ある春の日の散歩

名月 楓

「さんぽ〜さんぽ〜さんぽっぽ〜♪」


朗らかな陽光の下、川沿いの桜並木を彼女と歩く。いつも通りご機嫌なのだろう。長くふんわりとした髪の毛と、薄い水色のワンピースを揺らしながらオリジナルソングまで作っているみたいだ。


「さんぽ〜さんぽ〜さんぽっぽ〜♪」


はらはらと舞い落ちる桜を見ていると心が洗われる。散歩に出て良かったな、と彼女の歌に耳を傾けながら思う。


「さんぽ〜〜さくら〜〜さかな〜〜さしみ〜〜♪ あ!今夜は刺身にしよう!」


どうやら気分良く歌っているうちに夕飯のメニューまで決まったみたいだ。それにしても刺身は好物なので嬉しい限りだ。

桜並木はまだまだ続いている。この街はこの通りに力を入れていて、とてもきれいに整備されている。地元の人はもちろん、時折観光らしき人も見ることができる。


「るるる〜ら〜さんぽ〜♪」


彼女はそんな人たちのことを気にもせず歌を歌う。まろやかなリリーホワイトの声は、雑音になんてならずに聞く人たちを魅了しているのだろう。


「そろそろ帰ろかなぁ」


彼女は踊っているかのようにくるりとその場でターンする。その愛らしい姿を見て今日がいい日であることを確信する。


「よし!行くよ、ねこまる!」


その名前だけは不服だ、と言うのを伝えるために低い声で、にゃあ、と鳴く。

でもまあ、歩く速さを合わせてくれているから、いっか。

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ある春の日の散歩 名月 楓 @natuki-kaede

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