で行われたパーティーに参加した。


 そうしている内に帰国が三日後になったある日、陽太は一人で多くの人々で賑わうイスタンブールの町中を見物していた。


「いやはや。流石、オスマンの首都だ。あんな美しい建物は東京は拝めないぞぉ」


 少し遠くに見えるブルーモスクを見ながら笑顔で感想を述べる陽太。すると少し進んだ路地裏の奥でオスマン人の男性三人が囲む様にいやらしい笑顔で何かをブツブツと言っているのを目撃した。


「なんだ?あいつらは」


 何か変な感じがした陽太はゆっくりと三人の男達の後ろにそっと近づく。


「なぁーーーっいいだろ。ちょっと俺達と付き合うだけだからよ」

「そうだぜ。別にいやらしい事をしようなって思っていねぇから。お茶だけだからよ」

「なぁーーーーっ頼むよ。ほんの一時間だけだらよ。付き合ってくれよ」


 男三人に詰め寄られる長い美しい金髪で宝石の様な水色の瞳をした若いオスマン人の女性は買った物をギュッと両腕で握り怯えていた。


「お願いです!もう関わらいで下さい‼」


 必死に関わりを断ろうとする彼女であったが、そんな彼女の訴えを男達は聞く耳を持とうとはしなかった。


 それを見ていた陽太は許せない気持ちは沸々と胸の内に起き始め、そして遂に男達に向かって声を掛けた。


「おい!お前達‼彼女が困っているではないか!いい加減にしろ!」


 指摘された男達は振向くと不機嫌な表情でゆっくりと陽太を取り囲む様に近づく。


「何だてめぇは!見たこともない服を着ているなぁ」

「おい!こいつ顔立ち日本人じゃないか?」

「本当だ日本人。おい!怪我しない内にどっかに消えなぁ」


 取り囲まれても陽太は恐れる事無くビシッと男達に向かって言った。


「どう見ても彼女は嫌がっているだろう!無理矢理な事をして恥ずかしくはないか?」


 すると陽太の前に立つ男が顔を下に向け、大きく溜め息を吐きながら上げるとイライラした表情をしていた。


「ふざけた日本人めぇ‼後悔、すんなよぉ‼」


 声を荒げ陽太に向かって殴り掛かるが、陽太は華麗に避けると男の腕を掴み背負い投げをした。そして残る二人の男も驚きながら陽太に襲い掛かったが、陽太は足払いや受け流しなどをして攻撃を避けた。


 次々と来る男達の猛攻に陽太は華麗に避けていると陽太は素早く強い平手打ちを繰り出し、頬に受けた男達はよろけて腰から地面に向かって倒れ込む。


「恥知らずの男共が!とっと失せろぉーーーーーーーーーっ‼」


 鬼の様な怒った表情と怒号を出した陽太にさすがの男達も恐れおののき、その場から一目散に逃げ出した。



 男達が逃げ出した後、陽太は怯える彼女に向かって優しい笑顔で近付き手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」


 初めて出会う日本人に対して彼女はオドオドとし、なかなか警戒を解こうとしなかった。


 そこで陽太は上着の内ポケットから手帳を取り出し、真っ白なページを一枚、破り取ると慣れた手捌きで小さな鶴の折り紙を作り、彼女に差し出す。


「これは折り紙と言って私の祖国、日本の楽しい遊びだ。これは鶴と言う鳥だ」


 陽太が差し出した鶴の折り紙を彼女は恐る恐る受け取ると自然と笑顔がこぼれた。


「助けて下さり、ありがとうございます。あのーっお名前は?」


 陽太は笑顔で敬礼をし、彼女に自信の名前を名乗った。


「大日本帝国海軍中佐、津村 陽太と申します」


 すると彼女も笑顔で真斗に向かて一礼をして自身の名前を名乗った。


「ありがとうございます津村さん。私の名は『ドルナイ・ラフマン』と言います」

「ご丁寧にどうも、ラフマンさん。では私はこれで失礼します」

「本当にありがとうございました」


 そう言って陽太は笑顔で彼女に向かって軽く手を振り、その場を立ち去る一方でドルナイは立ち去る陽太の後ろ姿をじっと見続けるのであった。



あとがき

本作品は日本とトルコの絆を題材とした作品です。

自分自身にとってまだやった事ないチャレンジですが、最後まで頑張ります。応援、よろしくお願いいたします。

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