エピローグ
エピローグ
エピローグ
目を覚ますと、波音が聞こえた。
砂浜に倒れていた僕の体を、冷たい潮風がなでていた。
「おや、気が付いたかい?」
僕の隣には釣りをしているおじいさんが居る。
「あの、ここは……どこですか?」
「田舎の海岸さ。……あんた、記憶はあるか?」
「記憶……僕の名前は……」
(伊藤恒星。覚えてる。でも、言うべきじゃない気がした)
「覚えておらんのか?」
「すみません、荒木ホールディングスって単語しか覚えてません」
「荒木ホールディングスか? あそこは大変みたいじゃな。社長の一人息子が別荘で死んどったらしいからな。それも頭がつぶれとったらしいぞ」
「そうですか。ありがとうございました」
僕はそう言って、立ち上がり、おじいさんと別れた。
湊が生きていて、あの遺体が啓介だったとしたら――。
そう考えると、いくつかの辻褄が合う気がした。
湊は、危ない仕事のために自分を“死んだこと”にしたんだ。
そんなことで、陽菜を、僕を……。
僕は“伊藤恒星”を胸の奥に沈めた。
陽菜を想う弱さも、誰かを信じようとした気持ちも――もう必要ない。
罪を償わせるのはやめだ。
僕は湊を殺す。絶対に。
そのためにまず、あいつの居場所を突き止める。
僕はこれから、どうなるんだろうか。
雨、のち人間 増井 龍大 @andoryuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます